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ダンジョン攻略JK配信者、配信の切り忘れに気づかず特級モンスターを一方的にボコった結果伝説となる  作者: Lunatic/夜桜カスミ
第一章 規格外JKの無双配信

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3/7

ワンサイドゲーム

 ギリギリのところで救援要請者を助けることができて、ほっと安堵する姫乃。だが状況は割と酷い。

 まず救出した女性は片足を酷くけがしてろくに動けない。これはまあいい。動けないなら抱えて地上に連れていけばいいだけの話だ。

 問題なのは、今目の前にいるモンスターだ。


 下層最深部である第五階層にしか生息していなはずの、特級モンスター爛れた大狼竜。体からは腐敗の瘴気を垂れ流しており、長いことそれに触れたり吸い込んだりしてしまうと、自分自身が腐敗してしまう。

 さらには爪にも腐敗の力があり、かすり傷を負うことすらもアウト。長期戦に持ち込むのもダメだし、短期決着を焦ってしまうと反撃を受けてしまう非常に厄介なやつだ。


「これはボクが倒すしかなさそうだなぁ」


 正直な話、姫乃はこのモンスターが苦手だ。

 半端に鱗が固いから普通の攻撃は通りにくいし、あの巨体でやたらとすばしっこいので攻撃も少し当てにくい。

 だがここで引くわけにもいかないのでやるしかないと腹をくくり、少し大人しくなっていた雷を再度強く活性化させる。


「ま、待って!? ここは逃げたほうが───」


 後ろにいる女性が姫乃を引き留めようとするが、それを振り切って一歩目から雷光となって駆け出し音を置き去りにする。

 しっかりと速度をたっぷりと乗せた一撃を首に叩き込むが、鱗を切り裂くことはできたが浅く傷をつけるだけにとどまる。

 ちっ、と小さく舌打ちをして移動先の壁に足をつけ、足をばねにして強く蹴り出し同じところに攻撃を入れようとする。

 だが爛れた大狼竜は後ろに移動した姫乃を追おうと振り返ったため狙いがずれ、喉元に剣が入ってしまう。


「ガアァ!」


 狙いがずれたのでそのまま通過していかず、弾かれたのを利用して若干距離を取りつつ地面に降りると、降りたタイミングを狙ってとびかかってきた。

 なんていやらしい攻撃だと思いつつも、地面に足が着いた瞬間左に跳ぶように地面を蹴って、雷光とともに回避する。

 遅れて大狼竜の鋭い爪が、一瞬前まで姫乃がいた地面に叩きつけられる。すでにそこに目標はおらず、一度鼻を小さく鳴らすとすぐに姫乃のほうを向く。

 匂いで位置はすぐに看破される。ならば、匂いで位置が分かったところで対処できない速度と密度で攻撃を叩き込むと、より一層剣から雷を放出する。


 バヂッ! という音を後ろに残して踏み込み、速度を乗せた一撃をすれ違いざまに一発。そのまま通過して壁に足をつけ、即座に反射するように壁を蹴って別の場所に二発目。

 それを超高速で連続で繰り返し、ピンボールのように跳ねまわりながらすさまじい速度で連撃を叩き込み続け、削っていく。


「は、速っ……!?」


 雷光とともに跳ね回る姫乃の姿は、女性の姿には映っていないだろう。代わりに、雷の軌跡だけが、まるで檻のように爛れた大狼竜の周りにできているように見えているだろう。

 小さな傷もどんどん大きくなっていき、このまま削り切って最後に胸に剣を突き立てて内部から直接電撃を食らわせてやろうと計画するが、直後に剣からバチンッ! という音が鳴る。

 そのすぐ後に発生していた雷が消失し、姫乃の速度が急激に低下。追いつけていなかった大狼竜は突如速度を急低下させた姫乃を捕捉し、散々切り付けてくれたお礼だと言わんばかりに噛みつこうとしてくる。


「『大雷(ブロンテ)脚撃(ヴォーダン)』!」


 咄嗟に履いているブーツの機能を発動させて、脚力を雷で超強化。空中で体を捻り体勢を整えてから、飛び蹴りを繰り出すとドッパアアアアン! という強烈な衝撃音が響き、大狼竜が蹴り飛ばされて壁に叩きつけられる。


「え……えぇええええええええええええええええ!?」


 後ろの女性が、困惑と驚きの声を上げる。

 大狼竜は姫乃たちよりも圧倒的にその体躯が大きい。身長160センチ程度の姫乃なんか、ぺろりと丸呑みされてしまうくらいには大きい。

 それほどまでの体格差があるにもかかわらず、蹴り一発で蹴り飛ばしたのだ。驚くのも無理はないかもしれない。


「もう魔力が切れたわけ? やっぱ速度を優先して(・・・・・・・)効率度外視にした(・・・・・・・・)試作機能・・・・は、魔力切れが早いなぁ」


 先ほどまでの輝きを発していた剣に取りつけてあるシリンダー部分の黄色の宝石は、その輝きを失っていた。

 この機能自体は最近取り付けたばかりで、速度に極振りした状態だ。効率等も度外視であるため、消費に対して供給が追い付かずとにかくめちゃくちゃに魔力を食う。

 仕方がないともう一つのギミックを作動させて、柄のところに出てきた引き金を引く。そうすることで大気中の魔力(・・・・・・)を剣のシリンダー部分が吸収していき、空っぽになった魔力を回復させる。


