72話 さらば大地獄
72話 さらば大地獄
ついに来ました、地獄から解放される日が。おおっと、地獄じゃなかったな。流石に失礼だなその表現は。
‥‥‥大地獄からの解放だ。
「いや~良かったよ、君を無事退院させられて」
「ありがとうございました。もうここに来なくて良いように頑張ります」
結構まじで来なくて良いように努力しますね。
「ほんと世話の焼ける子だな~。」
なんか、病院の先生が言うセリフではないよな。
「仏の顔も三度までっていうしね。次は本当に仏の顔を見ることになるかもね。あはは」
何言ってんだろうこの先生。やっぱり変だよ。
「じゃあお大事に、プレイボーイ君」
‥‥‥だる。
◇◇◆◇◇
「やっと退院だねお兄ちゃん。今まで私だけで家事してたから、今までの倍は働いてもらうから」
麗奈が荷物を運ぶのを手伝ってくれていると感心していると、急に横から長期連休明けのブラック企業みたいなことを言ってきた。
「もうちょっとお兄ちゃんをねぎらうとか無いのかな。これでも死にかけてたからね一応」
「大丈夫だって、お兄ちゃんしぶとそうだし」
妹ってそんな感想口にすることあるのかな。俺が家に居ない間に不良になっちゃたの?
「この病室ともお別れだな」
俺のメンタルが何度この部屋で破壊されたことか、考えるだけでも嫌になってきたのでとっととこの部屋からおさらばするか。
「早く行くよお兄ちゃん。下で杏葉さん待ってるから」
おっとそれはいけない。この世で一番待たせてはいけない人物だぞ、その人は。
後からなんて毒舌を吐かれるか分からないから急ごう。身の安全のためにねって‥‥‥いや、それは冗談で一応彼女だからですよ?
◇◇◆◇◇
「あら、元気そうね。てっきり干からびている頃かなって思ってたけど」
「いや、この前もお見舞い来てくれてたでしょ」
最近この人、麗奈の前でもだんだん毒を吐くようになったな。初めて麗奈と会った時はあんな猫を被っていたいうのに、これでいいのかこの人は。
「お兄ちゃん、まずは迎えに来てくれた杏葉さんにありがとうでしょ?」
「いや、お前洗脳されてるぞ‥‥‥ってなんでもないです」
水瀬さんが物凄い眼差しでこちらを見ていたから、言いかけた事を途中で切り上げる事にした。
まあ麗奈は水瀬さんのファンって言ってたし、もう会う前から洗脳されている様なものか。
俺が妹を救えなかった事を悔やんでいると、後ろから水瀬さんが喋りかけてきた。
「早く帰りましょう、牧野くん。私もあなたと積もる話があるから、ね?」
どうしたんだ急にこの人、非常に帰りたくないのだけども。まだギリこの病院の方がいいかもしれない気がする。
‥‥‥厳しい、か。
「お兄ちゃんあそこのタクシーに荷物乗せてね」
「えっ、タクシーって豪華だな。バスで帰ればいいのに。家までだったら結構遠いぞ?」
俺たちの少ない生活費から考えたら結構タクシー代は痛いと思うんだけど、麗奈の奴どうしたんだ。まさかパパか‥‥‥。
「はい、タクシー代よ」
嫌な事が頭に過っていた所で水瀬さんが急にこう告げてきた。
「えっ、いやいや流石に申し訳ないよ」
「いいのよ、これ姉からの退院祝いだから」
「明里さんから?」
「そうそう、この前姉が牧野君の退院っていつなの?、って聞いてきたから、もうすぐらしいわよって言ったらなんかくれたわ」
なんか怖いな明里さんからの退院祝いって。なんだか含みがありそうだ。
「ああそういえば、なんの事だか分らなかったのだけれど、お願いの件忘れないでねって言ってたわよ」
「あはは~、そうなのねー」
やっぱりなにかあると思ったら、この前喫茶店で言われた話か。忘れてたなんて事は無いから‥‥‥、本当にね。
「何隠してるの?」
「いや~そんな特段大事な話じゃ~‥‥‥」
「牧野さ~ん。忘れ物ですよ~」
俺が咄嗟に言い訳を考えていると、病院から出てきた看護師さんが突然名前を呼んできた。
「ああ、ごめん水瀬さん。看護師さんが呼んでるからちょっと行ってくるから。先にタクシー乗っててー」
そして俺は病院の方に足早に戻って行った。
‥‥‥全然ナイスタイミングなんて一ミリも思ってないんだからな!




