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転生した社畜OL~学園ライフを謳歌しようとしたら、ドキドキが止まらないのですが…~  作者: 竜胆マコト


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終章 エピローグ:君のために僕がいる

―そして月日は流れ、7年後―。


私は赤い薔薇の咲き乱れる中庭で紅茶を飲んでいた。


今は薬師の仕事の休憩時間である。


「シエン様、紅茶のおかわりはいかかですにゃ?」


メイド服姿のシャーリーが私に紅茶を進めて来る。


「そうだね。せっかくだしもう一杯いただこうかな。

シャーリーは紅茶を淹れるのがとても上手になったね。


ここにメイドとして就職した当初は、慌ててティーカップを割っていたけれど…。

仕事には、もう慣れたかな?」


私は横に控えているシャーリーに話しかけた。


「も、もうその話は勘弁してくださいです…。

慣れないことも多かったけど、今は楽しく仕事してますにゃ!」


明るいシャーリーの言葉に思わず私は、ふふっと笑みが零れた。


―7年前―。


プリムラ魔術学園の建物復興はわずか1カ月半で完了し、延期されていた授業も再開された。


教師陣は授業形式ではなく「指定した範囲の教科書を読んで、読んだ内容をレポート提出する」という方針で、なんとか全学年の後期のカリキュラムを修了させることに成功した。


そして私達は2学年、3学年と進級していき、

最終学年まで同じSクラスのメンバーで学園生活を過ごしていた。


4年生として学園で過ごす中、私達は実習に励みながら、自分たちの進路を決めようとしていた。


深緑豊かな5月の半ば頃、ガイルから「クラス全員に話したいことがある」と言われ放課後、私達はガイルを筆頭にクラス全員、教室へ集められた。


「忙しいのに集まってもらってすまない。…俺から少し、お前らに提案がある。

その…あまり大きな声では言えないが、俺とシエンの婚約が正式に決まった」


もちろん私は、ガイルがこれから皆に言おうとしていることについて把握済みである。


「ひゅーひゅー‼おめでとうございま~す!シエンちゃん、お赤飯炊いた?」


クランベリーが茶化すが、本題はそこではない。


「まだ、話しの途中だ、アホクラン。…そこで、俺からお前たちに提案がある。

単刀直入に言うが…ダイアンサス家で、俺とシエンを支えてくれないか」


「「「んん⁈」」」


全員、ガイルの言葉の真意が分からず、半分パニックになっている。


「つ、つまり、ダイアンサス家でメイドや執事や近衛騎士として、俺たち二人を支えて欲しいんだ。

もちろん、強制じゃない。やりたいと思う奴だけでいい。…給与はきちんと支払うし、衣食住も保証する。だから…」

ガイルが懸命に説明する中、私も後押しして説明しようかと悩んでいた折、

シャーリーが真っ先に手を挙げる。


「それって、シーちゃんとガイルのお世話をしながら、働くってこと?」


「まあ、そういうことだ。嫌なら断っていい…無理にとは…」


ガイルが弱腰になっていると、いきなりトーマが話しに入って来た。


「僕、ダイアンサス家で働きたい」


クラス全員が、トーマのほうへ向き直る。


「トーマ?急にどうしたの?…というか、真っ先にトーマが反対すると思ってたんだけど、本当にいいの?」


私はトーマの真意が知りたくて話しかけてみた。


「ガイルはいいけど、シエンさんと一緒なら、僕もダイアンサス家で経理係として働きたい」


それを聞いてクランベリーも手を挙げる。


「じゃあ僕もダイアンサス家で働きたい!戦闘魔術師として雇ってください!」


「なら俺は執事として働きたい」いきなりジャイロも手を挙げる。


「そういうことなら、私はシャーリーと一緒にシエンのメイドとして働きたいな、シャーリーはどうだ?」


意外とシンリーもやる気である。


「シエンちゃん専属メイドになれるなら、やりたーい‼」


シャーリーは私と一緒ならどこでも良さそうな気がする。


「なら、俺はガイルと一緒に近衛騎士団に入隊希望だな」


ロックスもニヤニヤしながら手を挙げる。


傍できいていたレインもおずおずと手を挙げる。


「わ、私は屋敷の会計係とか、出来ると嬉しいです…」


「それなら僕は、音楽師として雇っていただきたい。もちろん出来る限りサポートはするよ」ラインハートまで挙手し始める。


「みんな、気持ちは凄く嬉しいけど、自分の進路だから、もっと慎重に考えても…」


私が及び腰になっていると、シンリーが明るく言い放つ。


「何言ってんだ。みんなお前たち二人を祝福したいし、私はシエンやガイルと一緒に仕事ができるなら、とても嬉しいぞ。正直な話、今後の進路、どうしようか悩んでたし」


シンリーが本音を曝け出すと、「それなー」と口々にクラスメイトが愚痴をこぼす。


「いきなり自分のなりたい職業へ就職しろって言われてもさ。正直実習とか行くけど、自分が実習先の職場で働くイメージとか湧かないんだよなぁ」


ロックスが就職活動の学生がぶち当たる「よくある本音」を呟いた。


皆の様子に戸惑っている私とガイルに、ジャイロが優しく言葉をかけてくる。


「確かに、お前たちから見れば、俺たちは安直に自分の進路先を決めているように見えているのかもしれない。だが、『どこで働くか』より、『誰のために働くか』が一番大切なのだと俺は思う。

