表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍化】現代陰陽師は転生リードで無双する  作者: 爪隠し
第8章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

278/280

純恋のモヤモヤ side:純恋



「あっ、聖君!」


 朝のランニング中、家から出てくる聖君を見つけた。

 全速力で駆け寄ると、聖君の方から小さく手を振ってくれる。


「おはよう」


「おはよ! これから走るの?」


「うん」


 聖君ジャージ着てるし、そうだと思った。

 家にいた時はたまにしか訓練出来なかったけど、こっちに来てからはよく会えるようになった。


「一緒に走ろ!」


「お手柔らかにね」


 全力で走る日もあるけど、今日は長距離を走る日だから大丈夫。

 聖君は内気が使えないのに、かなり速い。

 これなら十分訓練になるね!


「さすが純恋ちゃん。やっぱり速いね。はぁっ、ふぅっ、この前よりスピード上がってない?」


「そうかな」


「中学生になって身長も伸びたから、一歩が大きく……。俺も身長伸びてるはずなのにおかしくない?」


 毎日走ってると分かんないや。

 でもそっか、私成長してたんだ。嬉しい。

 聖君と一緒に戦うためにも、もっともっと強くならないと。


「あっ、そうだ! 昨日新しい技習得したんだよ! 後で見せてあげるね!」


 聖君に見せたくて頑張ったんだ。

 お爺ちゃんも習得が早いって褒めてくれたの。

 聖君もきっと驚くよ。

 いつもなら『それは楽しみだ』って頷いてくれるんだけど、今日は違った。


「ごめん、この後お出かけするから、また今度お願いできる?」


 そっか、お出かけするんだ。

 じゃあ、しょうがないよね。

 この後の予定がなくなって、ちょっとしょんぼりしちゃう。


「どこに行くの?」


「遊園地」


 あれ、なんだろう、この感じ。

 しょんぼりじゃなくて、なんか、嫌な感じ。


「いいなぁ遊園地。誰と一緒に行くの? お友達?」


「……安倍さんと」


 ちょっと視線を逸らして、呟くみたいに答える聖君。

 なんか、いつもと違う。

 そこには私の知らない聖君がいた。


「それって、デート?」


「そうだね」


 むぅ……。

 なんだろう、この感じ。

 なんか、刀を振り回したくなるような、妖怪と戦いたくなるような、そんな気分。


「ふぅ……ノルマ終わりっと。じゃあ純恋ちゃん、またね」


「……うん。またね!」


 気づいたら、ランニングの時間が終わっちゃってた。

 いつもはもっと楽しいはずなのに、なんだかモヤモヤする。


「純恋っち、おはよー」


「あっ、愛美ちゃん! おはよう!」


 お友達と話していたら、そのモヤモヤはいつの間にか消えてた。

 残り410周頑張らないと。




 〜〜〜



 

 今日はカフェで勉強の成果を見てもらう日。

 聖君が教えてくれた勉強法はたくさんあって、そのうちの一つが私に合ってたみたい。

 苦手だった漢字テストも満点が取れて、お爺ちゃんもお父さんもお母さんもみんな喜んでくれた。


 中等部1年に進級してからは定期テストが始まって、漢字テストよりずっと難しくなった。

 それでも、クラスで結構高い方の点が取れたみたい。

 この答案用紙を見たら驚いてくれるかな。


「うふふ」


 最近は勉強も楽しくなってきて、聖君にはありがとうって気持ちをいっぱい伝えたい。

 待ちきれなくて、約束の時間よりも早く家を出ちゃった。

 待ち合わせのカフェに駆け足で向かうと、聖君は私より先に来てた。

 窓際の席に座っているのが外から見える。


「あっ、聖君だ! ……あれ?」


 聖君の隣に誰かいる。

 お店のマークで顔が見えないけど、女の子が座っている。

 聖君はその子の方を向いて……笑っていた。


「あれ?」


 お店に入って聖君に挨拶しようと思ったのに、なぜか体が進まない。

 踏み出そうとした一歩が、怖くて動けない。

 心臓が痛い。

 妖怪に攻撃されてる?

 ううん。そんな気配はどこにもない。

 じゃあなんで?


「あっ」


 お店の前で動けなくなっていると、聖君が先に私のことを見つけてくれた。

 笑顔で手を振ってくれるのを見たら、なぜか心臓の痛みが消えてた。

 そんな聖君につられて、隣に座る女の子が顔を覗かせる。


「なぁんだ、百合華か」


 聖君とたまに会ってるって聞いてたけど、カフェで話してたんだ。


「私てっきり……」


 てっきり、なんだろう。

 さっき想像したのは、誰だったんだろう。

 悩んでたら百合華が手招きしてきた。

 行かなきゃ。


「純恋早くない?」


「じっとしてられなくて」


「純恋らしい」


 聖君を挟んで百合華と反対側に座る。

 聖君が百合華に相談してるのは知ってたけど、何を話してたんだろう。

 テーブルの上を見ると、そこには何かの予定をびっしり書いたノートがあった。


「純恋ちゃんごめんね、もう少し待っててくれる?」


「うん」


 隣に座っているから、話し声は全部聞こえちゃう。

 百合華と相談してたのは、婚約者とのデートの予定だった。


「うーん、暑くなりそうだし、やっぱり室内施設にするよ」


「絶対その方がいいって。汗まみれになるとかありえないから」


 この前聖君がデートするって聞いた時と同じ、なんか変な感じがする。

 こう、なんか、なんか、うぅ、刀を振りたい!


