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ダンジョン攻略JK配信者、配信の切り忘れに気づかず特級モンスターを一方的にボコった結果伝説となる  作者: Lunatic/夜桜カスミ
第一章 規格外JKの無双配信

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懲りないやつは拳でわからせろ

「今後はパーティーとかを組むのかって? ううん、組む予定はないよ。組む必要が今のところあまりないというか。あと女の子同士だったらいいけど、ボク正直ちょっと男の人苦手でさ。探索者って全体的に男性の方が多いし、募集とかしたらどうしても男性が来やすいんだよねぇ」


 モンスターの数が多すぎるので、間引く目的で徹底的にサーチ&デストロイで殲滅して回っている途中、リスナーからパーティーを組むことはないのかという質問が来た。

 それに対する回答は、今のところはないというものだった。誰かが近くにいるよりもソロでいたほうが被害を気にせずにぶっぱしまくれる方が楽だというのも大きいが、過去の出来事から同性はともかく男性探索者はあまり信用していない。


 まだ十四歳で駆け出し探索者だったころに、声をかけてくれた男性探索者パーティーがいてその時は善意でルーキーに声をかけたのだと思っていたが、中層まで一気に進んだあたりで態度が豹変。

 今よりも小柄で見た目が大人しい女の子だったため、大きな声で怒鳴りつければいうことを何でも大人しく聞くと思われていた。

 実際は急に大声で意味も分からず怒鳴られたためにフリーズしていただけだったが、それを怯えていると勘違いしたケダモノどもが腕を伸ばしてきて、それがどこに向かっているのかを察したあたりで魔力強化を全開にして全員の急所を蹴り上げて、大急ぎでその場から退散して報告した。


 のちにそのパーティーは、女性探索者ばかりに声をかけては中層の安全地帯辺りで襲い、それを材料に脅しをかけては定期的に関係を持たせ続けるという悪質な行為を繰り返していたことが発覚。

 この一件を機に、姫乃は全ての男性探索者のことを信用しないようにしている。極端かもしれないが、ここまでしておかないと本当に何されるかわかったものじゃない。


”ガタッ”

”男の人が、苦手……!?”

”これはこれは……クォレハクォレハ……”

”ほほう……、これは香りますねぇ……。良質な百合の香りが……”

”そのビジュアルでその清楚ボイスで、男性が苦手はいい感じの破壊力がある”

”おーちゃんとコラボした時も、好きって言われてまんざらでもなかったし、マジであるぞこれ”


「何を妄想しとるんじゃ」


 姫乃を映している浮遊カメラを、軽く握った左手でこつんと叩く。

 そういえば前に、美雪からあまり男性が苦手だと言わない方がいいと言われていたなと思い出す。

 男が苦手だと言っておけば、変に告白してくるガチ恋というものを排除できるしいいじゃないかと思っていたが、女性配信者を見ているリスナーの中には自分だけなら例外的に惚れてくれるかもしれないと思う輩もいるとのこと。

 それに、男が苦手ということで逆に変な妄想を始める人もいるとも教えられており、意味をその時は理解していなかったがこういうことかと嘆息する。


「男の人ってボクより体大きいし、魔力励起状態になって強化かけなければボクよりも力強いし、怖いじゃんか」


 とりあえず漠然と苦手なのではなく、ちょっと怖いから苦手なのだと言い訳をしておく。余計に変な妄想を書き込まれた。

 何を言ってもダメそうなので、この話題についてはもうこれ以上触れないでいることにする。


「さてさて、一通りここまでサーチ&デストロイして数を減らしてきたわけど、元の数がバカほど多いからあまり減ったって感じないなー」


 姫乃の進軍速度と殲滅速度はかなりのもの。ほとんど足を止めることなくガンガン殲滅して進むので、配信を見ている感じかなりの数減らして間引いていると感じるだろう。

 だが実際には、姫乃一人で今の状態でやれることには限りがあるし、ソロだとどうしても手が回らないことの方が多い。

 結局、こういうことは強い力を持つ個よりもある程度の力を持つ数の暴力でやる方がいいのだなと感じ、個人で軍隊でも作ってやろうかと割と本気で思い始めた。


「核石も素材も結構そろったし、マルグラウスのお肉も沢山ゲットできたし、そろそろここのボスに挑もうかな。ここって確か、餓者髑髏(がしゃどくろ)がボスだっけ」


 日本の妖怪の一つである餓者髑髏。巨大な骸骨の妖怪で、筋肉とかないくせに何気にパワーがあるアンデッド系のモンスターだ。

 今の姫乃からすれば粉砕しやすいモンスターなので、骨があるだけで大して骨はない。

 だがあの巨体なので、七式真装の斧の一撃をぶち込んだらどうなるのかが気になる。なので軽い足取りでボス部屋に向かいその中に入ったが、餓者髑髏は既に何者かに倒された後なのか出てくることはなかった。


