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ダンジョン攻略JK配信者、配信の切り忘れに気づかず特級モンスターを一方的にボコった結果伝説となる  作者: Lunatic/夜桜カスミ
第一章 規格外JKの無双配信

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激戦を終えて

 新宿で発生した、十二年前の悪夢の再来と思しき怪物災害。死傷者が大量に出ると予想されていたが、一人として犠牲者を出さずに姫乃が単独で完全殲滅してから二週間が過ぎた。

 あれからテレビでは連日姫乃の偉業を称えるかのように取り沙汰され続けており、アワーチューブでも姫乃がいかにやばいことをやってのけたのかを解説する動画が上がる。


 あの一件をエンタメにするつもりはないため姫乃は自分のチャンネルで切り抜きは一切上げず、黒葛原晴章が地上で再び因縁と勝負を吹っかけてくる前までの配信の切り抜きを上げていた。

 しかしそれでも、有志の方が善意で切り抜き動画を毎日作り続けており、そこからの外部流入が凄まじく結果的にチャンネルが大きく成長した。

 姫様旋風を引き起こしているため、その切り抜きは軒並み一千万二千万再生を突破しており、中には投稿して三日で五千万回再生されたものまである。


 あの一件で姫乃が直接助けた人は数多くおり、世間は姫乃の賞賛で埋め尽くされている。新宿の街が多少の被害は受けているものの、姫乃が倒れた後に駆け付けたギルド職員たちが回収した核石や素材を、姫乃は目が覚めた後に復興に使うようにと譲った。

 ちなみに、ファーヴニルの素材と核石だけは受け取った。これも渡してしまおうと思ったのだが、それは姫乃が持つべきものだと拒否された。

 なのでとりあえず、もう税金とかそんなこと言ってられないレベルの収益が出ているので、ファーヴニルの核石は売却。

 せいぜいが数百万かと思ったら、そもそもあの邪龍の素材や核石は異常なまでに希少で産業的な価値が高すぎるため、五億とかいうぶっ飛んだ額渡されそうになった。

 流石に女子高生でその金額は無理だとごねた結果、一億円だけもらって残りは全部復興に回すことになった。


「うひぇ……。何この待機数……」


 二週間の間、姫乃はずっと配信を休んでいた。その間も動画の投稿は続けていたが、久々の配信ということもあってちょっと緊張していた。

 人が来るだろうか、何か色々言われるのではないかと不安視していたが、事前に立てておいた配信の待機枠には既に五十万人もスタンバイしていた。

 しかもまだ配信が始まってすらいないというのに、スパチャら飛び交いまくっておりもうとっくにえげつない収益になっていることに、宇宙猫状態になる。


「美雪の言った通りだったなぁ。あれだけのことやっておいて、二週間配信しなかった程度じゃリスナーの数は減りやしないって。むしろ多いくらいじゃないこれ?」


 爆速で流れているものすごいカラフルなコメント欄。そこまでしなくていいだろと震えながらもコメントを読むと、どれもが賞賛のものばかりで否定的なこのはびっくりするくらいなかった。

 ダンジョン災害、特にモンスターが大量に地上に出てくる怪物侵略はトップクラスの危険度だ。

 それを、建物の破損などはあれど被害者ゼロで抑えたのだから、批判しようものなら罰が当たると美雪が笑っていってくれた。


 あの日の出来事は、新宿ダンジョンにはいないワイバーンだったりファーヴニルだったりと不自然であること、姫乃の配信に映るナニカが確実に関わっているだろうことから、何かしらのテロ組織ではないかという声が上がっている。

 それに伴い、十二年前の奥多摩の悲劇もそうなのではないかと注目を浴び、現在警察がギルドと連携して調査をしているそうだ。


「……よ、よし」


 配信開始時刻が迫ってくることでどんどん待機数が増えていき、ついには七十万人という姫乃にとって前代未聞すぎる人数が集まって思考停止していたが、時間になったので震える指でパソコンのマウスを操作して配信開始する。


”¥50000:きちゃあああああああああああああああああああああああああ!!”

”¥50000:待ってたぜ……この瞬間(とき)をよぉ!”

”¥78800:マジで助けられたありがとう! 車壊されちゃったけど、生きてさえいればあんなもん何度も買えるし問題ねえ!”

