第90章 アイドル
カズマサ『う…うぅ…結局…フィディオと寝てしまったか…まぁ…本当に寝ただけなんだが…』
フィディオ『ZZZ…』
カズマサ『可愛い寝顔だが…仕事に戻らなくてはな…』
翌朝…
目を覚まさないフィディオをベッドに残したカズマサは魔王としての仕事へ戻る事となり
飛龍にてブラドゥークへと向かっていた。
これにはとある理由があり
始まりの街へと到着した魔王は
挨拶代わりに火炎弾を放っていた。
ユキ『きゃあああっ!!』
隣の壁を破壊され思わず泣き叫ぶ冒険者の少女
1歩間違えればロードリッチーの時のように真っ二つになっていたが
無論…彼に当てるつもりは無く
それを見たギルドのアイドルは得意の霧魔法にて視界を奪っていた。
カズマサ『愚かなり!そんな小細工でこの魔王から逃げきれると思うか小娘!』
アサミ『きゃあああっ!』
一見すると魔王に捕まった少女が悲鳴をあげているように見えたが
霧でよく見えないのをいいことにアサミは天界へと続くゲートを発動しており
2人は天界へと移動していた。
任期終了を控えた魔王に対して
彼をスカウトしたアサミとしては色々と想うところがあり
アサミはそんなカズマサを天界へと連れていくべく
今回の茶番を提案していた。
カズマサ『麻美ちゃん…この茶番必要だったの…?』
アサミ『ホルス君には話してあるから大丈夫だけど…これで魔王に拐われたお姫様を助ける勇者の構図が出来るでしょ?』
カズマサ『さすがとしか言いようがない…』
アサミ『たまにはお互い立場を忘れてお散歩でもしましょう!あっ!真理には内緒にしてよね?』
天界で散歩を楽しむ2人
彼女の言葉に一瞬先日の恐怖がフラッシュバックするカズマサだったが
さすがのマリーも天界までの移動手段は無く
彼は憧れのアイドルとのデートに胸を踊らせていた。
カズマサ『不思議だな…俺なんて…麻美ちゃんを応援してた3000人の中の1人だったのに…』
アサミ『不思議じゃないよ…私だって…アイドルになる前は普通の女の子だったし…女神になる前は普通のアイドルだったもん…』
カズマサ『それ…普通ではないよね…?』
アサミ『それを言うなら貴方だって特別だよ…お互いに変わった考えを持っていたから…こうして巡り会えたんだ…』
進むべき道は違うが良く似ている2人
カズマサが理想の悪役像を持っているならば
アサミは理想のヒロイン像を持っており
承認欲求が強いところも共通していた。
彼が麻美に抱いてる憧れは今も色褪せる事なく残っていたが
その恋路は絶対に交わる事のない平行線であり
それは彼自身が一番良く理解していた。
アサミ『カズ君…手を握っても大丈夫…?』
カズマサ『えっ…?でも…』
アサミ『大丈夫…これくらいならマリーも許してくれるよ…』
アサミの誘惑に負け手を握り会う2人
ダメだとわかっていても彼の心拍数はどんどん上がっていき
それを察した彼女は
呆れた様子で笑っていた。
アサミ『全く…興奮し過ぎだよ…せっかく色々聞こうと思ったのに…これじゃ判別出来ないじゃん?』
カズマサ『判別…?』
アサミ『そう…女神式読心術…こうやって心拍数を感じながらお話したら本音かどうかわかるでしょ?』
カズマサ『そりゃ俺には効かないさ…俺はこの世界に来てからドキドキしっぱなしだからな…常に測定不能だよ…』
彼が魔王として生きてきた8年…
その心が落ち着いた事など1度も無く
間違いなく元の世界で暮らしていた時よりも充実した生活を送っていた。
彼がこの世界を気に入ってくれた事は女神として何よりも嬉しい事であり
そんな彼を魔王として導いた女神は
最大限の感謝を込めてその手を握っていた。
アサミ『ありがとね…私達の世界を救ってくれて…』
カズマサ『この世界を救ったのは俺じゃないよ…監視対象だったはずの人間達が成長して奇跡を起こしたんだ…そして人間達を育てたのは女神である麻美ちゃんだよ!』
アサミ『そうかな…そうだといいな…』
彼女の礼に対して自分は何もしていないと語るカズマサ
女神としての自信を失っていた彼女は彼の言葉から勇気を貰う事となり
天空の散歩を楽しんでいた2人は
水エリアと風エリアの境で
1人の少女と出会う事となった。