俺は、出来ることなら、お前たち二人のために『働きたい』と思う」


私はジャイロの言葉に心が染み入った。


そうか…就職って『誰のために働くか』をよく考えることが大切なんだ…。


気がつけば私は、自分の目から涙を零していた。


「す、すまないシエン…!なにか失礼なことを言ってしまったか?」


ジャイロが慌ててシエンに謝る。


「あー!ジャイロがシエンちゃんを泣かせたー!」


クランベリーが騒ぎ立てるので、「ち、ちがうの!」と私は急いで否定した。


「これはね…ジャイロやシンリーの、みんなの言葉が嬉しくて涙が出たの。『嬉し泣き』なんだ」


笑いながら涙をこぼし、私はみんなに微笑む。


そこへスッとガイルが近寄り、私の涙を指で掬い取る。


「相変わらず、すぐ涙が出るよな。…嬉しいなら泣かずに笑っとけ」


その様子をクラス全員がニヤニヤしながら見守っている。


「アツアツですな~二人とも。ガイルは本当に見せつけるのが上手いよねぇ」


クランベリーの言葉を無視して、ガイルが皆に向き直る。


「…お前らの意見はだいたい聞かせてもらった。…本当にありがとう」


ガイルは床下に座り込み、手をついて深々を頭を下げる。


「おい、ガイル!土下座なんかすんな!公爵家の魔族が簡単に頭を下げるなんて…」


ロックスがオロオロしていると、ガイルが覚悟を決めて唐突に述べた。


「みんな、自分たちの進路を俺たちのために捧げると決めてくれたんだ。これくらいできなければ、ダイアンサス家の名折れだ」


その言葉に、クラスの皆の気持ちが一つになったようだ。


「ガイル氏!恐縮ながら結婚式にはぜひ参列させていただきたい」


ラインハートが優美な仕草でガイルに話しかける。


「当たり前だ、クラス全員参加させるに決まってんだろ」


卒業してからも、またSクラスのみんなと仕事が出来ると思うと、私も嬉しくなるのだった。


*****


「卒業してから、3年間…あっという間だったね」


私がぽつりと呟く。


さあっと涼やかな風がなびき、中庭の花弁が舞い散る。


その時「こんなところにいたのか」と私を呼び止める声が聞こえた。


「ガイル!…遠征お疲れ様。辺境の地はどうだった?」


私がにこやかにガイルを労う。


彼はちょうど、1週間前に近衛騎士として遠征へ赴き、辺境の視察をしてしたのだ。


鎧を纏い、甲冑をつけているところを見ると、自室へ寄らずに直接ここへ来たのだろう。


「ああ。特に目立った動きはなかったな。町も栄えていたし、今のところは問題なさそうだ。7年前の事件から、警備をより一層固めているからな」


ガイルの言葉を聞いて、私は少し安堵した。


けれど、この先またシラカバとは違う反社会組織が立ち上がることもあるだろう。


それに、公爵家に身を置くことは、色々と危険もつきまとう。


私はガイルにだけ聞こえるように扇を口に当て、こっそり耳打ちした。


「影の者から何か連絡はあった?」


「…南端の地方で窃盗が多発しているらしいが、こちらに実害は出ていない。引き続き調査を頼んでいる」


実は経理係・兼隠密調査員としてトーマには各国の情報を集めてもらっている。


トーマもここの屋敷でしっかり仕事をこなしているようだ。


するとシャーリーが不思議そうに私達を見つめる。


「どうかしましたかにゃ、奥方様、旦那様?」


ハッとして私たちは距離を取る。


「な、なんでもないよ!それより、ガイルも紅茶はどう?

シャーリーの淹れる紅茶は美味しいんだよ」


私は敢えて話を逸らし、ガイルに話を振った。


「ああ…俺はいい。それより、このあと報告書を書いて、仕事が片付いたら自室で少し休む。

お前も仕事が終わったら、俺の部屋に後で来てくれ」


そう言い残し、ガイルはその場を去って、邸宅へ戻っていった。


「シエン様、今日もまた『夜のお誘い』ですか?熱いですね~」


シャーリーは私をからかう。


「うーん…それなんだけど。最近、体の調子があまり良くなくて…。

なんだか妙に食欲が湧かないし…時々吐き気を催してしまって…今日は断ろうかな」


私が最近気になっていることをシャーリーに告げると、彼女は目を丸くして私を見ている。


「シ、シエン様!それ、いつからですか?その体調不良!」


「えっと…1か月前くらいかな?」


「…!そういうことは早く言ってください!

すぐにシンリーとジャイロに報告してきます!シエン様はそのまま動かないで!

下手に動いたら、お体に障りますよ!」


シャーリーは私を椅子に座らせたまま、屋敷へ一目散に走っていく。


「もしかして…案外、自分のことって分からないものよね」


私は少しだけふふっと笑みを浮かべ、自分のお腹をさすりながら、

ゆっくり中庭の様子を眺めるのだった。


ちなみに私がガイルの子を身籠ったという話は、また別の話である。


―End-


ここまで読んでくださり、いつもありがとうございます。

これでこの物語は最終回となります。


ここまで駆け抜けて、途中でくじけそうにもなりましたが、

なんとか投稿し終えた…‼


シエンとガイルには本当に幸せになってもらいたくて、

結婚ハッピーエンドにしちゃいました。

ちょっと話がうますぎる気もしますが。


また、別のお話でお会いできるのを楽しみにしております。

それでは、ありがとうございました!

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