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ファンタジア・サイエンス・イノベーション〜第10王子:異世界下剋上の道を選ぶ〜  作者: 国士無双
第二部 【本論】第10王子、異世界下剋上の道を選ぶ
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【第9王子vs.実験部編】四面ピザ/チャイティーを、君に

【※注意】今回も飯テロです!

一部イジメ行為表現あり(ただし、その行為に対して、主人公が悪魔族飯テロ計画を実行しますので、ご安心ください)

 俺はここ最近、機嫌が良かった――なぜなら、実験部を創れたから。

 

 早速、実験部の部室に入ったところ、サラが何やらスパイスを使って料理をしていた。


「アダムさん、やっほー! チャイティーとクッキーを作ったよ! 食べない?」

「食べる!」


 俺は即答する。なぜなら、大好きなクッキーの匂いがしていて、とても美味しそうだからだ。

 俺以外にもアンズがすでに来ていたようだ。

 

「サラ、本当に料理上手なんだね! このチャイティー、ホットなのも嬉しいよ」

「えへへ〜。このチャイティーには『シナモン』・『クローブ』・『カルダモン』。そして、隠し味で『スターアニス』を()れて……。4種類のスパイスが(はい)っているんだよ! 安心して、ぼくは睡眠薬を入れるなんて過激なこと考えたこと一度もないから!」

「もちろんよー! サラは兼部(かけもち)できるか確認しに行ったり、本当に優しい子よね〜!」


 そう言って、アンズは「アダム! 私は先に食べたから、サラと一緒に食べてね!」と気遣ってくれた。

 

 俺はサラと一緒に、チャイティーとクッキーを食べることにした。スパイスの組み合わせが神かかっていて、素晴らしい味だ……。

 

(そうだ、サラは元々地頭が良いから、根拠に基づいた調理をするんだな!)


「すごい美味しい。このチャイティーさ、生姜(ショウガ)も入れたのか?」


 なんとなくだが、飲むとポカポカ温まる感じがしたため、聞いてみることにした。


「さすが研究者さん、大正解だよ! すごい!」

「素敵ー! アダム、サラの二人は大天才ね〜!」


 こんな感じで、放課後に部員のメンバーと仲良くお茶会(ティータイム)をするという、とても穏やかな時間を過ごしていたが……正直に思ったことを言っている。

 

「なんか……これじゃあ、料理(りょうり)部じゃないか?」

「本当だー!」

「本当ねー!」


 俺のツッコミに二人とも激しく同意してくれた。その同意と同じタイミングだっただろうか――『パンッ!』と大きな音で、突然ドアが開いた。


「遅くなってごめん!」


 ケイの声だった。

 でも、不思議だ。彼女は水を(かぶ)ったのだろうか――全身がびしょ濡れになっていた。


「えっ? ケイちゃん、どうしたの?」とアンズが慌てて、ケイのところへ向かう。サラも「これで()いたほうがいいよ!」とすぐタオルを差し出す。ケイは「あなたたち、ありがとね」と言って、どこか元気がなさそうである。


 俺はこうなった経緯が知りたいから、「何があった?」と彼女に原因を聞く。


「歩いていたら、突然上から水が落ちてきたのよ……」

「えっ……そうだったのか。とりあえず着替えた方がいい。風邪を引くぞ?」

「そうするわ」


 この部室は元々『予備調理室』なので、更衣室(こういしつ)も備わっており、彼女はそこでジャージに着替えていた。


(王族でもジャージとか着るんだな、意外……)


「そうだ。これ(あたた)めたから飲んで! 風邪ひいちゃうよ」とサラは、うさぎの形をした可愛らしいカップにチャイティーを注ぎ、ケイにそっと手渡す。

 

「サラ、ありがとう……」


 ケイは何かショックを受けているのかもしれない。一口飲むと、机の上にカップを置き、サラの肩に、タオルで巻かれた頭をコツンと軽く当てた。


「ごめん、サラ」

「大丈夫だよ! 誰がケイちゃんにこんなことを……許せない!」

「私も! やっつけようよ!」


 ケイが落ち込んでいる姿を見て、アンズとサラは二人して、そういう(いや)しい行為を行う人物に対して、怒っていた。

 「はぁ……アイツのせいなのよ、本当に最低ッ」とケイも堪忍袋(かんにんぶくろ)()が切れたのか怒りを声に出していた。


(こういう悪質なことをする人物って……もしかして……)

 

