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【書籍化】現代陰陽師は転生リードで無双する  作者: 爪隠し
第8章

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7連召喚



 空飛ぶタクシー便で実家近くへ戻ってきた俺は、訓練場を訪れていた。

 大蛇の中に入れなかったサトリも、現地へ到着した直後に瞬間移動してくる。


 ──♪


「どうしたサトリ」


 こんなに大きくなっても甘えん坊なやつめ。

 別れていた時間が寂しかったのか、体を擦り付けてくる。

 この数年で俺よりも体高が高くなり、がっしりとしてきた。

 今なら騎乗することもできるだろう。


 ──♪


 あれ、今日はなんだかいつもの甘える感じとは違うような?

 俺の気持ちを察してケアしてくれてる?

 霊獣とのコミュニケーションを楽しんでいると、親父も訓練場へやって来た。


「む、先に着いていたか。待たせたな」


「お父さん、急に来てもらってごめんね」


「いや、戦力増強は峡部家の必須事項だ。聖の後に私も召喚する」


「わかった」


 そう、この場に来たということは、式神召喚の儀式をするということである。

 九尾之狐討伐の報酬やら、詩織ちゃんの治療やらで、今年もかなりの収入が見込める。

 税金対策のために召喚道具を購入しておいたので、今日はパーッと使う予定だ。


「……聖、学園で何かあったか」


「特にないけど?」


 そうか、とだけ返す親父だが、俺の変化に気づいている様子だった。伊達に十年以上父親をしてない。

 親父が指摘した通り、今の俺は状態異常『ストレス』に苛まれている。

 大人の寛容さと子供っぽい苛立ちは両立する。明里ちゃんを責めるつもりはないが、当初の計画がポシャったのは事実。

 頭では婚約者の可愛い我儘と理解できていても、子供の肉体は正直なようで。

 クリスマスイブのデートでモヤモヤを抱えた俺は、実益を兼ねたストレス発散をすることにした。


「ちょっと格の違いをわからせる戦い方するけど、止めないでね。報酬の霊素を下げる実験でもあるから」


「聖……やはり、何かストレスを感じているのか」


「そんなことないって」


 女の子のわがままに振り回されたからストレス発散するとか、器が小さいと自分でもわかっている。

 絶対親父に言いたくない。


(自分で解決するし……)


 どんなことでストレスを感じたとしても、それをうまく解消するのが大人である。

 自分のご機嫌は自分で取る。

 召喚での調伏は絶好の機会だ。


「聖は7回、私は3回だな」


「ほんと、高くなったよね。陣を描く手が震えるよ」


 残念ながら、召喚用の素材が高騰したため、同じ予算でも10回召喚できなくなった。

 それというのも、陰陽師学園で一気に需要が高まったからだ。

 陰陽師科の高校三年生は卒業時に式神を与えられる。その儀式を行うために必要な素材は、召喚用の素材と重複している。

 儀式用にまとめ買いされる一方で、手作業で作られる素材は早々供給が増えない。

 結果、価格が高騰したのだ。

 おのれ、陰陽師学園め!


「私はこっちを清める。聖はそっちを任せる」


「はーい」


 訓練場を祓い清め、儀式の準備を終えた。

 乳歯を使い切った今、代価は前髪を使うことにする。

 霊素を使える俺は少量でたっぷり力を込められるから、数本ずつ使えば問題ない。


「望む式神のイメージはできたか」


「うん」


 たくさん殴れるやつがいい。

 焔之札一枚で倒せるような雑魚は要らない。

 とにかくストレス発散できそうなやつでお願いします。

 ちゃんと智夫雄張之冨合(ちふぉちょうのふあい)様にもお祈りしておいた。

 さぁ、7連式神召喚スタート!


「峡部家が嫡男、峡部 聖が願い奉る。天地を繋ぐ大いなる霊力に託し、心魂を宿す叡智の術を以って、異界より式神を召喚せん。天地の調和を――」


 印を結びながら召喚の呪文を唱えると、辺り一面に煙が立ち込め始めた。

 もはや慣れたものである。

 何が出るかな?


「グルルル」


「おっ、狛犬だ」


 当たりっちゃ当たりだけど、俺の望みを叶えるものではないな。

 向こうは当然一方的な契約を嫌い、戦いを挑んできた。


「──焔之札」


「ギャンッ」


 はい、おしまい。

 九尾之狐の欠片と連戦していることで、このサイズの獣の動きは見慣れたもんよ。

 札一枚に程よく霊素を込めたら一撃である。

 全身火だるまになった狛犬は、あっという間に炭化した。これにて調伏完了。


「歯ごたえないなぁ」


「……狛犬はなかなか強い部類だぞ」


 親父の言う通り、狛犬系統の式神は戦闘でも頼りになる当たり式神である。

 ただなぁ、脅威度6弱相手には役者不足なんだよなぁ。

 我が社の採用基準はかなり高いから仕方ない。

 続けて式神を召喚していくも、5回連続で齧歯類だった。

 こっちは明確にハズレだな。


「次はいいのが来ないかなぁ」


 半分諦めの境地に至った俺は、次に現れた式神を見て目を見開いた。


「何あれ? 大きい壁?」


 初めて見る系統の式神だ。

 なんだろう。

 いや、石っぽい見た目で壁といったらアレを連想してしまう。


「お父さん、あれ、塗り壁かな」


「おそらく」


 我が家の歴史ではほとんど召喚されたことがない系統だ。

 見た目通り、防御に優れているのが特徴らしい。

 なかなか使い勝手が悪いとも記載されていた。


 契約は拒否され、戦闘が始まるが……動き遅っ!

