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ゴールド

ある日突然、朝目が覚めたらかーさんの部屋にとうさんがいた。

「とうさん?」って聞いたら「そうだよ」ってニッコリ笑って頭を撫でてくれたから、私はびっくりしたけどサイコーに嬉しかった。

だって、どこのおうちにも『とうさん』はいたのに、ウチはいなかったのが悲しいなってずっと思ってたし、とうさんの髪と私の髪はおそろいだったから。

「かーさんがね、とうさんの髪と私の髪は一緒って言ってたの!

 あのねあのね、『二人とも太陽の色ね』ってかーさんが言ってた!!

 だからすぐにとうさんだってわかったの!」

興奮してそう言ったら、とうさんは「そうだね、一緒だね」って言いながら、私をギュッて抱きしめてくれたの。


こんなにカンドーなとこで、お腹が「ギュ~~~」って鳴るからこの部分だけは本当にいやな思い出!

とうさんたら「おなかがすいたなら、おかあさんを起こそうか?」って聞いてきたから「私パンケーキ作れるんだよ」って言ったの。

とうさんたら不器用でなぁんにもできないけど、私頑張って作り方を教えてあげたの。

作ってるうちに、かーさんが起きてきたんだけど、かーさんエンエン泣いちゃってビックリしちゃった。

この日は2度も驚いちゃって忘れられない1日なの。


これが私のとうさんと初めて会った日のことよ。



◆□◆□



私が5歳になったとき、弟が生まれたわ。

かーさんにもとうさんにも似てない真っ黒な髪。

「宵闇の色だ」なんてとうさんは笑ってたけど、かーさんともとうさんとも似てない不思議な色で驚いたのよ。

でもとっても可愛いので気にしない。

かわいい私の弟。

大きくなるにつれて難しいことばかり考えるかわいい弟。

「だめだよ、パリス」なんて、すまして言う小憎らしいかわいい弟。


「かあさん!!

 またカイが私のことをばかにするっっ!!」


私は16歳になっていた。



◆□◆□



ボクはカイ。

母はリカ、父はジークフリート。

パリスはボクの姉。

パリスは本能のままに行動する。


今日パリスはボクと近所の兄さん達と一緒に山に行って遊んでたけど、途中帽子が飛ばされたんだ。

パリスときたら帽子を追って、スカートなのに木に登っていったんだ。

それはそれは見事にスルスルと...、兄さん達は青くなったり赤くなったり大変だったよ。

パリスは本当に...。

『兄さん』っていったって、彼らは小さい頃から遊んでる友達であって、姉さんを好いてる人だっているのに...。

本当に馬鹿だ。

だから言ってやった。

「パリス姉さんは本当に考えなしで馬鹿だね」


おかげですっきりしたよ。


なんで馬鹿だと言ったかを説明したら、母はパリスを笑って慰めるだけで、ボクにはなんにもお咎めがない。

そりゃ当然だ、ボクは悪くない。

執事もきっと今の聞いていただろう。

夜、彼から父に伝わって、兄さんたちは大変だ。

近い将来彼らは父の仕事の下につく予定からね。

下着を見られたって全部パリスが悪い!


こんな馬鹿な姉をボクは大好きだ。

優しく微笑む母を守りたい。

裏表のある父の力になりたい。


ボクは知っているんだ。


どれだけ母が泣いて、どれだけ父が苦しんで、どれだけ姉が寂しい思いをして、どんなに痛い思いをしても執事がボクたちを沈黙で守ってきたことを...。


だからボクは精一杯家族を大事にするんだ。



◆□◆□



「カイのバカーーー!!

 とうさんのわからず屋ーーーー!!!」

高台から大声で叫ぶ。

たぶんあれはカイととうさんが乗った船だ。


カイったら本当にひどい。

こんなに私はカイを大事にしてるのに!!

私が18になったとき私を置いて、幼馴染と一緒にとうさんと仕事に行き始めてしまった。

勝手に大人になっちゃダメって、あれほど言ったのに!

いつまでも一緒にいてねって、いっぱい約束してたのに!!


「パリス、どうしたの?」

きっと探しに来てくれただろう、かーさんが後ろに微笑みながら立っていた。

「かーさん...。

 カイが私を置いてっちゃったの...」

私は泣きながら、かーさんに抱きつく。

とうさんは過保護すぎて私を仕事に連れて行ってくれない。

悪い虫がついたらどうするんだって言って、執事さんは「ご心配なのですよ」って言うけど、それこそバッカみたい!