「何で今日に限って……!」


 ちくしょうめぇ……! と悔しそうに地面に崩れ落ちた。


「まあいいや、このまま中層の方のモンスターを間引いていくか。最近ちょっと解説もさぼり気味だし、それもきちっとやっていくかな」


”モンスターを間引く発言に驚いたけど、元々の探索者の役割って素材とか核石を持ち出してくることじゃなくて、モンスターがダンジョン内に溢れすぎて地上に出てこないようにするために間引くことだもんな”

”ダンジョン出現初期の頃、探索者の数が少なくてしょっちゅうモンスターが地上に進出してきちゃってたらしいし、中層だけでも間引きするのはマジで大事”

”今んとこ一番探索者人口が多い階層って上層中層の二つだし、将来有望なルーキーが無駄死にしないためにも大事”

”そしてそのルーキーたちが姫様やおーちゃんの解説配信を見に来て、再生数を増やして中にはスーパーコメントでお金を残していってくれるという好循環”

”有益な情報にはきちんとその分の対価を払う。探索者も立派な職業だし、社会人として当然だね”

”¥50000:てなわけですので、いつも面白過ぎる配信を見せてくれるお礼です”


「ひぇ!? 急に赤スパ───ちょっとこれ上限額じゃん!? もー! いつもお金は大事にって……待って!? 待って待って待って!? なんで急にみんな投げ始めるのぉ!? ひぃいいいいいいい!? 怖いよぉ!?」


 別に何か投げ時を作ったわけじゃないのに、一人が唐突に上限額を投げた瞬間から、待ってましたと言わんばかりに続々と赤色のコメントをメインに色とりどりのコメントが流れていく。

 一万円という金額の重さをよく理解している姫乃は、ガンガンぶん投げられてくるお金の大きさに顔を青くして、やめるように言って促すがむしろ加速する。

 可愛い代やらとんでも兵器を見せてくれた代、中には食費と言って投げてくる人もいる。


「収入はマジでメンシプと広告収入だけでもすごいことになってるから! 食費とかはマジで十分すぎるくらいあるし、そんなにいらな……うぉえ!? なにこれ七万越え!?」


”¥15000:清楚系な見た目の女の子からでてきてはいけない声出てて草”

”¥78800:あー、これ確かスマホから投げる場合の上限だったはず。スマホからだと手数料持ってかれるからきっちり五万ぶち込むためにはこれくらい必要。てなわけで、ほい”

”¥50000:パソコンからだときっちりこの金額なんよね。そして相変わらずいい声で鳴くなぁ、姫様は”

”¥20000:赤スパ祭りの会場はここですか?”


 大金投げつけられて慌てふためいているのを見るのが好きだと収益化記念配信の時に、多くのリスナーが言っていたのを思い出す。

 姫乃も他の配信者の配信で、スパチャラッシュされた時に慌ててビビっているのを見て面白いと笑っていたが、実際に自分で食らうと笑えない。

 本当にこんなにもらっていいのか、もらい過ぎて何かに引っかかったりすることはないだろうかと考えすぎてしまう。

 結局赤スパ祭りは十分ほど続き、またしても一千万以上も投げられてしまった。


「うぅ……こっちから収益がどんなもんか見える分、これが来月末にばこんって突っ込まれると思うと、お腹が痛くなってきた……」


 こんな大金があっても使い道がほぼないので、貯金するしかない。ブランド物のバッグだのには全く興味がないし、せいぜい買うとしてもI&Mという会社が出している超おしゃれでかわいい洋服や化粧品くらいだろう。

 女性用下着も販売しているのでそれも新調したいが、胸のサイズは最近は全く変化していないので、今のところ必要ないかもしれない。


「ギギェ!」

「邪魔」

「ギャッ」


 中層にいればもはやおなじみにヴェルクロウに不意打ち気味に襲われるが、斧形態の真装の側面でぶっ叩いてそのまま壁に叩きつけて亡きものにする。

 別に今から下層に行ってもいいのだが、新宿のダンジョンの下層にはサキュバスやインキュバスといった、人間の性欲に直接干渉してくるタイプのモンスターがいるのであまり乗り気にならない。

 特にインキュバスは相手が女性であれば誰でもいいタイプのモンスターで、見かけた瞬間めちゃくちゃ強力な魅了をかけて自分の姿を相手の理想のものに見えるように暗示して、そのまま巣に連れていき他の大量のインキュバスと……と中々にひどい目に遭う。