 ちっさい足でよちよち歩いてくる。

 そのペースだと1分くらいかかるけど、近接戦しか攻撃手段ない感じ?

 敵である俺が心配になるくらい攻撃されまくると思うよ。


「──竹槍之札」

 

 外見からして、属性は土か金といったところ。

 五行相剋の観点から、まずは木で攻撃した。

 木は土を跳ね除けて成長する。

 大地から勢いよく伸びた竹槍が塗り壁を突いた。


 パラリ


 塗り壁の体表が崩れ落ちた。

 効いている。属性相性は良さそうだ。

 しかし、竹槍は体表で砕け散り、致命傷には至っていない。

 これは予想以上の耐久力だ。

 もう少し力を込めても死なないだろう。


「──竹槍之札」


 霊素ではなく、重霊素を込めた。

 生えてくる竹槍も剛性が増し、今度こそ貫けるはず。


 バキッ

 パラリ

 

 また同じ結果になった。

 竹槍が砕け、体表が崩れる。

 これは……。


「聖! 油断するな! 近づいてくるぞ!」


 のそのそ竹槍を踏み越えてやってくる。

 その足取りに臆した様子はない。

 自分の耐久力に自信があるのだろう。

 智夫雄張之冨合(ちふぉちょうのふあい)様、ありがとうございます。

 こいつは俺が望んだ通りの式神だ。


「──竹槍之札──土槍之札──弾之札──水球之札」


 安い紙に安い墨で粗製濫造した札。これらに第参精錬霊素を少量と、俺のストレスをぶち込んだ。

 出来上がるのは、同時操作可能な100枚の札の乱舞である。

 オラァ! 蜂の巣にしてやるぜ!


 ドドドドドドドド


 サブマシンガンをフルオートでぶっ放している気分だ。銃を撃ったことはないけど。

 塗り壁の下であらゆる札がそれぞれ発動し、爆発の中心地となっている。

 札を操作してフルボッコにした俺は、最後の一撃として捻転殺之札を懐から取り出した。

 札に第陸精錬霊素を込め始めたところで、俺たちはある異変に気付く。


「む、塗り壁が小さくなっている」


 親父の呟きが全てを表していた。

 攻撃の度に体表が砕けていた塗り壁は、100連撃によってその身を削られていったようだ。

 もともと俺より大きかった塗り壁が、今では小型犬くらいのサイズになってしまっている。

 塗り壁はポテンと倒れ伏すと、そのまま塵となって崩れ落ち、風に乗って消えていった。


「ふぅ……スッキリ」


 力の限り暴れ回ったような爽快感がある。

 塗り壁は良いサンドバッグとなってくれた。

 とはいえ、戦闘としては一方的な圧勝だったので、報酬はかなり渋めにしておこう。


 いやぁ〜、それにしてもラッキーだった。齧歯類連発で諦めかけていたおかげで、物欲センサーを回避できたのかな。いやいや、智夫雄張之冨合(ちふぉちょうのふあい)様にお祈りしてきたのが良かったに違いない。

 帰りに御礼参りしてこよう。


 戦闘が終わったので、親父がやってきた。


「あの式神、お前の攻撃を真正面から受け止めていたな」


「そうだね。ちょっと驚いた」


 並の式神にはできない芸当である。

 防御力特化だとしても、ほぼ無傷だったことは信じ難い結果だった。


「一撃で一定のダメージしかくらわない。それがあの式神の特性なんだと思う」


「それは……恐ろしく有用な特性だな」


 重霊素をたっぷり込めた時も、少量の霊素を込めた時も、砕ける体表に差は見られなかった。

 毎回脱皮することでダメージを受け流されていたような感じだ。

 その代わり、弱い一撃でも体表は砕けてしまう。


「移動能力は皆無だから、盾役だね」


「上手く使えば無傷で戦うことも……今まで大きな怪我をしたことはなかったな」


 そうなんだよね。

 身体強化してるし、安全マージン取ってるから。

 戦闘でどう使うかは、これから考えよう。


「次は私だな」


「頑張って」


 なお、親父は3体とも齧歯類だった。

 覚悟はしていたのだろうが、俺が当たりを引いただけに密かに落ち込んでいた。

 そんな親父が別れ際に再度聞いてくる。


「学校のことで悩みがあるなら話しなさい」


「さっき解消したから大丈夫」


「……そうか」


 当たりも引けて、陰陽術で大暴れして、予は満足じゃ。

 明日からの学園生活も楽しむとしよう。

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