008 Farmers(開拓農民)
農家の朝は早い。
農家の作業は、耕作・種苗・雑草除去・水まき・水路などの設備維持。収穫・販売・輸送などの営業が主な仕事である。
野菜や果物の収穫期になると、日が沈んでるうちに家を出て空が白けてきたら収穫をはじめ、太陽が地平線から出きったころには、収穫物を乗せた馬車を操り、人口が集中している比較的近くの街まで行き朝市で、朝から昼過ぎまで販売をして、帰宅してから夕方まで耕作地や畑に出て作業を行い、暗くなったら家に引き上げる。
穀物などは全部王国政府が一定金額で買い取ることになっている。購入額は高くない。というのもこの王国の農民への税金納付は、政府が買い取った穀物類はさらに商人や国内の王立バザーで販売し、その売り上げと買い取り額の差額が税金となっている。
そのため農地面積に対して穀物作付面積が決められている。穀物作付面積以外の部分では自家用や販売収入用の作物を植えていいことになっている。
穀物と言っても地形条件により収穫できるものが異なるため、小麦・大麦・米・豆・麦・稗・粟などの多種の内から選ぶことができる。
また天候不順の年は税の軽減も図り、農民の保護もしている。
穀物は野菜などの種まきと収穫時期が異なり作業が重ならない。そのため農家では多品種の作付を行っている。
農家の収入は、王国政府への穀物販売と、野菜・果物類の販売や、家畜からの収益によって維持されている。しかし経済的な余裕がないのは農家の特徴である。家族以外の労働力を養うほどの収益が個人農家にはない。何でも自分たちでしないといけないのだ。そのため少人数による最大効果を得るため魔法を活用している。魔法が使えることが跡継ぎになる絶対条件にさえなっている。
農民の魔法というと、土魔法と召喚魔法、精霊魔法、次元魔法に風魔法、直接使うというより、応用を利かせ農業の省力化を図っている。
◆田畑の耕作で土をフッカフカに改良する土魔法。
◆土に腐葉土を混ぜ込むために土魔法。
◆畑の畝を作るために土魔法。
◆雑草を抜く前に土魔法でフッカフカにして、根っこまで抜けるようにする。
◆ため池の土手を硬化させために土魔法。
◆ため池からの水路を掘るのに土魔法。
◆作物の隙間に生える、雑草を抜くために召喚魔法や精霊魔法。
◆作物の収穫に道具を動かすために念動魔法や風魔法。
◆雑草カットのために裁断魔法である、次元魔法・風魔法・精霊魔法。
◆収穫には精度のある魔法が使用をしないと収穫量が減ってしまう。収穫には直接魔法を使用せずに、収穫道具が使用される。その動力は魔法力である。
そしてどこの小さな村にも教育機関がある。簡単な書き取り、簡単な計算、魔法の修練のためのもので、馬小屋の規模の小屋が用意されている。子供からすると近所の子供たちと魔法で競い遊ぶことができた。
親からすれば優秀な子供を跡継ぎにできたが、跡継ぎにできない子も、魔法力さえありさえすれば、村の周りにある土地を開墾して子供の耕作地を増やせれるので子供を切り捨てることをせずにすみ安心ができた。村の周りの土地がなくなったり、水の問題から村の周りを耕作できなくても、遠く離れたところに新しい村を開拓し築いていく。ちょうど北海道開拓やアメリカの開拓時代のようにどんどんと人の世界が広がっていく。
今回はそんな話。
今眼下に見えるのは10人ほどの集団。2人の男性成人と、9人の男女の子供たち。ムシロの隙間から鎌と鍬と斧・スコップなどが見え隠れする。それらをムシロで巻き、ロープで肩から運んでいる。手には鞄。道と言えるのかどうかもわからないような獣道を歩き続けている。木々の葉の隙間から彼らが見えたりみえなかったりする。一刻ほどするとようやく目的地に着いたようで、野営の準備を始めた。鍋を出して火をおこし、簡単な夕餉をつくって、チャチャッと済ましたところで、リーダー格の大人が会話を始めた。