 ふと、この前の睡眠薬混入事件の記憶がよみがえり、俺はある人物の名を彼女に告げた。ケイは驚いた表情で目を見開き、しばらく沈黙した後、静かに口を開いた。


 「さすが、研究取扱者けんきゅうとりあつかいしゃ。大正解よ、その人の名前は――メタノ・ジェラル。第9王子の仕業。つい先日、アタシの父と彼の父が再開発案件で()めたからねぇ。みんな、彼には気をつけて」


 彼女は例の第9王子のフルネームをはっきりと告げた後、俺たちに重々しい口調で忠告してくれた。

 

 

 しかし、その水浴び事件以降、突然彼女の私物が無くなっていたり、授業中にケイがクラスの悪魔族たちに声をかけても無理するといったイジメのような出来事が次々と起きていた。無視するくせに悪魔族の奴らは昼休みになると、「ケイさん、昼飯を買ってきてください」となんと彼女をパシるようになった。どうやら……そういった()()()()()指示を出しているのは、全て第9王子の仕業らしい。


馬鹿(バカ)らしい……こっちにも作戦があるから、明日の昼、対抗してみるか)


 俺は翌日の昼休みに向けて、ある作戦を胸の中で密かに練っていた。

 


 そして、ついにその昼休みがやってきた。案の定、例の悪魔(アクマ)族がケイの近くにやって()ようとする。

 

「はぁ……また()るわね。もう()()り……」とケイは今日も覚悟を決めていたようだが、アンズが思いっきり、彼女の腕を握りしめた。

 

 これには理由がある。今日の朝、俺はアンズとサラに作戦を共有していた――お昼休みに行われる、悪魔族によるケイへのいじめを防ぐために。


(よし、作戦開始(スタート)だ! ケイ、アンズに乗りなさい!)


「待って、ケイちゃん!」

「どうしたの、アンズ? アタシ行かないと怒られるわ〜」

「私と、お昼一緒に食べようよ! ケイちゃんと一緒じゃなきゃ(イヤ)なの!」


 素晴(すば)らしい……アンズが大声で甘えている。

 そして、アンズの意外な一面を見た悪魔族はなんと行くのを躊躇(ためら)っている。


(すごい! カワイイとは有罪(ギルティ)だ……)

 

「でも、アタシはお昼もって()てないの……」とケイは申し訳なさそうに断ろうとしていたが、「出前(でまえ)でーす! アダムさんいますか〜?」と空気を読まずに配達のお兄さんが俺たちのところへやってきた。

 サラがお兄さんからピザを受け取って、「アダムさん! ピザが来たよ!」と俺の顔を見ている。


 さて、俺はこの場でケイにもピザを食べてもらう。ピザを見て、「アァー?! 間違エテ、4人分頼ンダー!」と棒読みで言った。

 

 もちろん、嘘である。作戦で最初から4人前頼んでいた。

 

「え! アダム、なんて神対応! 食べたい! それに、私たち4人でピッタリじゃん!」

「アンズちゃん、いいアイデアだね! ケイちゃんも一緒に食べよう?」


 アンズとサラ――二人とも協調性が抜群だ。これなら、ケイもきっと心を開いてくれるはずだ。そう思ってクラスの雰囲気を見たら、ケイだけでなく、悪魔族も『イベント日じゃないのに、ピザの出前を頼んだの……?』と(あき)れた顔をしていた。


 まぁ、そんなことは気にしない。

 

 俺は箱の蓋を開ける。すると……熱々で美味しそうなピザが入っていた。

 

「おぉー、トマトソースピザだ! 何か具材が欲しいな〜」


 そう言って、俺はサラの方をチラッと見る。


(次の作戦だ! サラ、俺に乗りなさい!)

 

「具がないよ……せっかくピザが来たのに、こんなの無いよっ!」と彼女は俺の思考が読めたのだろうか――なんか某アニメ(エ⚫︎ァンゲリ⚫︎ン)を意識したセリフを言っている。そのセリフを言った直後、サラはハッと我に帰り、「あっあー! いいアレンジ考えた。アダムさん、火を起こせる?」と料理でもするのか? といった趣旨の発言をしてくれた。

 悪魔族の軍団は俺たちの意図が読めず、不安そうに視線をさまよわせている。

 

「女神様、ガスバーナーを!」と俺が魔法を唱えたところ、ピザの近くにコロンと落ちてきた。

 サラは「うわー」と歓声をあげた。


「さすがアダムさん! 実家からバジルとチーズを差し入れでもらったんだ。トマトソースだけじゃ物足りないし、これを加えてあぶろうよ!」


 学校にバジルとチーズを持ってきていること自体、普通なら意味不明だと思われるだろうが――これは本当である。ニボルさんがカレーの材料用に持たせていたらしい。

 

