全能なるウルティマが到来した。ドリルヘッドが現れた。
赤和葉は切符売り場に小銭を数枚置いた。
「切符をください。」
切符売り場の老人は、数え切れないほどの乗客の出入りを見てきたかのような、生気のない目をした痩せた男だった。老人は赤和葉を一瞥すると、かがみこんで帳簿をめくり、これから出発する列車のリストを確認した。
「エコノミーかファーストか?」老人は年老いてかすれた声で尋ねた。
赤和葉はカウンターのボードを見た。列車は15分後に出発する。彼は肩をすくめた。「エコノミーで。」
老人は頷き、少し擦り切れた紙の切符を赤和葉に差し出した。「3番ゲートから乗車してください。遅れないように。」
赤和葉は切符を受け取ると、踵を返して歩き出した。カウンターを離れる時、彼は一瞬空を見上げた。月は高く昇り、駅を包む薄い霧を通して銀色の光を反射していた。列車の機関車からは蒸気が立ち上り、月明かりと混じり合っていた。
汽笛が鳴り響き、まもなく出発することを告げた。赤鶴はプラットフォームを歩きながら、他の乗客たちをじっと見つめていた。すでに乗り込んで、古びた客車の中に席を見つけた者もいた。窓からは柔らかな黄色の光が漏れている。一方、まだ荷物を運びながら、出発までの残り時間を少しでも有効に活用しようとしている者もいた。
赤鶴はゆっくりと3番ゲートへと近づいた。彼の目に、かすかな笑みが浮かんだ。
「君の席はあるかな?」背中に背負ったロボットにそう呟き、列車に乗り込んだ。
客車の中は心地よい暖かさに包まれており、外の冷え込んだ夜とは対照的だった。内装は濃い茶色の木材でできており、壁には精緻な装飾が施されていた。吊り下げられたランプが柔らかな黄色の光を放ち、すべてがぼんやりとした光に包まれているように見えた。
赤鶴は周囲を見回した。乗客たちは席に着き、談笑する者もいれば、物思いにふける者もいた。彼はチケットをめくり、部屋番号を確認すると、狭い廊下をゆっくりと歩いた。
割り当てられた部屋はダブルルームで、シングルベッドが2台向かい合って置かれていた。部屋の中央には小さな木製のテーブルがあり、その横には外を見渡せる大きな窓があった。月明かりが窓ガラスに反射し、遠くの山々が静謐な水墨画のように見えた。
しかし、彼の目を引いたのは、部屋にいるもう一人の人物だった。
男は椅子に深く腰掛け、片手にノートを持ち、もう片方の手で万年筆をくるくると回していた。丸眼鏡の奥に隠された瞳は、まるで二つの輝く宝石のように光を反射していた。ドアが開く音がすると、男は顔を上げ、赤葉をちらりと観察すると、かすかに微笑んだ。
「ほう?旅の仲間ができたようだな。」
彼の声は穏やかで落ち着いており、行動よりも観察に慣れた人物特有の落ち着きを漂わせていた。彼はノートを閉じ、表紙を指で軽く叩いた。
「ルティエ、放浪の作家です。」彼は片方の眉を上げた。「あなたは?」
赤和葉は鞄を脇に置き、ロボットは彼の隣に座った。「私は沙敷赤和葉、放浪者です。」
ルティエは静かに笑い、ノートを脇に置いた。「放浪者?一人旅は珍しいですね、特にこの列車では。」彼はロボットにあまり注意を払っていないようだった。
赤和葉はすぐには答えなかった。彼は上着を脱ぎ、窓際のフックに掛け、椅子に腰を下ろした。窓の外では、月明かりが静かに果てしない野原を照らし、銀色の川のように夜空を流れていた。
ルティエは胸の前で両手を組み、椅子に深くもたれかかった。「私はよく列車の乗客を観察するのが好きなんです。一人ひとりにそれぞれの物語があり、この列車に乗るそれぞれの理由がある。」
彼は首を傾げ、瞳に好奇心の光を宿らせた。「赤葉、君は?何を探しているんだ?」
赤葉はしばらく沈黙した後、かすかに口元に笑みを浮かべた。「別に。ただ、行きたいところへ行くだけさ。」
ルティエは静かに笑った。「いかにも自由気ままな旅人らしい答えだな。」
線路を転がる車輪の音が列車のリズムと混じり合い、車内は静まり返った。ただ黄色い灯りが木製の床に柔らかな光を投げかけ、静寂な雰囲気を醸し出していた。
赤葉は座席に深く腰掛け、目を半開きにした。ルティエの手にあるノートを見つめ、「何を書いているんだ?」と尋ねた。
