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銀河戦国記ノヴァルナ 第3章:銀河布武  作者: 潮崎 晶
第24話:エイザン艦砲射撃事件
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#01

 

 恒星系JL-3090663最外縁部の宇宙空間に、青と紫のビームが激しく飛び交う。青い曳光粒子を纏うのはウォーダ軍、紫色の曳光粒子を纏うのがエイザン軍の砲撃である。閃光が幾つも発生し、小さなそれは敵艦にのシールドに弾かれた爆発。大きなそれは敵艦のシールドを貫いて、本体にダメージを与えた爆発だ。


「方位263マイナス5より、敵バイオノイド艦! 駆逐艦級8!」


 ウォーダ軍の重巡航艦戦隊に対し左舷側やや下方から、モノトーンカラーの小振りな宇宙艦が八隻、高速で迫って来る。BSIユニットの『ピースメーカー』と同様、白と黒に塗り分けられたエイザン軍の宇宙艦を、ウォーダ軍では“バイオノイド艦”と仮称する事を、この戦いから決定している。


「速いな。戦隊針路そのまま。砲火を集中して、戦艦部隊の盾と為せ」


 ナルガヒルデの第4艦隊に所属する重巡戦隊の司令が、司令官席から立ち上がって、強い口調で命じる。戦闘が開始されて約四十分、戦場は両軍の艦隊が交錯し、混戦模様となりつつある。エイザン軍のバイオノイド艦隊が劈頭から一斉に、最大戦速による接近戦を挑んで来たからである。


 艦列を維持したまま、五隻のウォーダ軍重巡航艦が、砲塔群を左舷方向へ旋回させた。戦隊の右舷側には敵の戦艦戦隊と砲撃戦中の、艦隊司令ナルガヒルデの戦艦戦隊がおり、突破されるわけにはいかない。


「距離八千で砲撃開始だ!」


 戦隊司令の言葉を、砲術参謀が配下の四隻に伝える。


「戦隊各艦、砲戦距離八千とせよ!」


 すると程なくして双方は、目標の距離へと


「敵との距離、八千です!」


 オペレーターの声が告げる。ところがこの距離は、バイオノイド駆逐艦隊にも思惑のある数値だった。八隻のモノトーン駆逐艦は隊列を解いて散開する。宇宙魚雷の発射態勢だ。

 ただウォーダ軍の戦隊司令も砲術参謀も、武家階級の『ム・シャー』ではない。だが士官学校出身の民間人…いや、士官学校を出ていない民間人の兵であろうと、ノヴァルナの士魂を戴いた今のウォーダ軍に集った者に、敵を臆する心は無い。


「主砲射撃開始!」

「敵艦宇宙魚雷発射!」


 砲術参謀と電探科オペレーターの声が重なる。五隻の重巡は敵駆逐艦に、主砲の連続射撃を始めた。自艦の防御もそこそこに、敵艦への砲撃を集中する。次々と砕け散るバイオノイド駆逐艦。ウォーダ軍も一隻の重巡航艦が、二本の宇宙魚雷にアクティブシールドを擦り抜けられ、艦舷を直撃される。

 

 宇宙魚雷を喰らって、艦内の酸素を燃焼させた一瞬の爆炎とともに、大量の破片を吐き出したウォーダ軍重巡航艦は、艦尾方向に大きく傾きながら、艦列を脱落し始めた。

 しかし残る四隻の重巡は、怯まず主砲を撃ち続ける。一隻、二隻、三隻…と、火ダルマになるバイオノイド駆逐艦。ただバイオノイド艦を運用している、“脳髄パイロット”ならぬ“脳髄オペレーター”も、やはり“死の概念”は持っておらず、|神から与えられた幸福な作業・・・・・・・・・・・・・―――対艦戦闘を、喜びのうちに遂行しており、僚艦の損耗には眼もくれず次発装填した宇宙魚雷を、至近距離から一斉発射した。


 五隻の駆逐艦から撃ち出された魚雷は計四十本。重巡航艦のCIWS(近接迎撃武器システム)がすぐさま反応、各艦片舷八基の連装小口径ブラストキャノンが、盛んにビームを放つ。だが自律型AIが組み込まれた宇宙魚雷は、時には大胆、時には繊細は針路変更と、弾頭部から後方へ張られた簡易エネルギーシールドが、迎撃の砲火を回避。およそ半数の十八本が重巡戦隊へ肉迫して来た。


「被弾警報! 衝撃に備え!!」


「みんな、何かに掴まれ!!」


 四隻のウォーダ軍重巡内部で、異口同音に魚雷被弾の警告が発せられる。すると次の瞬間、四隻全てに魚雷が一本ずつ命中した。戦隊旗艦でも激しい衝撃が、艦橋に襲い掛かる。

 何人ものオペレーターが椅子から投げ出されて、床に倒れ込む中、戦隊司令は複数の魚雷が命中する事無く、外部ビュアーの映像画面を横切って行くのを見た。


「なにっ!?」


 命中しないまま通過した宇宙魚雷。眼で追う戦隊司令。その先にいたのはナルガヒルデの旗艦『ローバルード』を含む戦艦戦隊だ。敵駆逐艦部隊は最初から、艦隊旗艦を狙っていたのだ。十本以上の宇宙魚雷が『ローバルード』に向かっていく。


「いかん! 敵の魚雷を―――」


 ニーワス様の旗艦へ向かわせるな、と言いかけたところで、戦隊司令の乗る重巡は、再び激しい震動に見舞われる。エイザンのバイオノイド駆逐艦が、主砲の連射を浴びせながら、ウォーダ軍重巡戦隊の前を横切ったのだ。


 マズい、突破された!…と胸の内で叫ぶ戦隊司令。だがその時、想定外の方向からの超電磁のライフル連射が、宇宙魚雷を捕捉し、さらにバイオノイド駆逐艦の艦腹に風穴を開け、ナルガヒルデの旗艦『ローバルード』を守った。


「!?…あれは」


 司令官席で艦の後方を映し出している映像を見ていたナルガヒルデは、見覚えのある人型機動兵器の姿を認める。第8艦隊司令官、トゥ・シェイ=マーディンのBSHO、『テンライGT』だ。






▶#02につづく

 

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