第1章 プロローグ:OLから赤ん坊へ
社畜OLが異世界転生しちゃったよ!な内容の小説を書いてみました。
プロローグなので、現代社会の描写がほとんどです。
暖かい目で読んでいただけると、幸いです。
※内容を一部修正しました。2026.10.7
※『カクヨム』にも連載しています。https://kakuyomu.jp/my/works/11054822663831803486
私の人生ってなんだったんだろう。
誰か答えを教えてくれないか。
社内でプルルルっと電話が鳴った。
3コール以内で受話器を取る。
「お電話ありがとうございます。N食品です。…はい、お世話になっております」
私、椿川小春はN食品株式会社の営業事務へ配属された。
そして、現在に至るまで見積もりや商品の注文の電話を受付し、データ入力する仕事を任されている。
ただし、事務方として仕事をする私は、営業部との折り合いが悪かった。
「おい!椿川。また受注の数量、間違えてるぞ。先方から注文した数が違うとクレームが来た。お前だろ、S商店に発注かけたの」
営業の小早川課長から声を掛けられる。
たしか、先方から商品の個数は55個と聞いている。電話注文を受けたので、メモもしっかり記録している。
「…確かにS商店から電話を受け、商品を55個お願いします、と受付しましたが」
「はぁ?お前、バカじゃないのか。先方は50個発注したって言ってるぞ!頭おかしいだろ。一度、脳外科行って診てもらえ」
…またか。
S商店は電話口で注文をする得意先なのだが、ここ2~3年注文ミスが多発している。
事前に聞いている発注数と、相手が必要な数が違うのだ。
ミスをこちらに擦り付けるとは、相変わらず良い度胸をしている。
「申し訳ありませんでした。先方に電話して、マイナス伝票を切っておきます」
「電話はいいからマイナス伝票をさっさとよこせ。これからS商店に行く用事あるから、ついでに持っていくんだよ。ほんっとにお前は気がきかねぇな」
そう思うのなら、用件だけ言って赤伝票作らせればいいじゃない。
先方がミスしたかもしれないって疑わないのが、本当にイラつく。
『脳外科行ってこい』なんてただのパワハラ。
私は喧嘩をする暇も惜しく、黙々とマイナス伝票を作成し、小早川に伝票を渡した。
狭いオフィスの中、周りの人間にも私たちのやりとりは見えているが、誰も気にかける者はいない。
攻撃的で粘着質な小早川課長と、誰も関わり合いたくないのだ。
唯一関われるのが年長者の私しかいないのもまた、事実である。
小早川は伝票を奪うように受け取り「外回り、行ってきまーす」と周りに告げる。
彼は足早に会社を出て行った。
もう、そのまま帰ってこなくていいよ。
そっと小声で私は小早川の背に声をかけた。
*****
仕事を終えたのは午後8時。
いつもより早い時間に仕事を終えたが、また今日も残業してしまった。
タイムカードを切って、足早に家へと帰る。
私も今年で37歳になってしまう。
この会社に入って10年以上経つが、休日でも会社から電話がかかってくる。
本気で転職を考えたほうがいいかもしれない。
この会社に入ってから食欲が落ち、入社当時より8キロ体重が落ちた。
本当にろくなことがない。
会社から家までは徒歩で帰っている。
通勤に時間とお金をかけたくないので、会社から近いところに住んでいるのだ。
街路樹が立ち並ぶ歩道を歩きながら、ぼんやり考え事をする。
「ほんと、私の人生ってなんなんだろう…どこで選択を間違えたのかな」
よく考えれば、周りに流されてばかりの人生だった。
中学校は地元に通い、高校も大学も「なんとなく行ってみたい・みんな通ってるから」
という理由だけで、大学や学部をある意味、適当に決めてしまった。
自分のやりたいことって結局なんだったのだろう?
あれ、おかしいな…昔はもっと…
考え事をしているうちに、どうやら私は赤信号で横断歩道を渡っていたようだ。
右側から大きなトラックが迫ってくる。
大きなクラクションが鳴るが、とっさの出来事に足がすくみ、体が動かない。
キキーッ!ドンッ‼
あっけなかった。
一瞬にして意識が遠のき、私は奈落の底へと落ちていく感覚を覚えた。
あーあ…。
もっと自分のやりたいこととか、真剣に考えるべきだったよな。
周りに流されて、自分を見失って。
私の人生って何だったのかな。
昔はもっと夢があったよな。
来世があればもっと、自分の心に素直に生きたいな。
*****
―どれくらい時間が経っただろうか―。
暗闇の中で、一筋の光を見つけた。
意識が戻り目を開けると、そこは私の知らない空間が広がっていた。
ここ…どこ?日本じゃないよね。それに私の身体、なんか違和感が。
目の前には見知らぬ優しそうな男性と女性が、私を見て笑顔を振りまいている。
喋っている言語は、日本語とも英語とも少し発音が違う。
前世で私はラノベや漫画を読むのが好きだったため、なんとなく理解できた。
もしかして、ここ異世界?確かに、男の人も女の人も、耳が尖っているし、瞳の色が人間離れしている。
自分の身体について把握しようと、自らの手のひらを確認した。
この紅葉のような小さい手…まさか、赤ん坊に生まれ変わった?これが俗に言う異世界転生ってやつ?…マジか
とりあえず今は、目の前の大人たちが喋る言語が全く理解できない。
なので、赤ん坊のフリをして言語習得から始めようと、私は心に誓ったのだった。
ここから、私のリ・トライ人生が、始まる。




