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クラリスの発言に、クソ野郎は時間が停止したかのように口をあけたまま唖然としている。おそらく理解が追いつけていなく固まってしまったのだろう。静寂に包まれた後、纏わせていたプラズマがパチンと音を鳴らして我に返る。クソ野郎は天敵を発見した動物のように一目散に後ろに飛んだ。クラリスから離れたクソ野郎は大量の汗を流しながら激しい息遣いをしている。そして、心の声が漏れ出すように震える唇を動かして呟きだす。
「あいつがこの状況を作り出した……? そそそ、そんなわけない……コントロールされないために俺は編み出したスキルを使用した……それなのに……そもそも動いてもいない相手になぜ攻撃が当たらんのだ……」
まばたきをするのを忘れてしまったクソ野郎はブツブツと言っている。そんな動揺から未だ回復できないクソ野郎に対して、クラリスはゆっくりと歩みだす。
「攻撃が当たらん理由が知りたいのか?」
クラリスがそう質問すると、おもむろにクソ野郎を指さした。
「お主が使用した『スキル』が原因じゃよ」
クラリスの発言にクソ野郎は目を丸くする。そして、クラリスはこう続けた。
「お主は身体能力を上げることで戦闘が有利になると思っておるようじゃが、魔法使いが上手く剣を使えんように、いくら最強の聖剣を手に入れたとしても、それ相応の剣技を身につけてなくては攻撃を当てることなんてできん。身体能力も同様でな、何倍も引き上げられた身体能力はそれ相応の技術を身につけてないとコントロールするのは難しい。で、戦闘経験のないお主はガワである勇者の戦闘能力頼りにこれまで戦っておったわけじゃが、身体強化経験がないばかりに勇者が扱える身体能力を判断することができんかった。どんな強者でも制御できないくらいまで引き上げられたら、止まっている物に当てること自体が至難の業となる。最初の2倍まではなんとかできたようじゃが、さすがに4倍まで引き上げられたら、さすがの勇者でもお手上げってわけじゃよ。ついでに言っておくが、勇者グルモがなぜ3倍までしか身体強化をしなかったか、それは命を失うからではない、引き上げた身体能力を扱えずにまともに戦うことができんと判断したからじゃ。まぁ、何倍も身体強化をしたことのないお主ではわからんことじゃよ」
淡々と説明するクラリスに、クソ野郎は目を丸くして引き込まれるように聞き入っている。その後、クラリスはもう一度指をさした。
「そのスキル、自分が作り出したように言っておったが、本当にそうかのう?」
そう口に出した途端、クソ野郎は小さく「は?」と返すだけだった――。




