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ファンタジア・サイエンス・イノベーション〜第10王子:異世界下剋上の道を選ぶ〜  作者: 国士無双
第二部 【本論】第10王子、異世界下剋上の道を選ぶ
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【入学式編】案ずるより計画するが易し〜だがバトルは断る〜

 異世界転生してから15年が経った。


 俺の名前はアダム・クローナル。


 第10王子だ。

 

 前世で研究者として培ってきた知識を引き継いだまま、とある女神様と契約して転生した後、異世界に存在していた毒キノコと食用キノコを使った研究で評価を得て、最年少で研究取扱者けんきゅうとりあつかいしゃの資格を取得した。


 そんな俺には自らの手で研究所を設立するという夢がある。


 しかし、その夢を達成するためには王位が1桁でなければ、研究施設などの専門機関を建てることができないらしい。


 9と10。


 たった1つの数字だけで、この差である。


(なんてクソ制度だ――やってられっか!)

 

 でも、不幸中の幸いで、1桁になれる方法がある。


 それは最難関校であるザダ校に入学し、王位戦(おういせん)というイベントで成果を上げることだ。

 

 まず、俺は最年少で研究取扱者の資格を持っていたことがプラスに働き、無事ザダ校に合格したため、第一関門は突破した。


 次に行うのは、王位戦に挑むことである。


 その王位戦については、今日の入学式で説明があるらしいから、しっかり聞くつもりだ。


 とは言っても、今は王位戦と全く関係ない話をしている。


 暇を持て余した俺は、これまでの自分の人生と二人の友達に関して、振り返ってみることにした。

 

 前世の俺は……友達が一人しかいなかった。


 本来なら、今日の入学式も前世と同じ成り行きであれば、ぼっちで参加していたはず。


 だが、驚いたことに、今の俺は入学式初日から、幼馴染の可愛い女の子と訳アリ男装令嬢の二人と一緒にいる。

 

 両手に花――前世で流行った『世界に一輪だけの花?』みたいな曲のタイトルがあったな。


 いや、今の俺はそのタイトルよりも豪華な状況だ。


 だって、二輪の花を手に入れている。


 まず、幼馴染の女の子はアンズという名前だ。

 黄色の目と淡紅色の髪をしていて、肩下まで伸びた直毛のストレートヘアが特徴的だ。

 幼少期はボブヘアだったが、今は髪を伸ばして大人びた印象になっている。


 俺の家庭の事情で離れ離れになってしまったこともあり、今日は久しぶりの再会を果たした。

 

 俺の方から声をかけたところ、アンズは満面の笑みで、あろうことか、俺に抱きついてきた。

 

 その時、成長したアンズの胸が当たっていたのだが、本人は全く悪気なく、俺に会えたことが嬉しい様子だった。


 入学式が始まる前に、アンズが「今も歌のレッスンを習っているよ!」と近況を報告してくれた。


(楽しみだな。いつか、アンズの歌声を聴ける日が来るかもしれない……)


 次に、訳アリ男装令嬢はサラという名前だ。

 黒髪のショートヘアで学ランを着こなしている。

 

 サラは貴族出身のお嬢様だが、家庭の事情で男として生きている。

 

 彼女と一緒に住んでいるおじさんことニボルさんは、蜂に刺されて死にそうだった俺を助けてくれた命の恩人だ。

 その命の恩人から「サラちゃんのことを支えてあげてね」と依頼されたため、サラが女性だとバレないよう、陰ながら見守るつもりだ。


 でも、サラは剣術検定1級保持者だ。

 剣術の達人だから、俺より強いと思われる……。

 

「ねぇ。アダム、さっきから考え事してるねー? そう思うよね、サラ」

「うん。アンズちゃん、ぼくも同じこと思ってた。アダムさん、さっきからずっと自分の世界に入ってる……」


 二人から同じツッコミをされる。

 

 ずっと考え事をしているのがバレてしまった。


 そういや、アンズとサラは合格発表の時に仲良くなったようだ。


 だが、アンズはサラが女性だということを知らない。


 サラが女性だと、この学校で知っているのは俺と――今日から学校医になるオウレン先生だけ。

 

 オウレン先生がどこにいるのかキョロキョロ探したところ、壇上近くの椅子に座っていた。


 オウレン先生は女医さんだ。

 ニボルさんの妹で、サラのことを娘のように溺愛している。

 サラが学校で、性別のことで困った時に助けてあげたいと思った先生は、臨床医を辞めて、ザダ校の学校医になった。


(本当にサラのことが大好きなんだなぁ……)


 色々と思考を巡らせていたところで、校長が登壇した。


「えぇ〜、一般科の諸君。入学おめでとうございます。今年、一般科でも、王族の方々が入学しているとのこと。御校への入学、感謝申し上げます。さて、ここからは敬語なしで。まずは王位戦について――」


(おっと。いきなり、王位戦の話題。話が早いな。この校長は仕事ができそうだ)


「王位戦とは、我が母校ことザダ校で開催される一大イベントである。開催時期は半年後の9月からだ。強気な一般科の生徒がいなくて、ここ数年開催されていなかったが、ぜひ挑戦してほしい」


 今すぐにでも開催して欲しかったが、半年後らしい。


 その間、俺は校内の研究施設に籠もろうかな。

 

「コホン、大切なことを忘れていた……」


 乾いた咳払いをした校長が、次に発したのは、聞きたくなかったキーワードの羅列だった。

 

「王位戦とは、一般科からなる生徒三名が、王位一桁の王子のみが在籍している特別科(とくべつか)と団体戦で戦う制度だ――なお、一般科のメンバーも最低二人は王族出身者でなければならない。ロイヤルバトルなのである」


「戦う」に「ロイヤルバトル」って、()()()()()()()()でもするのか?!


