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ダンジョン攻略JK配信者、配信の切り忘れに気づかず特級モンスターを一方的にボコった結果伝説となる  作者: Lunatic/夜桜カスミ
第二章 黒からの夜明け

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人生初の案件

 時給九億円をたたき出し気絶してしまった配信から数日後。姫乃はいつも通りダンジョンに潜っていた。


「皆さんこんひめー! めーっちゃ久々なダンジョン配信だよ!」


”こんひめ!”

”姫様こんひめー!”

”サメの顎の名前はジョーズ:札束持ってビンタする構えをしながらこんぷに”

”めのっさんのダンジョン攻略だぜぇ! エンターーーーーーテインメントーーーーーーー!”

”味噌付けの漬け物:相変わらずジョーズさんと漬け物さんのあいさつ癖強いなwww”

”流石は姫様の配信にいる二人のネタ枠だ。あ、もう一人はbanbanさんのことね”

”banban:俺!?”

”姫様今日テンションちょっと高めだ。久々なのもあるけど、案件だからだろうな”


 そう、姫乃は今テンションが少し高い。その理由は、例の一件で先延ばしになってしまっていた案件配信を、今行っているからである。

 案件配信なんかせずともものすごい収益を上げているのだが、姫乃自身がどうしてもやりたいからと美雪に頼み込んで、月二回やることを許してもらっている。

 そしてこれが人生初の案件配信。普通に嬉しいし、テンションが上がらないわけがない。


「本日ボクがご紹介するものはこちら。ででん! 色んな機能が搭載されている魔動力グリル~!」


 そういいながら結構でかめなロティサリーグリルを取り出し、カメラの前に見せる。

 姫乃が今回受けた案件。それは、調理器具であった。


”なんでだよ!?”

”ダンジョン関連のものってツウィーターで告知してたのに……”

”なんか武器でも紹介するのかと思ったら、全然関係ないものだった件”

”姫様それじゃタイトル詐欺だよ!”

”まーたぽんこつ晒してるよめのっさん”

”ぷにのさん……”


「いやいや、ちゃんとダンジョン関連のものだよ? これ、実はダンジョン攻略に役立つアイテムを開発生産しているダンジョンサバイバーさんからの案件で、これも立派な攻略お役立ちアイテムだよ」


 ダンジョンサバイバーは、名前の通りダンジョンの中で生存するために必要な便利アイテムなどを取りそろえている。

 武器や魔術道具などは当然のものとして、姫乃が今回受けたもののように調理器具も出しているのだ。


「ダンジョンの中は危険でいっぱい。普通の場所で普通に料理しちゃったら、その臭いでモンスターを釣ることができちゃうからあれだけど、ダンジョンの中には都合のいい場所っていうのが存在する。みんなも知っている、安全地帯。各階層に決まって複数個所存在していて、それはずっと固定された同じ場所に残る。だから定期的に長期遠征だったりとかをすることができるんだよ」


 安全地帯。それはモンスターが現れず、かつモンスターが本能的に近づきたがらない場所。

 原理は、モンスターの肉体を強制的に消滅させる未知のエネルギーが充満しており、モンスターの放つ攻撃はもちろんそこに踏み入れた瞬間モンスターが消滅する。

 彼らはそのエリアを本能的に嫌っており、決してそこに足を踏み入れようとしない。探索者たちはそれを利用して、ダンジョンの中で休息などを取る際には安全地帯の中で行う。


 長期遠征も同じように、ダンジョンの中で寝泊まりをする際に安全地帯を使う。その中であれば襲われることもないし、その未知のエネルギー自体人間の体力や魔力を急速に回復させるため、遠征中は安全地帯の発見が急務となる。

 そしてその安全地内内であれば、どれだけ匂いが強烈な料理をしても安全なため、ダンジョンサバイバーは調理器具まで販売しているのであった。


「このグリルはねーすっごい便利なんだー。お肉をグリルすることもできるし、普通にパンを焼くトースターにもできるし。あとはボクが一番得意としている、ローストビーフもできちゃう! 昨日早速おうち料理した時にチキングリル作るのに使わせてもらったけど、最高でした。そして今回はこれを使って、またチキングリル焼きます。今回はハーブをちょっと強めに効かせたものにしようかな」


 何を作るのかはもう決めてある。昨日試しで作ったチキングリルがめちゃくちゃ美味しくできたため、またそれをやるのだ。

 昨日はシンプルに塩だけだったが、今日は少し本格的にしようと考えている。自宅から色んなハーブやスパイスを持ち出しており、個人的に持ってきた魔法瓶の中にコンソメスープも入れてある。

 サラダも前もって用意しておいたし、最高のお昼にできそうだ。ちなみに今日は土曜日なので学校は休みである。


「お肉はダンジョンの中で確保するよ。ボクが今いるこのダンジョンには、マルグラウスと同じように倒すと鶏肉を落とすモンスターがいるんだよね。ガルクロウっていうんだけど」


”あー、あのクソでかい鶏か”

”あれ確か下層にいるやつだよな? てことは今姫様下層にいるのか”

”相変わらず下層をスーパーに行く感覚で行くなぁwww”

”深層や深淵じゃなけりゃ姫様からすれば核石を落とす宝石箱で、いいお肉が手に入る精肉店なんだろ”

”ダンジョンサバイバー公式:あの……打ち合わせは一応してはいましたけども、マジでいきなり下層に持っていくとは思いませんでした……”

”おい公式が困惑してるぞ姫様wwwwww”