「え?! なんで学校に食材を持ってきてるんすか?」と悪魔族のクラスメイトが思わず、ツッコミを入れる。どうやらサラの斜め上過ぎる発想力に舌を巻いているようだ。


 彼女は鼻歌を口ずさみながらピザに食材をのせ、ガスバーナーを手に取った。


「危ないから、俺がやるよ」

 

 そう言って、俺が代わりに焼いてあげた。するといい匂いが教室内に充満した。


(めし)テロだな〜)

 

「二人ともさすが! めっちゃいい匂いする、おいしそう!」とアンズは目を輝かせている。

「アダムさん、焼き加減完璧だね〜。さぁ、熱いうちに食べようー!」とサラは今すぐにでも食べたいようだ。


 でも俺たちは我慢している顔をして、ケイの顔をじーっと見つめていた。俺たちは『ケイが食べるのを待ってるし、早く食べたいんだ』と表現した顔をして。すると、ケイは吹き出した笑いをした。

 

「ふっ、ウケる! 3人じゃ、誰もツッコミ役がいないじゃない……。アタシも食べるわよ」


 彼女も一緒に食べてくれるようだ。この作戦は大成功だった。それに、美味しいピザも食べられるのだから一石二鳥だ。


「美味しいじゃない、やるわね。あんた!」

「アダム、ピザありがとう! おいしい〜!」

「うはー! 美味しすぎて、幸せ〜!」と(あお)ってるつもりはないんだろうけど、3人は感動してバクバク食べている。

 

 その合間を()って、俺はお化けのような怖い顔をしながら、同じクラスの悪魔たちに威嚇(いかく)する。『俺たちの楽しいピザパーティを邪魔したら、(あぶ)るぞ』という顔をして、手元に持っていたガスバーナーを彼らに向ける素振りも欠かさず行う。

 

 悪魔側は俺たちの雰囲気に呑まれてしまい、「あいつ怖すぎ。でも、なんかピザいいなぁ……食べたくなってきた」「俺らも今度ピザパしない?」とむしろ彼らの心を(つか)んでしまった。


 

 そんな俺たちの様子を教室の外から見ている人物がいたそうで、捨て台詞を吐いていたようだ。

 

「クソッ! あいつら、のんきにピザを食べている人間に同意して、なんもアプローチできないなんて――だから一般科はゴミなんだ……」

<余談①>ピザパーティについて

ケイ「あんた、おもしろすぎ! イベントでもないのに、ピザの配達を頼むなんて!」

アダム「えっ?!」(大学の研究室だと、定期的にピザパーティが行われてたけど...。しかも、准教授の俺が会計を払っていたから、痛い出費だったんだよなぁー)


※研究室によっては、寿司の出前もあるらしいです。あとは、たこ焼きパーティをやったり。


<余談②>某アニメについて

アダム「さっきアニメのセリフを言ってたな。知ってるのか...?」

サラ「おじさんが大ファンなんだよ〜! メガネかけてる女の子が好きって...」

アダム(あっ。ニボルさんの好きなキャラ知っちゃった...。聞いちゃダメだ、聞いちゃダメだ、聞いちゃダメだ)


<余談③>チャイティーの作り方

サラ「寒い時期にオススメだから、作り方を共有するね」


【材料】

・紅茶のアッサムやセイロンがオススメ:4〜5ティースプーン

・牛乳:400ml

・水:400ml

・砂糖:1〜2ティースプーン(お好みで調整)

・シナモンスティック:1本

・クローブ:4粒

・カルダモン:4粒

・スターアニス(八角):一欠片

(※好みで生姜すりおろし:3g程度入れても美味しいです)


【作り方】

(1)スパイスを準備:

シナモンスティック、クローブ、カルダモン、スターアニスを軽くつぶして香りを引き出します。(カルダモンの緑のさやは捨てないで、鍋に入れましょう!)


(2)煮出す:

鍋に水を入れ、スパイスを加えて強火で沸騰したら、茶色くなるまで中火で煮立てます。

その後、いったん火を止めて紅茶の葉を加えます。


(3)牛乳と砂糖を加える:

牛乳と砂糖を加えて、さらに中火で煮ます。沸騰する直前で火を止めます!(吹きこぼれないよう、注意)


(4)濾す:

茶こしでスパイスと茶葉をこしながらカップに注ぎます。


(5)完成:

温かいチャイティーをお楽しみください!


実験部「それではまた次回〜!」

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