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サービス



FGO、まさかテュフォン中編とは思わなかったです。





「おぬし、そんな少なめで満足か? それでは体が悲鳴をあげるぞ?」


「え? あ、えっとぉ・・・はい。お恥ずかしながら、金欠なので控えめですので」


「よろしい! ではこれはサービスだ! 料金はいらんからしっかり食って元気になるがよい!」



痩せ気味な青年の前にドンッ! と置かれる肉やら魚やらの料理の数々は、アオがその目利きを活かしてギリギリ食べ切れるかどうかのラインを見極めた量が提供されました。

どれもが腕によりをかけて作られている竜宮城印の逸品たちが放つ美味しさの輝きは、提供された青年から遠慮の二文字を吹き飛ばすのには充分なものであり、周りに座っている常連客たちから別の料理を選ぶ選択肢を吹き飛ばすくらいには美味しそうな匂いを放っています。



「ああ! お母さんまーたサービスしてる!」


「ふはは! 油断したなミオ。さてはそなた、ここは戦場だということを忘れていたな? いかんぞー、今は勤務中ゆえな。気を引き締めてお客のことは敵と見做さねば。どこから注文さ(撃た)れるかわからんぞ」


「くっそぉぅ・・・・・・あっ! へいそこの少女! サービスでコレとか食べない?」


「へぁっ?!」



これぞ竜宮城名物!

店員たちによるサービスの押し売り祭りです!


料理を作っているロロを除いた三人による仁義なき真剣勝負は、その日誰が一番サービスを提供したのかを競い合うものでした。

ただし、誰彼構わずサービスしまくるのでは三流どころか迷惑でしかありません。

食べたいのに我慢している者を的確に見抜き、その人が何を求めているのかを瞬時に悟ることで、本当に必要としている人に欲しいものを提供してこそ一流です。

そう信じて疑わない家族によるバトルは、常連客たちの間では毎日の楽しみでした。


もちろん、それを見たことで調子に乗った出来の悪いお客には制裁が下されるので問題ありません。

ただその相手の黒歴史朗読会が店内で開かれるというだけの話ですので、血が流れることもないのです。



「お父さん、いちごパフェ一個追加ー!」


「はいどうぞ」


「お前さま、こちらに焼肉定食二個だ!」


「お待ちどう」


「こっちにもいちごパフェ〜!」


「はい出来ました」



しかし、このお店の中で一番の見物は何かといえば、それは皆が口を揃えて店主ロロの料理速度と答えることでしょう。

注文した次の瞬間には言った通りの料理が並んでいるのですから驚きでしかありません。

初めてのお客なら最初に驚くべきシーンは間違いなくここでした。


ただ、訓練された常連客はそうではありません。

中には少し複雑な料理を注文してみたり、宴会料理を大量に注文するという大博打に打って出ることもありました。

残念ながらそれらの浅はかな企みはロロのスピーディな提供によって簡単に押し返され、「参った参った!」と大笑いしながら他のお客さん同士で宴会を開いていたのは記憶に新しい出来事でしょう。



ところで、このサービス祭りの最多勝者はいったい誰なのか。

年の功で培われてきた観察眼で順調にサービスをしていくアオ?

鍛えられた直感と経験によってアオに負けじと食らいつくルナ?

それともそんな二人とは関係なくお客と一緒になって食べているミオ?

あるいは一度も参加していませんよと言わんばかりにそれとなくカウンターのお客に一品ずつ追加して出しているロロ?



「まあ、そんなもの一々数えていないので分からないのですけどね。今日は勝った。今日は負けた。それの繰り返しなだけですので・・・・・・」


「そうなんですか?」


「はい。アオさんもルナたちも、勢いだけで生きている陽キャですよ? そんな人たちが細かな数字を逐一覚えていると思います?」


「・・・・・・そう言われると、否定はしずらいですね」



ロロがカウンターの目の前に座る、初めて来てくれた女性客へ向けて陰キャ節を炸裂させているところ。

その隣に座っていた別の女性客によって、目の前の女性客はあっという間に攫われてしまいました。

それはもう見事な絡み方であり、ベロベロになりながらも相手の腰に手を回した次の瞬間には膝の上に座らされるという展開です。

あまりもの鮮やかな手腕に、周りの常連客たちは「今日の犠牲者はあの子か」と感心するばかり。


こうなってしまえばロロであろうと介入は野暮なことなので、気にしないようにしているようでした。

きっと恐らく、この後は近くのお城なホテルで一夜を共にして食べられてしまうのだろうと分かっていても、ロロには他人事ではないので構う暇がないのです。



「お前さま! 疲れておるか? 疲れておるだろう! では今日もコレを飲むがよい!」


「ンムッ!」



抵抗する暇もなくロロの口にねじ込まれる小瓶は、滋養強壮に効くアオ特製のドリンクです。

希少な蘇生薬として特許を取得しているほどの代物ですが、彼女にとっては朝飯前の片手間に作れてしまうスムージー的なものでしかありません。



「うーわ、またエグいのを飲ませてるよ。普通ならショックで一回心臓止まるの知ってる? お父さんだからあの程度だけどさ」


「でも、この前お父さんが口から飲ませられるのはまだ良いって言ってたよ? 一回お尻から飲まされ───」


「あーはいはい言わないでー」



ドリンクの効果が出たのか、少しだけ肌が火照り動きが速やかになりました。

これでこの後のラストオーダーも乗り越えられると言ったところでしょう。



そして、本日のサービス祭りの勝者はミオでした。

その仕事の間も常に何かしらを食べている彼女にとって、我慢というものは敵でしかありません。

当然、敵に対する嗅覚も凄まじいもので、少しでも我慢しようものならいつの間にか何品か料理が増えている不思議が起こります。

そういう場合、裏には必ず暴食の妹がサービスした名残なのでした。





次回は・・・・・・たぶん来週です。



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