第十一節 逢う魔が刻
夕日で血の色に染められた聖都は、やはり静かだった。
不気味さを湛えたその光景に、私は不安に駆られる。
道を行く人影はなく、通りを生暖かい風が通り抜けていく。
知らず知らずのうちに歩調が早足になる。
そして、通りにいくつかの人影を確認する。
私は一旦立ち止まり、恐る恐るそちらに近づくと、それは五人の修道女だった。
私と同じ黒尽くめの格好に首からかけている聖印・・・
彼女達は、失踪した修道女見習い達だった。
私は彼女達に駆け寄る
「無事だったのね、皆……」
私は彼女らに話しかける
「ええ……」
一人が答える。
シスター・アンだ。
だが、何かがおかしい。
全員表情を変えないのだ、眉一つ動かさない。
「どうしたの……皆……?」
私は問いかける。
普通に考えればお互いの無事を喜び抱き合っていても不思議ではい。
私は改めて彼女達を見る。
全員見覚えがある、確かに同僚達だ。
しかし、タニアの姿だけは見当たらない。
「タニアは……?」
「先に帰って待っているわ、さあ、私たちも帰りましょう」
私の問いに、まるで棒読みのようにシスター・アンが答え、手を差し伸べてくる。
私は頷こうとしたが、あることに気付く。
彼女たちはずっと目を開けたまま、瞬きをしていないのだ。
私は半歩身を引き。
「あなた達、何者なの……」
私の問いに彼女たちは暫くただ黙っていた。
しかし、突然にシスター・アンが私の腕を掴んでくる。
その握力は明らかに女性、いや人間のものではなかった。
そして、アンが私を引き寄せようとしたとき
ビュウッ
突然私とアンの間を何かが風を切って横切り、アンの腕が半ばから切断され、それとともに手も私から離れ落ちる。
あまりのことに私は声すら出せなかった、いや、思考が現実についてこない。
私はアンの腕の断面をただ見つめていた。
傷口から血が流れ出し、地面にできた血溜まりで落ちた腕がまだのた打ち回っている。
あまりに衝撃的な出来事に頭が真っ白になる、悲鳴すらも口から出てこない。
「よう、物騒なお友達と遊んでるじゃねえか、俺も混ぜろよ」
男の声が、私を現実に引き戻す。
声のした方を向くと、そこには棺を担いだ異様な影、あの白尽くめの男がいた。
夕日に染まるその姿は、まるで全身に血を浴びたかのようだ。
男は凄絶な笑みを浮かべ
「知ってるか、こういう血の色の夕日の時のことを、どう言うか…?」
男の問いに私はただ呆然と視線を返す。
「逢う魔が刻だ」




