エピローグ
あの干魃があった夏から、何年も経ちました。
大きな森の小さな魔女も、綺麗な娘さんになりました。
「本当に、この森に住んで良いの?」
可愛い顔を見上げて、ロビンに確認します。
「畑には遠いけど、メルは、おばあちゃんを一人にはできないだろ」
この春、逞しい青年に成長したロビンと、メルは結婚する予定です。
優しいロビンに、しあわせだなとメルは微笑みました。
婚約中の二人は、一緒に居るだけでしあわせそうですが、おばあちゃんは、結婚式の準備があるのにと、肩を竦めました。
「メル! いちゃついてる暇は無いわよ!
ほら、さっさとウェディングドレスを縫わなきゃ、普段着で結婚式を挙げることになってしまうわ」
ブライズメイドのアンナに、ロビンから引き離されてるメルを見て、おばあちゃんは笑いました。
『メルなら、ウェディングドレスも、あっという間にしあげられるのにねぇ。術を使わないで仕上げたいだなんて、意地を張るからだよ』
メルはおばあちゃんの厳しい修行に耐えて、魔女としては一人前になりました。
でも、農家のおかみさんとしては、まだまだ修行が必要そうです。
「アンナ、宜しくお願いしておきますよ」
一年前に結婚したアンナは、少し目立ちだしたお腹をポンと叩いて、まかせといて! と請け負いました。
「アンナ! お腹に赤ちゃんがいるのに、叩いちゃ駄目よ」
「これくらい大丈夫よ! それより、縫い目が歪んでいるわ!」
賑やかな幼馴染みの言い争いを、ロビンとおばあちゃんは笑いました。
黒猫のルーは、うるさそうに目を半分あけましたが、年をとっているので、また眠ってしまいました。
春のある日、大きな森の花々は一斉に咲きました。
大きな森の小さな魔女、いえ、大きな森の魔女は、綺麗なウェディングドレスを身にまとい、愛するロビンと結婚しました。
メルとロビンは、末長く、しあわせに過ごしました。
めでたし、めでたし