「グ、ウゥ……」

「今の蹴りで終わってくれたほうが楽なんだけど、そう上手くはいかないよね。特級モンスターだし。次で決めるよ……大紅蓮(クリュオス)


 もう一度ギミックを起動させ、撃鉄を落とし、そして起こす。

 今度は剣から氷属性を発生させる。金色のメッシュと瞳は水色に変色し、剣から冷気があふれ出る。

 爛れた大狼竜が起き上がり、漲る敵意をぶつけながら走って接近してくる。姫乃はそれをその場から動かず、右手の剣を左脇に構える。


「『大紅蓮(クリュオス)氷波(スリュム)』」


 構えた剣を斜めに振るう。その軌跡に沿って特大規模の氷が発生し、とびかかってきていた大狼竜をそのまま飲み込み氷漬けにする。

 その場の温度が急激に低下していき、口からは白い息が漏れ、空気中の水分が凍り付いていき小さな氷の塊がパラパラと落ちる。


 一瞬にして氷漬けにされた大狼竜は、氷が砕けると一緒に粉々に砕ける。

 特級という最上位の階級でもモンスターによって強さに差があるとはいえ、それでも特級。それを氷漬けにした挙句何の抵抗もできずにそのまま砕いて倒してしまうその光景は、まさに異質そのものだった。


 目標の敵を倒したので、作動していたギミックを解除して元の姿に、メッシュのない黒髪にブラウンの瞳に戻る。

 周囲に他のモンスターがいないことを索敵で確認してから、女性のほうに振り替える。

 改めてみると、大小さまざまな小さな傷が体にある。その中でも特に、左足が酷い。かなり深くえぐられており、この怪我では逃げることなどほぼできない。

 改めて、間に合ってよかったとほっと安堵の息を吐く。


「大丈夫ですか? ほかにどこか酷い怪我とかはないですか?」

「……へ? あ、え、えぇ、大丈夫。左足だけ結構酷いけど、他は大したことないから」

「そうでしたか。よかった……とは言えないですよね。……はい、これどうぞ」


 姫乃は手持ちの回復薬を一つ渡す。

 創作物のように一瞬で全快するという便利な代物ではないが、自己回復能力が高い探索者の回復力をより高めてくれる。

 女性の足の怪我であれば、回復薬なしで一週間、飲めば三日ほどで傷跡を残さずに回復できるだろう。


 回復薬を受け取った女性は薄緑色の薬液を呷る。

 この回復薬は結構苦いので、その苦さに顔を少しだけしかめる。


「では地上まで送りますね」


 足の応急手当てを済ませた後姫乃は女性を横抱きにして、人一人抱えているとは思えない速度でダンジョンを駆け上がっていく。

 どうなっているんだと女性は困惑した様子だったが、駆け上がっている道中もモンスターに襲撃されるもブーツで強化した脚力から放たれる蹴り一発で壁のシミに変えていくと、途中から乾いた笑い声が聞こえてきた。


 一時間足らずで地上に出ると、すぐに女性を守衛の人に預け救急車を呼んだ。

 危険な下層から地上まで送ってくれたことに対してのお礼の言葉だけを受け取り、救急車が来たため変に注目を浴びないためにと姫乃はさっさとその場から退散した。


「あ、あの人の名前とか聞いとくの忘れてた」


 なんだか見覚えがある気がするんだよなと帰っている途中に思ったが、気のせいだろうと気にしないことにした。


 だがこの時、姫乃は全く気付かないでいた。


”なんっだ今の!?”

”雷使ってたかと思ったら急に氷に切り替わったんだが何あれ知らん怖い”

”ただの蹴り一発ででかい図体の爛れた大狼竜が壁まで蹴り飛ばされててお茶吹いたし顎外れたわ”

”若手最強格の一人のおーちゃんが勝てない相手に、ソロで一方的にぶちのめすのやばすぎるだろ!?”

”最後の氷の奴やばすぎるだろなんだあれ!?”


 爛れた大狼竜に襲われていた女性が界隈で有名は、人気の攻略解説配信者の『桜華』であり、彼女の使っていたカメラが無事で配信がずっと続いていたこと。

 滅多にないイレギュラーと遭遇、しかも特級という最上位クラスの怪物と鉢合わせたことで数万もの同接を記録していた彼女の配信に一部始終がしっかり乗り、その後の救出劇含めて最終的に数万どころではない同接を記録。

 切り抜き動画がすぐさま作成・投稿されて数百万再生を記録したこと。

 そして最後に、姫乃の配信が上手く終われていなかったためチャンネルが即座に特定。そのチャンネルに上がっているアーカイブや動画の内容が、桜華の配信に移りこんだものと大差ないこともあってネット上でお祭り騒ぎになっていること。


 今日の攻略で手に入れた核石換金による収入が思ったよりもあり少し余裕ができたため、自宅の近所にある銭湯にてゆったりと浸かった後コーヒー牛乳を飲んでいる姫乃はまだ知らなかった。

お読みいただき、ありがとうございます。

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