「昨日今日と二日歩きどおしでようやく目的地に着いた。ここは元の村から2日ほどと、比較的近い立地なうえ、ここより高い部分に川が通っており、農地に引き込むための水の取り入れできる好条件、また下にはその川が回り込んでいるので排水もしっかりしている。もうすぐ日が暮れるが日照もしっかりしている。そして飲み水に使える泉とその泉の元になる山地も控えている。村をつくる条件としては本村よりも優れているんじゃないか?数年は本村からの協力と実家の協力が得られるから、それまでに木々を払い、開墾し、耕作地を作りたい。そして戸別に均等割りして、村を作っていこう!皆もそのつもりでついてきてくれたと思う!一緒に頑張ろう!!」
「「「「「「おう!」」」」」
「冬が来るまでの今期は畑の整備と、村つくりになり、先に畑を耕作し、ある程度のめどがついたら村つくりをしたい。しばらくテント宿泊になるから明日は一日はテント場の簡単な整備をしたい。そしてあさってから縄張りを決めようかと思う。朝になったら皆バラバラで周りをまわり、地形を再確認し、だいたいの村の計画を立て、夕方までには整備を済ましてしまいたい。明日も朝が早いが頑張ってくれ。」
皆がうなずく。
「あさってからまずは耕作地をどこまで行うかという縄張りをしたい。はまずは大幅に木々を切り倒していく、切り株は土魔法が得意な俺とジョンがひっこ抜いていく、そのほかの皆は斧で木の切り倒しに回ってくれ。この作業は予定面積から数週間は作業が続く。予定の範囲の切り倒しが終わったころには、作業の進捗が遅い切り株班を手伝ってほしい。念動か土魔法が得意な数人こちらを手伝ってくれ、魔法が不得意なものは道具や魔法を使って、畑の境界部分に切り倒した木々で柵を作り始めてくれ。この周りには野生動物がまだ多い。農地への侵入を防ぐのに柵が必要になるので必要だ。」
皆がうなずく。
「あとは畑が格好着いたら、土の土壌が良くないから、親指と中指の厚みほどで落ち葉を集めて撒いて、最後に畑を耕したい。畑の格好がつく頃にはもう秋だ。そのまま種まきをするよりも、春から住まう住居を作りたいと思う。また嫁や恋人を連れてきたい者もいるだろう、倉庫や共同保管庫などもいるから、最終的には15棟ほど必要になるだろう。雪が降り始めるまでに数棟は作っておきたい。雪が本格的に降る前に一旦本村に戻り、ひと冬を越し、雪解けが始める頃に新村に戻り、村開きをしたいんだがどうだろうか?」
「良いぜ!」
「ガットの兄貴の計画でいこう」
「あとは戻ったときに新しい村の名前を長に報告しないといけない。新村が大きくなれば俺かケビンが村長になるが、それまでは本村のロデム長が村長だ。村長から代官に新村の事を報告してもらわないといけない。その時に村の名前が必用なんだそうだ。そこで一番年下のトムがいい名前を考えてくれた。こういうのはセンスだな。ラディッシュ村というんだが、皆の意見も聞きたい。」
「いいんじゃないの?ラディッシュ!シロツメ草だった?希望が持てる名前だね。」
「違うぜトリー、二十日大根のなまえだ。すぐに大きくなり収穫も早く、これから大きくなる俺らの村に最適な名前だ!!」
「そりゃあいいねえ。」
「やるじゃねーか?トム!」
トムはてれてれ。
「そして年々少しづつ耕作地を増やしていこう!!」
「「「「「「おう!」」」」」
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登場人物
本村の長 ロデム 年寄り
大人①ガット 今のところのリーダー
大人②ケビン ガットが認めるもの
子供①ジョン 名前のみ
子供②トム 新村の命名者 一番年下
子供③レビン
子供④トリー女の子 おっちょっこちょい、気のいいやつ
子供⑤センタ
その他子供