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ファイティングガール!  作者: Jack…
大学二年
103/103

王女殿下の工兵部隊(違う)

引き続き、ノイだ。


彼女の言葉にこっちの陸軍の兵隊が従って作業しているってのは、本来、極めておかしい。


ただ、少佐無き今(死んじゃいないだろうが)、さっさと仕事を終わらせて、ビアラオなりラオ・ラーオでも飲みたいと思うなら、彼女の言葉通りに作業するのが一番早いだろう、と、あっちの兵隊も思ったってことは、容易に想像できる。


向こう、パクセー国際空港を出たのは朝だが、もう、昼を過ぎていちばん眠たい時間帯だからな。

さっきので眠気もすっとんでるだろうけど・・・


           ・・・


ろくな荷役設備もないこの空港だが、不発弾処理部隊がいるお陰でそれなりの重機はあったようだ。


彼女はあっちの部隊にどこからかデカい岩を持ってこさせた。

L-100 と今回の積載目標である大型軍用トラックを逆向きに、お尻を突き合わせるように並べ、その間にクレーンで岩を降ろさせた。


まあ、こっちで活動している部隊なんだから、危険の少ない場所から岩を持ってくるなんて朝飯前だろう。


で、その岩を人力で削らせた。上を平らにしたんだよ。

これはすげえ大変そうに聞こえるだろうが、なんか『コツ』が分かっていれば簡単に割れるような岩らしく、ヤツらはそれほどの時間も掛けずにそれをやり遂げた。


なんでクナイ・マイが、そんな岩の特性まで知ってるんだろう、という話だが、

まあ、いつものことで、いまさらという奴だ。


それを、L-100のローディングランプとトラックの荷台を間に置き、不発弾処理装置の重さに対応するための架台にしたんだよ。

正確に言えば、岩に合わせてトラックの荷台の後端の位置を調整するっつーか、バックで荷台を岩に乗り上げさせたってことだ。


なんせ、14t だ。L-100 にもトラックにもすげえ負荷がかかる。

下に何もない状態で、そこで荷崩れしたら最悪の事態ってやつだ。


なるほど、これならどっちの負荷も岩やその下の地面、コンクリートが吸収してくれる。まあ、さっきの上を平面にした様子だと、岩は割れちまうかもしれないが、それはそれで構わない。トラックの荷台に移す間だけ持ってくれればいいんだ。


で、彼女は操縦室に行くと L-100を少しだけ動かし、ボンが貨物室でローディングランプを操作して、岩の上にピタリと乗せた。

と、あっさり言ってみたが、あのデカぶつを数センチ単位でバックさせ、ランプの先端を「削った岩面の上に乗った、トラックの荷台の端」に正確に合わせるなんてのは、並のパイロットにできる芸当じゃない。

当然、オレも岩の上に乗って、声を出し、旗で指示していたが、AE2100 の咆哮の前では旗しか頼りにならないはずだ。


だが、それを簡単にやってのけるのがクナイ・マイという存在なのだ。

流石に陸軍の連中も驚いてたぜ。当然だな。

こっちのヤツらは自分がやったんでもないのに胸を張っていやがった。


次にフォークリフトを持ってこさせ、L-100のウィンチと支援物資、支援物資とフォークリフトの間でワイヤロープをピンと張らせた。


これで少しずつ動かせばいいってことか・・・しかし、トラックの運転席が邪魔だな。荷物を載せる際、ウィンチのワイヤーがキャビンに干渉しちまう。


彼女はこれを、一発で解決した。岩を持ってきたクレーンを使ったんだ。


トラックのキャビンを固定しているボルトやケーブルを外させると、クレーンで運転席ごとひょいと持ち上げさせて、邪魔にならない場所へどかしてしまった。


あれ、そんなに簡単に外れるもんなんだな。少なくともオレは、トラックの頭が丸ごと宙に浮くなんて知らなかったぜ


向こうの陸軍の連中は知っていたようで、ぶっとい布、スリングベルトを運転席の窓に通し、クレーンで上から吊って、運転席まわりでガチャガチャやってたかと思うと、誰かが手を上げた。


そして、クレーンを操作しているやつがそれを持ち上げて一丁上がり、というやつだ。


これで、トラックのシャーシとL-100のローディングランプとそれを支える岩、その上でワイヤーロープに繋がれた、クソ重い支援物資の移動の準備ができたという訳だ。


あとは、こっちと向こうの両方の兵隊で、支援物資が落ちないように気をつけながら、合図を出しては L-100 のウィンチをゆるめ、フォークリフトがバックしながら引っ張る、の繰り返しだ。


オレはこっちのリーダーという訳でもないんだが、なぜか合図を出す係になった。まあ、ヴィエンチャン風の発音ならできるからな。

こっちの方言は正直分かんないが、すこしは歩みよっているように感じてもらえる可能性くらいならある。

クナイ・マイのルアンパバーンの王族風は聞くことはできても話すことはできないけどな。


ウチのPMC の連中にはパクセー風、陸軍さんにはヴィエンチャン風で話せばいいってことだ。まあ、パクセーの商家なら、それにプラスしてタイのバンコク風の発音ができるってやつも多い。オレもだ。


まあ、あとは時間の問題ってやつだ。岩も持ちこたえ、支援物資は無事、トラックの背中に乗った。あとはこっちのやつらに任せればいい。


そして、トラックの運転席も元通りになり、L-100 のハッチも閉まった。


で、岩だけど、最後に見たらやっぱり割れていた。まあ、どっちにしろ、ここからはどかさなきゃいけないんで、細かく砕いてもってってもらうには都合がいいってことにしておこう。


           ・・・


「助かったよ・・・ノイと呼ばれていたかな?えーと・・・PMC なのに階級章があるから・・・ノイ軍曹でいいのかな?こちらはケオ曹長だ」


見た感じ、オレよりはちょっと年上か。まあ、苦労してんだろうな・・・

一応、敬礼をするか。


ケオ曹長、こちらはノイ軍曹です。まあ、ウチは PMC なんで陸軍さんと同じ階級ってわけでもないんですが。


「いや、正直、陸軍より統率力があるよ。まあ、あの王女様のお陰だとは思うけどな」


階級章は中尉なんですが・・・彼女は軍人じゃなくて<<Phi>>なんです、と、言えば分かりますよね?