 サキュバスは男性に同じことを仕掛け、根こそぎ精を搾り取って腹上死させて来るらしい。なんていやらしいのだろうか。


 今回の配信はあくまで七式真装単体での武器性能のチェックの続きだし、別に下層まで行く必要はない。

 先ほども言った通り、上層中層には探索者が多くいるし被害者を少しでも減らすためにも、引き続きサーチ&デストロイを続行することにした。




「ふぃー。今日はもう帰らないとね。と、いうわけで今日ボクが潜っていたのは新宿ダンジョンでした。餓者髑髏の名前出しちゃったときは内心ちょっと焦ってたけど、案外ばれないものだね。割とあちこちのダンジョンにいるからかな」


 ダンジョンの各階層間を守護するボスは、完全に決まったダンジョンだけにしかいないわけではない。

 同じボスが別のダンジョンにいることは当然あり、餓者髑髏はゴリアテに次いで割かしポピュラーなボスだ。ちなみに三大中層ポピュラーボスは餓者髑髏、ゴリアテ、最後の一体にライカンスロープという人狼型のモンスターだ。


 きっちりと手荷物検査を特別扱いされずに受け、スコルパインの毒針を持ち出していないことを証明。

 ぶちまけていた核石と素材を、いちいちポーチにしまう時にカメラの画角をいじるのが面倒だからと新しく作った、回収用の魔導兵装を使って丸ごと転移させるように収納用魔導兵装ポーチに放り込む。


「餓者髑髏の名前を出した時点で予想してたけどよぉ……やっぱ新宿だったか」


 今日はどの核石を換金しようか、帰りはまた近所の銭湯にでも寄ってお風呂上りにコーヒー牛乳でも飲もうかと考えながら、いつもの終わりのあいさつを行っていると、何者かに声を掛けられる。

 その声には聞き覚えがあったので声がしたほうに顔を向けると、抜き身の大剣を持つ軽装の青年が、言わずもがな黒葛原晴章が憎しみの目で姫乃のことを睨んで立っていた。


「え゛、あんたもう出所してるの? いくらなんでも早すぎない? ……あ、お金持ちのパパにお金出してもらったんだ」

「うるせぇッッッ! お前のせいで俺は! 一級まで上り詰めた探索者ライセンスを剥奪された上に再取得できなくなったんだぞ! どう責任取ってくれるんだ!!!!」


 ズガンッ! と大剣を地面に叩きつけるように突き立て、唾を飛ばしながら大きな声で怒鳴りつける。

 どうしてこういう頭の悪い人というのは、相手を脅す際に大声を出すのだろうか不思議でならない。特にいい年した二十代くらいの男性が女性に対してすることが多い気がする。


「どうって、まずあんたが先にボクに攻撃仕掛けてきたんじゃん。違反行為をしたのはそっち。第一、あんたはそれ以外にも色んな違反行為をやりまくってたし、のちの調査で撒き餌使ったことが証明されてたじゃん。決められた時以外で使うなって決められてるのに、なんでそんな簡単なことも分からないの? 十四歳のぴかぴかのルーキーですら、当たり前にルール守ってるけど。なんでもお金持ちなパパに解決してもらうと、常識も何もなくなっちゃうわけ?」

「お前ぶち犯すぞ!?」

「現役JKに何言ってんのこいつ」


 公衆の面前で姫乃に向かってそんな言葉を使うなんて、なんて常識がないのだろうと嫌悪感を隠さず顔に出し、右腕でさっと胸を隠すように体を抱き、左腕で軽くスカートのすそを引っ張って下半身を守るポーズをとる。


「というかしつこいんだけど。何が目的なのさ。きちんと答えないとぶちのめした後普通に警察に突き出すけど」


 答えたとしても普通にぶちのめして突き出すつもりだが。


「お前のせいで俺の人生めちゃくちゃなんだよ! 三十万もある同接の前で、俺が間違っていなくてお前があれを全部仕込んだって訂正しろ!」

「は? バカなの? 全部ギルドと警察が連携して、お前が悪いってこと証明して終わったじゃん。お前が持ってたバッグの中に結構でかめな撒き餌もあったって聞いてるし、十中八九お前が悪いんじゃん。ボクにはあんなマッチポンプするメリット一ピコメートルもないし」

「うるさいうるさいうるさいッッッ! いいからさっさとこの俺に謝れ!」

「え、ヤダ。守衛さーん。警察呼んでくださーい」


 日本語は通じるのに話が全く通じないと、本当に疲れて仕方がない。

 こんなやつを相手してやれるほど暇じゃないので、ダンジョンの入り口に駐在している警備員の方を向いて警察を呼ぶように頼む。

 すると晴章の方から膨大な魔力の反応を感知して、パッと振り返る。

 大量の魔力を魔術回路に流し込んで励起状態に移行し、肉体を大幅に強化させている。更には、流れ方から見るに彼の持つスキルの方にも魔力を流しているみたいだ。


「ぶっ殺してやる……。どうせお前は、俺がスキルを使っちまえば勝てやしないんだよ……。お前は所詮、魔導兵装頼りの非力なメスガキだ……。この俺のスキル『征服の覇道(イスカンダル)』は、相手が格上だろうと関係なく俺自身をそいつよりも強くして確実に勝てるようになる、一対一特化型最強スキル。お前がどれだけ魔導兵装で自分を強化しようが、スキルまで発動させたこの俺には逆立ちしても勝つことなんざできねぇんだよ!」


