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「Don't Look Back in Anger」

昨年久し振りに東京ドームでライブを行ったオアシスの超名曲「Don't Look Back in Anger」でイメージした短編小説です。


「Don't Look Back in Anger」

挿絵(By みてみん)


また沙梨から電話で呼び出された。

正確には呼び出されていなくて「報告」なのだが、行かざるを得ない。


「薬、20錠も飲んじゃった」

「ちょっとー、今行くからこれ以上クスリ飲むなよ」


休日だから良かったけど、仕事中だと抜け出せない。

沙梨は、あえて休日にこういう行動を起こすようにも思えている。


僕が沙梨の部屋まで行くと鍵は開けられたまま。

僕がドアを開けると沙梨がベッドにぼーっと座ったまま。


そのまま部屋に入って「どうやってそんなに安定剤を集められんの?」と聞くと、

「市販でも似たようなやつ売ってるの」

「それを大量に飲むのか」

「へへ」と沙梨は笑う。


「こっちに来い」とベッドで座って沙梨を抱きしめる。

「沙梨、いつからそんなに弱くなった?」

「あなたがいなくなってからに決まってんじゃん」

「俺は今ここにいるし」

「でも別れた」

「必要とするればいつでも来てるよ?」

「でも、もうあの頃の繋がりはないし」


沙梨に何を語ればいいのだろう。

左手首の横筋のリストカットがまた一本増えている。


「ロビンソン・クルーソーじゃないんだからw」と僕。

「日付じゃないっつうのw」と沙梨。


僕は手首を優しく撫でる。


「もう怒らないんだね」と沙梨。


「いい子、いい子して欲しいんでしょ?」

「うんうん」

「いい子なんだから。これからもっと幸せになる子なんだから」

「やだー、あなたがいないと。どうして別れたの?」


「途中で道が二つに分かれただけなんだよ」

「なんで道は分かれちゃったの?」

「目的の場所が違ったから」

「私は…道が分からない」

「あのね、『生きたい』と思ったら道は自然と見つかるよ?」

「あなたと一緒にいたいのに」


僕は少し言葉を選んで、「俺は一緒に歩けなくなった」


沙梨は開き直って「クスリ、飲もっと」


「沙梨!」と忠告する。

「今は一人で生きていける力を付けようよ。そして沙梨の目的地が変ったら、また一緒に歩けるかもしれない」


「それでも」と僕は付け加える。

「沙梨に何かあったらすぐに行くから」

「心のウーバーイーツ?」と沙梨が聞く。

「沙梨だけのウバーイーツでいいよ。でもそのうち自炊しなよ」

「心の自炊?」

「本当の自炊だよw」

「見放さないの?」と沙梨。

「見放せる縁じゃない」

沙梨は少しだけ笑った。


「もう寝よう。明日も休みだから一緒に病院行くぞ」と僕が誘う。

「明日、日曜日だよ」

「やってるところあるから。お姫様だっこで連れてってあげる」

「やったー」

「やったーじゃないよw」


「おいで」と僕はベッドで彼女を眠らせる。

「ちゃんとここにいるから」と僕が言うと、沙梨は目を開けて「お腹すいた!ウーバー頼もう!」

「…頼むか」

「これが最後の食べ物でいい」と沙梨。

「だめだよ」

「違うよ。あなたと一緒に。最後に食べる物でもいい。ねえ、ねえ。何食べる?」


「面白い子だね」と僕が言うと、「へへ」と彼女が笑った。


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