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紅白


チートを育ててもレベル3のギデオンで死ぬ。

奴を倒してもネメシスで死ぬ。

は?




「おいアルビオンおまえ! なんかオレが出るまでの間に変な話挟まなかったか!?」


「我がそんなこと知るわけなかろうがバカめ。それにそのようなことが出来るとして、やれるのは旦那さまただ一人だけだぞ?貴様我が旦那さまを疑っていると判断して良いのだな?」


「何を言うかアホめ。一言もんなこと言ってねぇだろうが。だからオメェは頭が万年お花畑だと言われんだ。たまには言葉の裏じゃなくて言葉そのままを受け止めろってんだ」


「ああん? ヤるのかペッタンコ」


「表出ろや幼児体型、おおん?」



 現在、竜宮城の玄関では週に一度の名物が開催されたところです。

赤い髪を腰あたりで揺らし、大きな金眼を吊り上げているのはドライグという少女。

対するは白い髪を肩口で揃え、クリクリとした碧眼を威圧マシマシで睨んでいるのがアルビオン───つまりアオです。


 そう、伝説に詳しい者ならば一度は耳にしたことがあるだろうアーサー王伝説に登場する『赤い竜』と『白い竜』。

何を隠そうこのロリっ娘二人がそのドラゴンなのでした。

傍目に見れば可愛らしいマスコットでしかありませんが、ちょっと小突いただけで山なんて跡形も残らないくらいにはインフレした強者なのです。


 そして何より、伝説の通り二人はとても仲が悪いことで有名でした。

顔を合わせれば即ケンカ。

今のようにメンチを切り合ってるのは序の口でしかなく、加減なき叩いてかぶってジャンケンポンでクレーターを量産し、大食い対決で常連客たちを恐れ戦かせ、どちらがより子供たちを喜ばせられるかで大道芸をしたり。

など、およそ人では行えぬ、いとも容易く行われるえげつない行為によっていくつも勝負をしてきました。


 今のところ、勝敗は五分五分となっており引き分けに終わることも珍しくありません。

片方が勝ってもその次に巻き返されるという負けず嫌い同士によるイタチごっこは終わりが見えず、途中から数えることを止めてしまいましたが数年前の時点で三桁はいっていたとロロは記憶しています。



「ドラちゃんが勝つにカツ五枚!」


「何言ってんの、アオさんが勝ち越してくれるにカツ十枚!」


「アオさんもドラちゃんもがんばれー!」


「アタシはお母さんが負けると思うけど、お姉ちゃんは?」


「私もお母さん負けると思うにカツ一枚」


「今回は引き分けそうなのでカツ多めにしときますね」



 勝敗の結果は、さらりと流されてしまったロロの予測通りに引き分けに終わり、賭けに負けた多くの客たちが色々な人たちにカツを奢ることになってしまいました。


 今回の勝負はにらめっこ。

童歌(わらべうた)と共に変顔をし先に笑ってしまったほうが負けというアレです。

両者ともに普段見ることができない、とても美少女たちがしているとは思えない変顔を披露したことにより店内には爆笑の嵐が巻き起こりました。

何回か変顔を変え、ようやく堪えられなくなった両者が同時に吹き出したことで結果は引き分けとなったようです。



「なんかにらめっこやってる時だけ画風変わってなかった?」


「にらめっこってそういうものじゃないの? アタシの同クラの友達もそうだったから普通じゃない?」


「それならお前さまもやってみないか?! 我はお前さまの変顔も是非見たいのだが?!」


「絶対にやりません」


「ロロはもう素顔見せるだけで驚きだしな」


「それは普段から変顔してると言っているのですか?」



 しょんぼり項垂れるアオですが立ち直るのも早いようで、既にドライグとの賭けに敗れた客から他へ振る舞われるカツをササッと運んでいました。


 一方で店員ではなく客としてやって来ているドライグはいつの間にか注文していたステーキを一切れずつ丁寧に食べています。

その所作は実に優雅かつ高貴さが隠しきれないものであり、とても居酒屋にいるとは思えないものでしたがそれもそのはず。

ドライグは英国のシンボルであり守護者のため、誇張抜きにかなり偉いドラゴンなのです。

どれほどかというと、王室のご意見番として彼らから非常に尊敬されているくらいにはエラエラでした。



「ここのステーキを食うと、もう他のじゃ満足できねぇからさ。まったく罪な腕をしてやがるもんだな? アルビオンじゃねぇが、オレも毎日ここに通いてぇくれぇだ」


「それはありがとうございます。ドラさんに褒められて照れてしまったので、コレをお渡ししておきますね」



 「なんだコレ?」と言ってドライグが受け取ったのは、竜宮城の店舗マークが施されたカードでした。

どこから見ても可愛らしいマークが入ったカードでしかありませんが、ロロが照れ隠しに渡すにしては妙な力を感じてしまい、思わずジロジロと色んな角度から観察してしまうドライグ。

喉元まできているのにあと一歩のところで出てくることができないもどかしさに悶々としてしまいます。



「それは転移カードキーですね。かざしてもらうとどんな扉からでも直接この店に繋がります。所有者認証をすると手品みたいにスっと出せるのでオススメですよ」


「地味なスゴさが逆にスゲェな。ハイテクなんだかアナログなんだか分かんねぇ塩梅がおもしれぇ」


「ちなみにコレはこの一枚だけしか無いんです。言い出しっぺの友達思いがああでもないこうでもないと悩みながら作ってましたから、是非貰ってくださいな」


「───あん野郎・・・」



 言葉では言い表しにくい表情をしたドライグは、まだキチンと説明していないはずのカードの所有者登録を簡単に済ませると大事に大事に懐へとしまいました。

そこはドライグの逆鱗がある場所であり、不用意に触ろうものなら相手が誰であれボコボコのボロ雑巾にされてしまいますので盗難の心配はありません。



 ───以降。

毎日のように来店するようになったドライグが、顔を合わせる度に少しだけ優しい微笑みをアオへ向けるようになり、それを鬱陶しがったアオと激突することになりますが蛇足でしかありません。




あと三話くらいはドライグ編です。

次はまたストックが一つできたら、恐らく来週の土曜くらいか?


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