「<<Phi>>ね・・・確かに、言われたらそうとしか見えなくなったよ。不発弾だらけのこの平原じゃ、森の精だな」


あの少佐さんは大丈夫ですか?


「まあ、<<Phi>>に手出しをしようとして、死んでないなら上等じゃないかな。まあ、しょうもないおっさんだが、士官は士官だからな・・・流石に今日はもう、みっともなくて、あいつは宿舎から出てこれないと思うよ」


士官がそれでいいんですか?


「お前だって徴兵で陸軍に行っていたんだろ?内情とか・・・どういう士官がのさばっているかなんて、分かってるよな?」


まあ・・・そうですけど・・・

オレは実際には空軍なんだが、それを言ってもしょうがないのでここでは流しておくことにする。ああいう士官がのさばってるのは同じだしな。


「いいんだよ。現場でしっかり進めておけば。こっちのトラックへのラッシングまで手伝わせて悪かったな」


ついでですし、大した仕事でもないです。


「本当ならビアラオでも奢りたいところだが、それをやったら少佐の面目がな・・・」


わかってますって、オレらはさっさと立ち去りますよ。

あ、でもすぐまた来ます。


「なんだい?二台目か、それとも、そっちはオレたちと違い、旨いメシが配給されているんだろ?できればそれをお願いしたいな」


違います。その『支援物資』を活かす仕事を彼女が受注したんですよ。


「何?」


ジャール平原の低空偵察飛行をするんで、またコイツで飛んできます。


「ああ・・・それは助かるな・・・オレたちも死にたくはない。まあ、次の雨季までだけでも、そういうのがあれば役に立つってことはとてもよく分かる・・・しかし、そんなデカぶつで偵察飛行なんてできないだろ?」


だからこいつに飛行機を積んでくるんですよ。

なんで、組み立てるため、この場所をお借りします。少佐・・・になるかは分かりませんが、上にも話を通しておいてください。あとでUN からも連絡が来るはずです。


「飛行機に飛行機を積むのか?そんなことできるんだ・・・まあ、話を付けておくのは簡単だよ。しかし国連から連絡ねぇ・・・」


バラさないと積めませんからね。組み立てるのに場所がいるんですよ。

そもそも、国連から任務を取ってきたのは彼女なんですよ。


「それはまた・・・・・・凄い王女様だな。オレ達は助かる。国連も機材の有効活用が見込める。で、お前らはカネか・・・だれも損しないってやつか」


そりゃ、民間の会社ですから。


「まあいいよ、うちの空軍がアテにならないから、パクセーで有名なアビエーションカンパニーが来たってのはみんな分かってるからな」


まあ・・・これは、空軍の輸送機じゃ、14t の支援物資は運べないでしょうね・・・


「だな・・・あいつらじゃ、弾薬、燃料、カロリー優先のメシが関の山だ。しかし、ジャール平原は低空飛行が安全にできる土地柄じゃないぞ・・・気流もきまぐれだし、正直、不吉な場所だ・・・まあ森の精が操縦するんなら大丈夫かもしれないが」


彼女が言うには、対空ロケットをぶっぱなす民兵がいなきゃどうにでもできるそうです。


「それは大丈夫。オレらだっているし、反政府組織なんて、このあたりにはもういない。第一、土地勘が無いヨソ者は来ないよ。いいかげんにうろつくと、文字通り『爆死』するからな」


まあ、そう言われてしまえばそうですけど・・・


「南部から見りゃ危険に感じるのは分かる。ま、北西部、あっちの例のトライアングル地帯は、オレ達としても徴兵の時でも今もで行くのは避けたいけどな」


あそこは・・・危険すぎますよ。徴兵で配属されたら家族が泣くところですから・・・


「まあな、ここも近いもんがあるが・・・まあ、オレ達はこのへんが地元ってのもあるから、良くも悪くも慣れている。しかしまあ・・・こんなところに来る『観光客』ってのも意味が分かんねえよな・・・」


この国に来る観光客って時点でオレ達にも意味不明ですが・・・まあ、古代の壺がころがってるってのは珍しいんじゃないですか?


「そういうもんかな・・・まあ、オレらには見慣れた風景だけど、確かにあまりヨソでは見ないよな」


そりゃそうですよ・・・一応、世界遺産なんですよ?ここ。


「らしいな、実感はないけどな・・・まあ、気をつけて飛んでくれ。空撮地図があると、オレらの寿命も伸びるからな。落ちないでくれよ?」


うちの姫様を信用してください!!


「信用より信仰って感じだけどな、あんたんとこの姫様は」


それは・・・とってもよく分かる話ですよ!!ウチの兵隊は全員そんな感じです!!


「だろうな・・・」

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