”¥50000:配信開始前からすげえ量のスパチャ投げられてて草。ファーヴニルの核石でやばい額入ってビビるって言ってたし、始まるまでに入った収益でビビり散らかして葬”

”¥50000:あの日、娘とともに助けていただいた者です! あの日以降家族全員で姫様のことを推し始めました! あの時助けていただいたお礼です”

”¥78800:ファーヴニル戦のあのやべえ戦い、海外でリアルアニメーションとか言われてるの草なんだワ。気持ちはわからんでもないが”

”¥50000:ガトリングにバルカンに多連装ミサイルランチャーという連射系のお馴染みから、八連回転式砲身大砲とかいうクソ頭の悪い武器混じっててマジ笑ったわ”

”¥78800:ちょうどいい画角のものを見つけて、姫様の着ていた鎧を金色にして英雄王姫とか言って投稿されたの、めちゃくそいいねついてた”

”¥50000:おいおいおい、開始してから速攻で限度額スパチャが飛びまくってるじゃないか。七十万人が一斉にやってるから、一瞬でやばいことになってるな”

”¥50000:珍しく開始後の待機画面じゃなくて速姫様のご尊顔スタートだから、コメント欄が血の川すぎてフリーズしてて吹いた”


 待機時点でたくさん投げられてたし、開始したところで大して来ないだろうと高をくくっていたが、始まったらそれ以上の勢いで赤スパラッシュを食らい完璧にフリーズ。


「はへぁ……?」


 意味の分からない声も出てくる。


「……ぇ、えええええええええええええええええ!? ちょ、な、なに、こ、れ……!? なんでみんな急に本気出したみたいに赤スパばかり!? ヤメテ!? マジで一回やめ……ひいいいいいいいいいいいいいいいい!? 怖いよおおおおおおおおおおおおおおお!?」


 ファーヴニルの五億で冷や汗やら脂汗やらよくわからないものだらっだらだったが、あれは頑なに一部を受け取り拒否することで全額受け取りは回避できた。

 だがこの配信は、受取拒否はアワーチューブ上で設定しない限りはできないし、配信が始まってしまったらその設定もできないので、この赤スパの超絶ラッシュは姫乃に拒否権なく最終的に口座に着弾する。


「ど、どうして……その……ボクにそんな優しいの? みんなも見てたと思うけど、ボクのスキルって……」


 『龍滅炉心』。心臓が動くたび膨大な魔力を生成する、事実上戦闘超特化型のスキル。だがこのスキルの性質は、龍種のものと酷似している。

 龍の心臓は姫乃と同じで、動くだけで魔力を生み出す。吐き出すブレスも、その無限に生み出される魔力を変換して放たれる。

 自分のスキルを説明したわけではないが、姫乃の体から常に膨大な魔力が溢れていたのをリスナーは見ている。明言こそしていなくとも、答えにたどり着いているのも少なくない。


 モンスターのものと似ているスキル。怖がられても仕方がないものだというのに、誰も距離を取ろうとしなかった。通っている学校のクラスメイトも含め、この配信に来てくれているリスナーも。


「ボクのスキルは、龍と同じで心臓が動くだけで魔力を生み出す。モンスターと同じような心臓を持っているのに、なんで……」


”¥50000:何でって言われても、それ持ってるの姫様でしょ? じゃあ何の問題もないじゃん”


「……ぇ?」


”¥50000:そうそう。もしそれをあのごみカスが持ってたらアウトだけど、善の塊みたいな姫様が持っているなら安心できる”

”¥50000:めちゃくちゃ怖がってたし、見てた俺らでも何かトラウマ抱えてるの分かったけど、それでもああやって立ち向かったの見たら安心するよ”

”¥78800:姫様が持つからこそ、安心できる”

”¥50000:そりゃ龍の心臓と同じスキルってわかった時はビビったけど、姫様それを使って人類滅ぼすとかそんな物騒なことしないし。持ってる魔導兵装の火力は物騒だけど、全部モンスターに向いてるし”

”¥30000:過去配信で、自分はノーベルみたいにはなりたくないって言ってたし、宣言通り魔導兵装をどこにも売らず個人使用に留めているし、信用も信頼もできる”

”¥50000:ギルドからも、姫様がファーヴニルの核石を売却して得たお金を復興支援に回してくれたって言ってたし、聖人君子すぎる”

”¥50000:マジで姫様だから、スキルのことを知っても変わらずに推し続けられるんだよ”