カイが「野生児!」っていうくらいな私に、悪い虫なんて付くはずないじゃない!


18になったら大人だけど、私はいまだに恋人の一人もいない!

カイのやつ、先に彼女なんかできたら絶対に邪魔してやるんだから。



◆□◆□



「社長...、いつも激しい御見送りですね」

「...言わないでくれ」

パリスの方が絶対馬鹿だ。

あんな大声出して...。

あとで絶対お返ししてやる。


とうさんがうつむいて真っ赤になっている。

とうさんがパリスを甘やかした結果だよ。

でもどうせ可愛いとか思ってるんでしょ?

まぁ、実際可愛いよね。

今頃きっと寂しくて泣いちゃってるよ。

お返しじゃなくて、甘やかしてあげようかな?


だってボクはやっぱりとうさんの息子なんだから...。



◆□◆□



「ねぇ、パリス、今いい?」

部屋で一人いじけていたら突然声がした。

「え?カイ?」

振り向くとカイが立っている。

「カイ?

 帰ってきたの?

 かあさんが2日ほどかかるって言ってたのに?」

フラフラと近づいて頬に触ってみたけど、ちゃんと温かい。

幽霊じゃないみたいね。

「そうだよ、明日の夕方まで帰ってこれないよ」

「でも目の前にいるじゃない!」

私は意味が分からずカイの腕にしがみつく。

「ふふふ、パリスには特別に教えてあげるね。

 ボク、一度行ったところに飛べるんだよ。

 今は休憩時間だから、ちょっと戻ってきたんだ。

 驚いた?」

私は何度もうなずく。

「すごいじゃない!

 カイったら本当に何でもできるのね!!

 あっ、でも私のほうが『お姉さん』だからダメよ!」

カイはフフフっと笑って「じゃぁ、行ってくるね」と掻き消えてしまった。


何でもできるカイだけど、木登りはカイに負けないのよ!



◆□◆□



「パリスって面白いなぁ、『おねえさん』だからって、なにがダメなんだろう」

パリスは本当に素直で愛おしい。

普通あんなの引くだろう?

気持ち悪がるだろう?

「素直に『すごい』っていうパリスは馬鹿なのかな?

 素直なのかな?」

どちらにしたって、ボクの中では世界一大事な家族だ。


家族を守るためにボクもとうさんのように、鬼にだって悪魔にだってなるんだ。

まずはそう、執事を痛めつけた奴らからかな..。

ボク達を静かにしといてくれたら、痛い思いも苦しい思いもしなくて済んだのにね。


残念だったね。




ここ数年、帝国内で突然の訃報が相次ぎ混乱した。

それは軍備拡大を強固に進める官僚やら、軍人やら...。

でも彼らの周りに暗殺に関わったものはいないし、大勢いる中で突然死んだものが多い上にみんな病死だ。


だから遠い島には届かない、島の人にとっては些細な事件。

そんなことより、明日の嵐の方が心配なくらいだ。


詳細を知ってるのは...。



◆□◆□



「お前ばっかりに悪かったな」

オレはそっとカイの頭の上に手を乗せて撫でる。

「いいえ、とうさん。

 とうさんが帝国軍部を比較的簡単に出入りできるようになってなければ、こんなに安易に事は運びませんでした」

「それでも、カイの手を汚させてしまった」

「ボクは幸せですよ

 ボクの力で家族に手出しする、知識や欲のあるやつがみんな消えた」

うっすらと笑うカイを見ながら、オレはリカを思い出す。


オレはカイを引き込んだ。

リカと共にいるためだけに、オレはカイを闇へとそっと落とした。

いつか以前のように、俺からリカが離されないよう、少しずつ計画を実行していった。

将来リカを苦しめたくないから、カイが狂わないようにするため、パリスをひたすら純真に育てあげた。

あの子がカイを最後に引き止めてくれるだろう。


オレは一番の常闇...。

リカ、オレは太陽の色じゃない。

オレはどんな色も引きずり込んでしまう、光のない闇色なんだ。


どうかオレの手にとどまっていて。

俺の狂気が周りを壊さないように....。



最後まで読んでくださりありがとうでした。


暗くなってすみません

途中難しくなってきて、ブレにぶれた感じですみません!

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