ルティエは少し間を置いてから、かすかに微笑んだ。ノートを数ページめくると、びっしりと書き込まれた手書きのメモが現れた。インクはまだ生々しく、つい最近書かれたものだと分かった。
「たぶん誰も読まない物語だよ」と、彼は少しからかうような口調で言った。
赤鶴はページをちらりと見たが、内容を読もうとはしなかった。「あなたは作家ですよね? 書くのは人に読んでもらうためじゃないんですか?」
ルティエは肩をすくめた。「理想を言えばそうだ。でも、中には何かを忘れないようにするためだけに書く物語もあるんだ」
彼はノートをテーブルに置き、表紙を指で軽く叩いた。「物語には作者の魂の一部が宿っていると思うかい?」
赤鶴は首を少し傾げた。「魂?」
「つまり…」ルティエは言葉を詰まらせ、視線をそらした。
赤鶴は黙り込み、一瞬、ある考えが顔に浮かんだ。しばらくして、彼は静かに笑った。「ロマンチックに聞こえるだろう?」
ルティエは笑った。「それが作家の仕事じゃないか? 時には自分自身でも現実なのか夢なのか分からないような夢を紡ぐことさ。」
車輪は線路の上を滑らかに転がり続け、列車は静かな夜を走り抜けていった。
「なんて美しい景色だろう…」赤鶴は窓の外を眺めた。月明かりが下の水面に反射している。
赤鶴は黙り込んだ。「時々…自分の気持ちをどう表現すればいいのか分からなくなる。」
ルティエは静かに赤鶴を見つめ、その瞳には思慮深い光が宿っていた。彼はすぐに返事をせず、窓の外を眺めた。
下の静かな水面には夜空が映り込み、月明かりがきらめく帯となって広がっていた。列車が静かに水面を滑るように通り過ぎ、静かな水面に小さな波紋を残した。
「見せてあげる必要ある?」ルティエは落ち着いた声で尋ねた。
赤鶴はわずかに眉をひそめた。
「つまり、感情表現が得意な人もいる。悲しい時は泣き、嬉しい時は笑い、傷ついた時は怒る。でも、そうでない人もいる…そういう人もいる。感情は感じるけれど、どう表現すればいいのか分からないんだ。」
赤鶴は月明かりを映す水面を見つめた。「僕はどちらのタイプだと思う?」
ルティエは静かに笑ったが、すぐには答えなかった。ノートを取り出し、数ページめくってから、こう言った。
「君は、あまりにも多くのことを経験してきたせいで、自然な感情の感じ方を忘れてしまったように見える。」
赤鶴は肯定も否定もせず、黙って水面を見つめていた。
しばらくして、彼はため息をついたが、口元にはかすかな笑みが浮かんだ。
「ずいぶん苦労してきた人みたいだね」
ルティエは椅子に深く腰掛け、くすりと笑った。「俺みたいな作家は、世界から物語を拾い集めて、言葉に紡ぎ出すだけさ。そして君は…もしかしたら、俺がまだ読んだことのない物語そのものなのかもしれないな」
「そうかも…そうかも…」赤葉はルティエを見つめた。「この船に乗ったのは、他に何か理由があるの?」
ルティエはしばらく沈黙し、答えを考えているようだった。ノートの表紙を指で軽く叩き、一瞬鋭い光が目に宿ったが、すぐにいつもの穏やかな表情に戻った。
「どういう意味だ?」彼はニヤリと笑った。「俺に何か下心があるとでも思ってるのか?」
赤葉はすぐには答えなかった。彼はただ首を傾げただけで、その視線はまるで相手の思考を見透かすかのようだった。
ルティエはかすかに微笑み、ノートを閉じた。「まあ、そんな目で見る必要はない。隠すつもりはないから。」彼は伸びをしてから、両手を膝に置いた。「実は、特に目的地はないんだ。ただ、この船が遠くまで行くから乗っただけさ。」
「遠くまで?」赤ずきんは眉を上げた。
「ああ。」ルティエは肘掛けを軽く叩いた。「旅が好きなんだ。何か特定のものを探しているわけではなく、ただ…旅をしたい。まだ見たことのない場所へ行き、まだ会ったことのない人々と出会いたい。どの旅にも物語があり、僕は放浪者であり、そうした物語を集める作家なんだ。」
彼は少し間を置いてから、赤ずきんの方を向いた。「君は?この船に乗った理由は?」
赤ずきんはすぐには答えなかった。彼の視線は窓の外の月明かりに反射する水面に注がれ、さざ波の中に答えを探しているかのようだった。
そして、彼は静かに微笑んだ。