 ぶつぶつと長ったらしく丁寧に自分のスキルの詳細を話してくれたので、姫乃はこの人やっぱりバカだと呆れてしまう。

 七式真装を右腕だけに装着してガントレット形態にしてから、姫乃本人の魔術回路に流していた魔力の一切を遮断。この瞬間姫乃は、見た目通りの非力な女の子になる。


「『小放出(プチバースト)───腕撃(アガートラム)』」


 真装に補充されている魔力の、僅か4%ほどを使用。それだけでも結構な量の魔力が右腕のガントレットに集中するが、相手は自分自身を強化したうえでスキルも使っているし、死にはしないだろう。


「無駄なんだよ! お前がいくら強い魔導兵装を持ち出しても! この俺のスキルは確実にお前が出す強さよりも上を行く! 決して勝てない実力差に絶望して、この俺の前で平伏せメスガキが!」


 地面を蹴って凄まじい速度で走ってくる。大剣はしっかり刃が向いており、あのまま振り下ろされれば姫乃もひとたまりもない。

 だが問題はない。なにせ、自分で自分のスキルの内容をべらべらと話しておきながら、肝心な部分に気付いていないのだから。


「死ね! 姫様気取りのクソメスガキがあああああああああああああああああああああああ!!」


 大剣の間合いに入ったところで姫乃も一歩前に踏み込む。それに合わせて大剣が振り下ろされるが、軽く避けてからみぞおちに黄金の右ストレートを叩き込む。

 たったの4%とはいえど、腕撃だ。拳は深々とみぞおちに突き刺さり、急所に強烈な一撃入れられた晴章は目を大きくかっぴらき大量の脂汗を一気にぶわっと浮かばせる。


「お……ご……!?」


 姫乃が後ろに下がると晴章は大剣を取り落し、両腕で自分の腹を抱えてから膝をついてうずくまる。


「な、ん……で……」

「自分のスキルの特性にも気付けないんだ。自分で言ったじゃん、相手が格上だろうと強くなれる格上殺しのスキルって。そう言う手の能力ってね、相手が外部から強化を受けている場合とかそもそも強い力が本人以外から来ている場合は発動しないことが多いの。わかりやすく言うね? そのスキルは敵対している相手本体の能力に依存するから、武器の性能そのものには反応しない。あんたとボクの相性、死ぬほど最悪だよ」


 七式真装(エヒトグライフェン)七式魔剣(イリス)、レイザルドを倒す時に使った六連砲星(プレアデス)は、姫乃本体からは独立した武装だ。

 兵装そのものが魔力を補充し、兵装そのものがそれを使う。魔力をどれだけ使うかは姫乃が決めるが、実行するのは武器だ。

 だから晴章がどれだけスキルを発動させようが、姫乃はあの時点で既に魔力を完全に遮断していた。そして腕撃は兵装の魔力を消費して使う機能であるため、スキルは全く反応しない。

 これで晴章は、素のスペックとそう変わらない強さしか引き出せない。もっとちゃんと自分のスキルの理解を深めていれば、まったく力を引き出せていないことにも気付けただろうにと、呆れかえりすぎてもはやため息も出てこない。


「ぢ……ぢくじょ゛う゛……」


 魔力励起による肉体強化を貫通して特大ダメージを入れられた晴章は、腐っても一級探索者であるからか意識こそ失わずとも、身動きが一切取れなくなっていた。

 遠くからパトカーのサイレンも聞こえてきているし、あとはこいつが逃げないようにするべきだなと、何か拘束できるものはあったかと収納魔導兵装を探っていると、背後からぬるりとした異質な魔力を感じた。

 咄嗟に距離を取りつつ体ごと振り返り、刻印から回路に魔力を流し励起状態に移行し、真装を刀の形に変形させて構える。


「おやおやおやぁ~? あのメスガキは俺が仕留める! とか啖呵切っておきながら、随分と無様を晒しておいでですねぇ。やはり、自分と相手の実力差を把握できない、一流を騙るド三流でしたねぇ」


 そこには、頭から足先まで真っ黒な布をかぶって隠し、何者なのかすら一切わからないナニカが立っていた。

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