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第21話 ゴブリンスレイヤー



現場到着後、各自持ち場に着き次第、散開。

我々は、右翼やや端という位置にいた。


天気は、どんより曇って視界がきかない。おまけに、少し霧が出てきた。

「殲滅戦やるには、チョイと天気がイマイチだな。」

「遠くが見えづらい。」

「雨が降ってくると動きづらいし、炎系の攻撃が弱くなる。」

ついでに言うと、雷系の魔法も、自分が感電してしまって使いづらい。


「水系に集中させるかな。」

「了解。」

「攻撃するとき言うから、前に出るなよ。胴体真っ二つになるぞ。」


まずはサーチ&デストロイ、遊撃という形で、攻撃を開始する。



オレは視覚調整を始める。


魔導工学・第2理論の応用

『生体は、魔導式にて改良できる。』


魔導工学の応用で、オレの視覚は色々な調整ができる。

赤外線・紫外線・魔法力・生体反応。

遠距離・近距離のズーム。

機能を次々切り替え、最適を探す。


よし! 赤外線だ。

途端に世界が賑やかになった。


「メル、こっちの方向150m。10体いる。」

「判るの!?」

「盗賊スキル習って覚えた。」

「なーる♪」

ウソである。


「お前にも連動させる。」

「できるの!?」

「目を閉じろ。」

メルの瞼の上を、軽く抑えて術式を唱える。

「よし、いいぞ。」


「わおぅ♪」

「いるだろ?」

「いるいる。」

「チョイとコツはいるが、目を凝らすと、遠くの物が、近くに見えるぞ。」

しばらく練習していると、ズーム可能となったらしい。

「おー♪」

「感心してないで、攻撃しろw」

後ろ頭を軽く小突く。

「はーいw」


メルは弓を角度調整して、次々に射っていく。

見ていると、次々にゴブリンが倒れていく。


メルが射っている間に、次の目標を探す。

「次、こっち。」


メルに指示していると、マリベルが、

「私にも見せてくれ。」

同じく、視覚調整する。


「これは・・・」

「盗賊ギルドから怒られるから、内緒だぞ。」

「分かった。」

テキトーである。


前方のゴブリンを倒しているうちに、敵の本隊は、およそ80mの地点まで接近してきた。

周りでは、ぼちぼち味方の攻撃が始まっている。


「メル、中距離戦の準備。

ゴブリンリーダーっぽいヤツがいたら、射殺してくれ。

矢の残数に注意しろ。」

「了解。」

「オレも、そろそろ攻撃に移る。」


まだ雨は降りだしていない。

味方は炎中心の魔法攻撃をしている。

オレは、雨模様を想定して、水魔法の訓練を始めた。


炎魔法に比べて、水魔法は、見た目は地味である。

だが、威力が少ないという意味ではない。

要は、場所とやり方だ。


80mという距離のため、ウォーターカッター等の魔法は、範囲外だ。

で、まずは適当な大きさの水滴を作る。

次に、水滴を凍らせる。

で、打ち出す感じで氷を発射する。

何のことはない、氷の弾丸である。


製作して発射まで1s。

マシンガンほどではないが、中々のスピードで、次々に発射する。

目の中心線と、発射する腕の中心線はシンクロしてある。


ゴブリンには気の毒だが、オレ達より25mの範囲まで来られる個体は、1匹もいなかった。


「よし! 右翼は前進!!」

サブリーダーより号令がかかる。


「私の出番は無いみたいだな。」

と、マリベル。

「何言ってんだ。今からだぞ。」

と、オレが注意する。


右翼は、森の中に入る。

「メル、マリベル、接近戦の準備。

メルは誤射に注意して、ゴブリンリーダーを探して殺せ。

マリベルは、メルのバックアップ。

オレはMP残量に注意して攻撃。

10m以内に敵が来た場合は、二人のバックアップをする。」


ただでさえ曇りで暗い中、森に入ったので、さらに暗くなる。

我々以外のパーティは、苦労しているだろう。



森を抜けて野原に出て、もう一度森に入って出ると、別のレイドの連中と合流した。

今までに、全体で200匹を超えるゴブリンを討伐しているらしい。


もう終わりかなと思う頃、

『ウワワーーーーーーッ!!』

という、鬨の声が響き渡った。


『何だ!?』

見ると、両側の丘から、少なく見積もって500匹を超えるゴブリンの集団が、こちらへ向かってきていた。


挟まれた!


こちらは80名くらいである。

「何だぁー!? ゴブリンは200匹じゃなかったのかよおぉーーー!!」

「あれだけの数、イッペンじゃ、ムリだぁーー!!」

あちこちで悲鳴が上がっていた。


「メル、マリベル! 肉弾戦の準備! 