 配信に今回の案件をくれた企業がコメントを書き込み、困惑した様子を見せる。それを見たリスナーたちは、面白がるようなコメントを次々と書き込んでいく。


「さて、長々と商品紹介だけするのもつまらないから、早速ガルクロウをハントしに行こう。あれのモモ肉が最高にジューシーで美味しいんだよねぇ。……じゅるり」


 肉系は基本ダンジョン内からゲットする姫乃は、当然ガルクロウの肉の味も知っている。

 ただ焼くだけでも非常に美味しく、モモ肉は肉汁がたっぷりあふれ出てきて、胸肉は油は少なくさっぱりとしていながらもなおジューシーさは損なわれておらず、どのように調理しても絶品だ。

 お気に入りはモモ肉を使った唐揚げだ。醤油味が特に好きだ。

 今回は生憎このグリルだけなので唐揚げは作れないが、狩りまくって大量に入手するつもりでいるため、自宅で作れば問題ない。


 ガルクロウは下層のモンスター。全長で五メートルほどはあるでかい鶏の見た目のモンスターで、非常に狂暴で好戦的。

 ダンジョンに足を運んでいる探索者はもちろん、他のモンスター、果てには同族ですら視界に入ったら喧嘩を売りに行く。

 自分のつがいであろうが、その子供であろうが関係ない。自分の視界に映るものは等しく敵というぶっ飛んだ生態をしており、仮にこれが地上に進出してきても下層モンスターのくせに大した問題じゃないと言われている。


「お、早速はっけーん。ありゃ、喧嘩の真っ最中か」


 索敵に反応があったのでそちらに向かい、通路の角から顔をひょこっと覗かせると、そこには凄まじいラッシュの蹴りを繰り出して喧嘩をしている二体のガルクロウがいた。

 結構長いことやりあっているのか羽があちこちむしられ血が飛び散っており、中々に悲惨な状況だ。なのになおも喧嘩を辞めようとしない。


「グケエエエエエエエエエエエエエエ!!」

「ギョオオオオオオオオオオオオオオ!!」


 喧嘩の理由なんかない。ただ視界に映り込んだから。ただそれだけ。

 なんともよくわからないモンスターである。


「蹴り技主体で来るけど、あれ普通にくちばしで啄んでくるし、体もでかいからタックルもしてくるんだよね。脚力が強いからそのタックルも洒落にならないし、みんなはもしこれに出くわしたらソロで行かないように。戦うなら最低でもデュオで組んでいくこと。タンクとか楯使いがいればかなり安心かな」


 はきはきとガルクロウの戦い方などを解説しながら、七式真装を弓の形に変形。

 しっかりと張られた魔力の弦を持ってぐっと引き絞ると、魔力の矢が二本生成されて番えられる。

 矢の魔力を感じ取ったのか、二体のガルクロウが急に喧嘩を一時停止させて姫乃の方を見てから走ってくるが、三歩歩いた瞬間また喧嘩を始める。

 奴らは究極の鳥頭なのである。


「ほっ」


 気の抜けるような声と共に放たれる二本の魔力の矢が、まっすぐガルクロウに向かって飛翔していき、的確に頭を撃ち抜いて脳を破壊し命を刈り取る。

 ばたりと同時に倒れたでかい鶏どもは、体をぼろぼろと崩壊させていき白い羽毛と肉をドロップする。

 軽い足取りで近付くと、一つは姫乃の顔の倍ほどの大きさがある胸肉で、もう一つはやたらでかいぼんじりだった。


「うーん、もも肉が欲しいんだよねぇ。これはしばらくは乱獲だね」


 目的はもも肉であるため、それがドロップしなかったことに少し肩を落とすが、胸肉は低温調理すればサラダチキンにできるし、ぼんじりは……おうち焼き鳥にでもすればいいだろうときっちり回収する。


”姫様の食欲を満たすために乱獲される鶏さんカワイソス”

”でもよ、最終的に姫様が超幸せそうな顔してもぐもぐすると思うと、乱獲されても仕方がないと思えてくる”

”姫様マジで美味しそうに食べるからなぁ……。明日には市場に出回ってる鶏もも肉がスーパーから消えるな”

”何なら確実にこのメーカーのサイトとか落ちるだろうし、売り上げも伸びるだろwww”

”やってることはぶっ飛んでるけど、選んだ相手が大正解なのはマジでそう”

”この子普段から自炊してるから、料理スキルバチバチに高いから完成する料理のレベル高いんだよな。楽しみ”


 リスナーたちも姫乃がどのような料理をするのかを楽しみにしてくれており、調理中の肉がグリル内で焼ける音をASMRマイクでお届けしてやろうと、心の中でほくそ笑む。

 この日のためだけにそのマイクを買っており、どんな反応をしてくれるのだろうかと今から楽しみだ。

 姫乃がこんな凶悪な飯テロ計画を企てているなどとリスナーたちはつゆ知らず、姫乃が美味しそうに料理を食べるところが見たいから早く出て来いとコメントを書き込む。

 中には、というか姫乃の配信を初期から見ている古参勢は何をやろうとしているのか気付いたようで、まだ時間がかかりそうだからノンアルビールやつまみ、焼き鳥などを買ってくるというコメントを残していた。

 流石に初期勢には見破られるかと思ったが、今は同接の母数が凄まじいのでかなりの発狂が見られるしそれで良しとしようと、うきうきと軽い足取りで次なる獲物を探し求め探索を進めた。

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