「お待たせ。純恋ちゃんの勉強を始めようか」


「終わったの?」


 謎のモヤモヤのことを考えていたら、いつの間にかデートの相談が終わってた。

 私はバッグから答案用紙を取り出して、聖君の前に並べる。


「見て! テスト頑張ったんだ!」


「おぉ、どれも高得点。すごいじゃん」


 うふふ、聖君驚いてる。

 苦手だった算数……じゃなくて数学も、解き方を覚えたら簡単になった。

 聖君の言う通り、苦手意識を持つのはいけないんだね。


「嘘……。純恋、いつの間に頭良くなったの」


「聖君が勉強教えてくれたおかげだよ」


 百合華も驚いてる。

 お互い勉強苦手だったから、家ではずっと話題に上がらなかった。

 その間に私は密かに勉強してたんだよ。


「あぁ、だからお母さんに答案見せる前に、聖に見せに来たんだ」


 そっ、それは恥ずかしいから言わないでよ!

 自分でも子供っぽいって思ってるんだから!

 聖君の顔を覗くと、いつもの優しい笑顔を浮かべていた。


「そうなの? ありがとね」


 なんか、ムズムズする。

 外に走りに行きたくなってきた。

 また変な感じに戸惑っていると、百合華が呟く。


「脳筋な純恋が頭良くなるなら、私も教えてもらおっかなぁ」


 えっ。


「俺は別に構わないよ」


 えっ。

 それはなんか、嫌だ。

 なんでだろう。百合華が一緒にいて嫌なはずないのに。

 なんか、なんか……!


「純恋ちゃんが自分で勉強できるようになったし、勉強会は終わりにしようかと思ってたんだよね。百合華ちゃんにバトンタッチするかたちで──「ダメ!」──びっくりした。突然どうしたの?」


 あっ、お店でうるさくしちゃった。

 ごめんなさい。

 でも、終わるのは、ヤダ!


「私、まだ勉強自信ないから……勉強会続けたい」


「そうなの? これだけ点数取れてるなら問題なさそうだけど……。じゃあ、苦手意識克服するまでは続けようか」


 教えられることはそんなにないけどね、って聖君が苦笑する。

 良かったぁ。

 結局、百合華も勉強会に混ざることになった。

 ちょっとモヤモヤするけど、この時間が続くことにホッとする気持ちの方が大きい。




 〜〜〜




 私、なんか最近おかしいかも。

 なんだか、自分の心が自分のものじゃないみたい。

 変なタイミングで刀を振り回したくなっちゃう。

 これはもしかしたら、病気かも?!

 不治の病にかかっちゃったのかもしれない。

 恐ろしくなった私は、誰かに相談することにした。


「それ絶対恋だよ」


「恋? これが恋なの?」


 家のお医者さんに診てもらって『死にます』と言われたら怖かったから、まずは物知りな千絵お姉ちゃんに訊ねてみた。

 そうしたら、思ってたのと違う答えが返ってきた。


「うん。だって、聖君が他の女の子と仲良くしてるの見ると胸が苦しくなるんでしょ? それは恋だよ」


「刀を振り回したくなるのも?」


「恋敵を斬り伏せたくなる乙女心の表れだよ! 御剣女子はみんな経験してるんだから」


 力強く断定されるとそんな気もしてくる。

 けど今まで、聖君のことを異性として見たことはなかった。

 お友達として、勉強を教えてくれる先生として、目指すべき強者の理想として。

 聖君は私にとって、大切な人ではあるけど……。


「よく、わかんない」


「恋だとしても、その気持ちをどうすればいいのか、付き合ったとしても何をしたいのか、そこらへんがわからないんでしょ」


「すっ、すごい! 千絵お姉ちゃん私の心を読んだの?」


 言葉に表せなかった疑問を、千絵お姉ちゃんはすぐに言い当てちゃった。

 なんで分かったんだろう?


「それは片想い歴が長いから……言わせないで」


 一瞬暗い顔をしたお姉ちゃん。

 何かいけないことを聞いちゃったみたい。

 ごめんなさい。


「気を取り直して、まずは聖君に純恋ちゃんの魅力をアピールしないと」


「アピールしてどうするの?」


「異性として意識してもらう。そして、聖君のハートを射止めるの!」


 お姉ちゃんがグッと拳を握る。


「えぇ、そんなのできないよ。そもそもなんで射止めるの?」


「何はともあれ、両想いにならないと始まらないから。そのモヤモヤはとりあえずお付き合いを始めればきっと消える……はず。お付き合いして何をしたいかは、これから自然と思い浮かぶはずだよ」


 私の中で恋なのかはっきりしないのに、両思いにならないといけないの?

 それって、順番本当に合ってるのかな?

 わ、わからない。

 学校の勉強よりもわからない。


「うぅ〜」


「そんなに悩まないで。さっき純恋ちゃんも言ってたでしょ。聖君が他の女の子といる時モヤモヤするって。まずは聖君の隣を確保するんだよ。戦場に立たないと、敵と相見えることすらできないでしょ」


「確かに!」


 さすが千絵お姉ちゃん。

 そんな考え、私一人じゃ思いつかなかった。

 あれ?


「でも、聖君は婚約してるって言ってた。じゃあ、失恋ってこと?」


「ううん。純恋ちゃんは御剣家の直系なんだから、嫁ぎたいって言われて断る家なんかないよ」


 ……?

 どういうこと?


「それに、聖君のお父さんは御剣家(うち)に勤めているんだよ。会社の上司の娘が結婚したいって言えば、断るわけないよ」


 あれ、千絵お姉ちゃんってこんなに悪い顔する人だったっけ。

 家のこととかはよくわからないけど、聖君に恋?してもいいんだ。


「私も朝日様の娘に生まれたかった。そうすれば今頃……ぐすん」


「千絵お姉ちゃん大丈夫?」


「純恋ちゃんは優しいね。私と違って可愛いし、聖君も第二夫人にもらってくれるよ」


 第二?

 ……なんか、モヤモヤする。

 これが恋なの?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