「君と同じように、僕も旅人なんだ。」
「どこへ行くつもりなんだ?」ルティエは赤鶴に尋ねた。「ああ、ただ新しい場所へ行くだけ。どうせ5分で着くよ。」
ルティエは驚いたように瞬きをした。「そんなに早く?もっと遠くまで行くのかと思ったよ。」
赤鶴は肩をすくめた。「ええ、そうだけど、今はちょっと。」
ルティエはくすりと笑った。「なんて楽しい旅の仕方だろう。目的もなく、決まった目的地もなく、ただ行きたくなったら止まるだけ。」
赤鶴は何も言わず、静かに窓の外を見つめていた。月明かりはまだ水面に反射していたが、遠くの川岸が次第にはっきりと見えてきた。駅がもうすぐそこに見えた。
拡声器から車内にけたたましいアナウンスが響き渡り、乗務員の単調な声が流れた。
「次の駅は099番駅です。乗客の皆様、手荷物をご用意の上、切符の確認にお進みください。」
赤和葉は立ち上がり、ロボットと荷物を手に取った。「そろそろ行かなくちゃ。」
ルティエは彼を見つめ、かすかに微笑んだ。「また会えるだろうな。」
赤和葉は少し間を置いてから、小さく笑った。「そうかもしれない。」
車両のドアが開き、冷たい夜の空気が流れ込んだ。赤和葉は列車から降り、薄暗い駅の灯りにそのシルエットが溶け込んだ。ルティエは座ったまま彼を見つめ、静かにノートを開いて、もう一行書き加えた。
<♤♤♤>
「ふむ、ここだろう…」
赤鶴は身をかがめ、隠された鉄扉を曲げて通路を開いた。
トンネルをしばらく進むと、思いがけず巡回中のロボット2体に遭遇した。
「ピーピー、侵入者探知」右側のロボットが警告を発した。
しかし、ロボットたちが行動を起こす前に、「イズモ!」<斬!>ロボットは真っ二つに切り裂かれた。
赤鶴は閉じた目の模様が刻まれた刀を鞘に収めた。
「おい、歩けるか、ウルティマ?」
彼はウルティマと名付けたロボットに尋ねた。つい先ほど修理と部品交換を終えたばかりだった。
「幸い、廃品置き場を通ったから、修理に使える部品がいくつかある」
赤鶴は冷たい壁に手を置き、魔法の知覚で周囲の空間をスキャンし、目に見えない魔力の波動を放った。
「あと3体来る」
「戦闘準備、ウルティマ。」
その命令を聞き、ロボットの両腕は二門の重砲へと変形した。
トンネルの奥から、さらに三体のロボットのシルエットが近づいてきた。
赤津葉は足を踏み鳴らし、驚異的なスピードで前進した。
00:00'00'01
彼は二体のロボットを真っ二つに斬り裂いた。
00:00'00'02
残りの一体は素早く反応し、数発の銃弾を放った。
赤津葉は超人的な敏捷性を持ち、顔からわずか2cmの距離をかすめる弾丸も一発も命中させなかった。
[シュッ!]
00:00'00'03
彼は剣を回して土を払い落とし、鞘に収めた。
「よし、続けよう。」
ロボットは他に何もする必要がないと判断し、腕を元の形に戻した。
彼らは少し進み、道が二手に分かれる地点で立ち止まった。
「じゃあ、分かれて進もう。君は左、僕は右だ。」
彼はロボットの背中を軽く叩いた。「あまり心配しなくていい。君は改造されているから、中の奴らを相手にできるはずだ。」
「分かった。」彼は左へ曲がった。
ウルティマは頷き、右へ曲がった。
「報告、未確認物体探知。」
3歩進むと、さらに5体のロボットに遭遇した。おそらく、先ほどの3体からの警報を受け取ったのだろう。
「排除せよ。」
5体すべてが腕を上げた。それらは汎用機関銃(GPMG)に変形していた。トンネルの暗闇が突然明るく照らされ、片側は銃身から放たれる光で燃え上がり、もう片側は無傷の装甲に命中する弾丸の衝撃で照らされた。
「焼き尽くせ」ウルティマは低く機械的な声で言った。
ウルティマの腕が分離し、火炎放射器が現れた。
【ドーン!】
「おや、赤葉はロボットの組み立て方を知っているようだな」
ウルティマは振り返り、声の主を探した。
「スキャン開始、識別、物体は固定形状なし」
ウルティマの前には、細長い鋼鉄の断片がロボットの形に再構成され始めていた。
ウルティマの前には、細長い鋼鉄の断片がロボットの形に再構成され始めていた。
「少しお話でもしましょうか」
第17章 終わり