 真っ赤なコメントと共に流れてくる、あまりにも優しく温かいコメントたち。

 姫乃はなおも自分のスキルのことはあまり好きじゃない。使ったら魔力を得られるが負担が大きすぎるし、自分が嫌う龍と同じ性能を持つ心臓だしで、できれば使いたくなんかない。

 正直素直に話したら、気味悪がられて離れていくかと思った。だが帰ってきた反応は百八十度違い、とても優しいものだった。

 化け物のような心臓を持っているが、それを持つのが姫乃だから誰も化け物と罵らない。その温かさに触れて、涙がジワリと浮かんでくる。


「ボク……まだ活動続けてもいいの……?」


”¥50000:おふこーすなりぃ”

”¥50000:むしろやってくれなきゃ困る。生きがいなんじゃ”

”¥50000:めのっさんの配信はいつも笑顔をお届けしてくれるし、なくなったら割と困るんよ”

”¥20000:そうそう。ぷにのさんの配信、空気マジで美味いからなくなるとマジで困る”

”¥50000:姫乃さんと出会えたおかげで、私も毎日楽しく過ごせているからやってください”


 次々と姫乃の言葉を肯定するスパチャコメントが来る。それがたまらなく嬉しくて、ぽろぽろと目じりに溜まる涙が頬を伝って落ちていく。


「ありがとう……! ボクのこと、肯定してくれて……好きって言ってくれて……ありがとう! ボクも、みんなのこと、大好きっ」


 涙を流しながらくしゃりと笑顔を浮かべる。

 あぁ、なんて優しく温かいのだろうか。怯えていた自分が、とても馬鹿らしく思えてきた。

 自分の能力はまだ好きになることはできないかもしれないが、これを機に好きになっていこう。どんなものであっても、それは姫乃が人を助けたものだとみんなが言ってくれたこの力を、少しずつでもいいから好きになろう。

 涙をぽろぽろと流しながら、そう決めたのだった。


”¥50000:さーて、それじゃあ本格的な赤スパ大祭の開幕だな”

”¥50000:姫様みたいな超絶清楚な女の子の涙は破壊力がありすぎます”

”¥78800:あんなことやったから国民栄誉賞の受賞が噂されてるけど、まずは俺たちが金という名の栄誉賞を姫様に受賞させるか”

”¥10000:ていうかさっきから勢いやばすぎるwww 俺の渾身の赤スパが埋もれてまうwww”

”¥5000:くそ……! 苦学生であることがこんなにももどかしいなんて……!”

”¥50000:これもう世界一位のスパチャ額になってるだろwww 来月辺りに探索者系アワーチューバーの月間スパチャランキング更新されるし、姫様が堂々の一位になるのを楽しみにしてようぜwww”

”¥2000:今姫様の海外人気やっばいらしいし、今後もっと人も金も集まるだろうね”


「……うん、できるだけ途中から触れないようにしてたけどね? もう無視することできないから言うね? みんなもっとお金大事にしてね!?」


 あらゆるコメントがスパチャだけ、しかも同接がとうとう百万を超えたこともあり収益の増え方が指数関数的に増加していく。

 最初はただ慌てるだけや怖くなるだけだったのが、何をどう言っても投げ銭をされ続けるためだんだん顔色が青くなっていき、冷や汗やら脂汗やらよくわからない汗がだらっだら流れる。


 どれだけスパチャを辞めるように言ってもむしろ加速していくだけ。どうしてこうなると目をぐるぐると回し、温かく優しく認めてくれたことに感動して流した涙とは違う理由で泣きそうになる。

 もともと一時間を予定していたため、メンタル的な負担も凄まじいことになり予定通りに配信を終了。

 ぐったりと机の上に突っ伏し、猛烈な疲労感に襲われる。


「……一体どれだけの額になったのか、見るのが怖すぎる……」


 開始前からガンガン投げられていたのが、開始後に急加速。もう見るのが怖くマウスを持つ手が震えるが、見ないわけにもいかないのでチェックする。


『このライブ配信の収益:9億』


「…………………………きゅう」


 ファーヴニルの核石換金以上の金額がたった一時間の配信に集まってしまい、色んなものが限界値を超えオーバーフローを起こした結果、姫乃はそのままもう一度机に突っ伏し気絶した。

 のちに、この配信のスパチャを最初からずっと数えていた有志のリスナーがこのことをツウィーターに投稿。

 それが大バズりして、時給九億の姫騎士様という言葉がトレンド入りを果たしていた。姫乃はまた気絶した。

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