メルは長剣準備。マリベルは抜刀して敵に備えろ! 」

オレは軽くシールドを展開して、自分達のバックアップを行う。

レイピアの鯉口は、切っておいた。


メルとオレが攻撃の連射を続ける中、肉弾戦が始まった。

接近するまでに、ずいぶんな数を倒したはずだが、

あまり減ったという印象は、受けなかった。


メルは抜刀。オレもレイピアでの肉弾戦になってゆく。



「クソッ、私がいると、いつも部隊が壊滅する。」

マリベルが嘆く。


オレは、

「寝言は、寝てから言ってくれ。今は、1匹でも多く倒すのが先決だぜ!」


オレはゴブリンを倒しながら、マリベルの言ったセリフを考えていた。

「マリベル、いつもこんな感じで、ゴブリンが多いのか?」

 マリベルは、2匹のゴブリンを串刺しにしながら、

「こんな多いのは、今回始めてだ。」

「段々、数が増えている?」

「ふ・増えているぞー!」

喋りながら戦うのは、キツそうだw


オレはマリベルの腰に手をまわして、オレと一緒に下がらせると、

軽いヒールと継続回復を与えた。

「少し休め。」


メルも一緒に下がって来た。

見れば、ゴブリンの血液やら内臓やらが飛び散って、ひどいありさまだ。

「メル、ケガはないか?」

「切り傷はあるけど、平気。ケンは?」

「同じく。」


部隊は、嘆いた割りには、確実にゴブリンを退治していた。


あと少しで勝利、というところで、新たな鬨の声。


見れば、未確認だったゴブリンナイト数十体が狼に騎乗して、突進してきていた。

見計らったように雨が降り始め、我々部隊はいきなり劣勢に落ちた。


味方は大混乱。

オレもMP残量が、あまり無いことが解っていた。

このままじゃ、刈り取られる!


「コーノーヤーロー!!」

オレは半分キレかかった。


ゴブリンのクセに、ヤルじゃないか。

コブリンのクセに・クセに!・クセに!!

頭の中にエコーが木魂する。


『オマエら、後ろへ下がれ!!』

オレは叫ぶ。

オレの前にいた連中が、慌てて離れる。

『ウォーターカッター!』

ブーメラン形状のカッターをうろこ状に展開して、一遍に扇型に発射する。

それを続けて2回!

もう1回!

もう1回!


見れば、騎乗したゴブリンナイトは、ブツブツに切れて散らばっていた。

『ザマアみろ!!』

叫んだオレは、鼻血を噴出してブッ倒れた。



気が付くと、オレは何か暖かくて柔らかいものを枕にしていた。

目を開けると、オレの上に優しく笑ったマリベルの顔があった。

「戦いは?」

「ほぼ終わった。今は跡片付けしている最中だ。」

「メルは?」

「チームを代表して、片付けに行ってもらっている。」

「そいつはお疲れ様だ。オレも手伝わないと。」


起きようとすると、やさしく止められた。

「鼻血噴出して倒れたんだ。少し静かに寝てろ。」

ウエッ! 

何それ。恥ずかしいw


「暖かくて柔らかいと思ったら、マリベルの太腿だったのか。」

「甲冑の下部分を脱いで頭を乗せたからな。そのままじゃ、痛いと思って。」

「それは、ありがとう。」

「・・・」

「?」


マリベルは、言いにくそうにして、

「オマエ、私に気を使ったんだな。」

「何が?」

「『いつも部隊が壊滅する。』それを防いだんだろ?」

「・・・」

「今回は78名中、死亡5名、負傷13名だ。」

「・・・」

「あの状況で、これはスゴイ。」

「やれる事を、やれる人間が、やれる場所で、やっただけだよ。

ジンクスは、外れたじゃないか。」

ニヤッと笑って、オレは言った。



もう大丈夫だろう。

オレはゆっくり起き上がると、

「それと、そのジンクスには、間違いがある。」

「?」

「『私のせいで部隊が壊滅する。』じゃなくて、マリベルがゴブリンの多い所に行ってんだ。」

「?」


「いいか。多分だが、β-89付近は、今、ゴブリンが集結してきているんだ。

そこに『ソロでも効率よく稼げる。』と思ってるアンタが行く。

ゴブリンが多すぎて部隊が大きく減損する。

でもゴブリンは、すぐ補充されて減らないから、討伐命令が出る。

マリベルが行く。ゴブリンが多すぎて減損する。この繰り返し。」

「・・・」

「一度帰ったら、開拓者ギルドでゴブリンの移動動向を調べた方がいい。

きっとそんな感じだぜ。」


さて、フィニッシュだ。


カッコつけて、オレは左手を差し出した。

「と言うことで『悪魔と契約』は解約して、オレ達のパーティに入らないか?」


マリベルは、オレの手を取りながら、

「マリーだ。」

「?」

「私のことを、親しい人はマリーと呼ぶ。」

オレはニカッと笑って、

「よろしく。マリー。」


丁度、手を振りながらメルエルが帰ってくるのが、オレには見えた。





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