 しかも、対戦相手が上位(トップ)の王子……?


 無理ゲー過ぎるだろ!


 舌打ちしてしまいそうだったが、なんとか堪えて、またしても自分の分析をし始める。


 身長172cm、体重65kgと人間の平均身長・体重である俺。

 異世界転生した時に、女神様から授かった能力は、転生前の知識を身につけることができる能力と……あとは「女神様!」ってお願い事をすると、自分の欲しい実験器具とか装備が出せるぐらいだ。

 

 これらの能力は、研究者としては高スペックだが、戦闘には圧倒的不利。


 こんなところでつまずくとは……。


 王位戦の話が終わってしまった上に、研究所設立の夢が叶えられないかもと気分が落ち込んだ俺は、その後、校長のありがたいお言葉すらも全く頭に入ってこなかった。

 

 * * *

 

「えっと、1-A組か……」

「ぼくも!」

「私も!」


 入学式を終えた後、廊下でクラス発表の名簿を見ていたが、なんと、三人とも同じクラスだった。


「嬉し過ぎるかもっ! イェーイ!」


 アンズはサラとハイタッチを交わす。


「わーい! ぼくも嬉しいよ! あっ! 席はどこだろう?」


 サラが俺の顔を見て首を傾げた。


 そこで、俺は教室の入り口付近に貼ってあった座席表を元に、三人分の座席を確認した。

 

「えっと……サラは窓際最後列、大当たりだなぁ。俺はサラの隣、アンズは俺の前。みんな、後ろの方だ」

「アダムすご! 状況把握力、高くない?」

「すごいねっ! アダムさん、助かるよ〜!」


 二人とも律儀に褒めてくれたものの、俺は前世で大学の先生をやっていて、受験シーズンの時によく試験監督をしていたから、こういう座席表の解読は得意なのだ。


 三人で仲良く、該当する席に座ろうと思っていたのだが、先約がいたようで、俺の席に女子生徒が座っていた。


 金髪のツインテールに、ピンク色の吊り目。

 明らかに気が強そうな外見をしている女の子。


 それでも、俺は指摘した。


「そこ、俺の席なんだけど……」

「えっ、何かしら? 自由に好きなところに座っていいんじゃないの?」


(はて。座席表を見てないのか? まるで通勤電車のように、「好きな席に座っていいよね?」みたいなノリで言われても……。ここ、学校の教室なんだが)


 どこから説明すればいいのかわからない。


 思わず、ツインテールガールと二人して、シーンと静かになってしまった。


「初めまして、ぼくはサラ。よろしくね」

「初めまして、アンズだよ! 女子同士仲良くしようね」


 助かった。

 

 背後にいたアンズとサラが声をかけてくれた。

 

 二人は初対面の人に対しても感じが良い。


 実際に、図々しいツインテールガールが心を開いてくれたのか、ニヤリと笑いながら、俺たちに妙なことを聞いてきた。


「あなたたち……王族?」

 

(あっ。もしかして、どこ出身かでマウントを取ろうとしてる?)


 目には目を、歯には歯を、マウントにはマウントだ。


「あぁ。俺は王族。そんで、アンズとサラは俺の大切な友人」


 本当のことを言うと、サラは王族ではないが、貴族の出のお嬢さんだ。

 でも、「アダムさん、内緒にしてね!」とサラ本人と約束を交わしたため、彼女たちの境遇については何も言わないことにした。


 俺の角のない回答に対して、質問者の彼女は「ッフッフッフッフ!」とドヤ顔で笑い出した。なんで?


「アンタたちは、仲良し三人組ってことね! 素敵なことを思いついたわ! 卒業したら、アタシの領土で働かない?」

 

 どういうことだ。

 入学したばかりの俺たちに、卒業後の就職案内の話をするなんて。


 うーん。

 一年目でインターンシップならわかるけど、就活はいくらなんでも早過ぎる気がする。

 

 どうやら、ツインテールガールは猪突猛進に、思いつきでお喋りするタイプだ。

 そして、「お前のものは俺のものだ!」と強引な性格でもある。


 研究所は設立したいけど、就職は今のところ、全く考えていない。


 むしろ、今の俺は学業を修め、王位戦に出場して、これからの学校生活を大いに楽しみたいと思っているんだ。


 話に乗らず、スルーすることにした。

 

(ってか、俺の席だから早く退散してほしい……)

 

 それでも、彼女は気を使わずに、俺の席に座ったまま、怒涛の自己紹介を始めた。


「言ってなかったわね! アタシは第4王女のケイ・クマリー! 我がクマリー家は、庶民から大出世した王族で、父が市長なのよっ! 敬えよ、人間共(ニンゲンども)!」


 あちゃー……。


 俺は白けた目つきを向けてしまった。


 ツインテールガールは、お父さんの栄光を、あたかも自分の手柄のように自慢していた。


 挙げ句の果てには、周りを気にすることなく、教室で高笑いまでし出した。


 少女漫画に出てくる悪役令嬢ってこんな感じだったな、と俺は前世の記憶を思い返していた。

【雑談:新キャラの名前と髪型の由来】

第4王女:ケイ・クマリー

ケイヒ(桂皮:生薬名)+クマリン (coumarin:芳香族化合物)

クマリンの化学式はC9H6O2でOが2個ある→ツインテールという設定です。


アダム「構造式は可愛い形をしているから、もし気になったらネットで画像検索してみてね」

ケイ「なんか言った?」

アダム「……別に」

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