第9章 武闘家の少女マヤ
マヤ「(ベスト4まで来た…今の私なら…きっと勝てるよね…)」
控え室にて精神統一をする武闘家の少女マヤ…
客席で試合を観戦していたはずのマリーが姿を消したのは彼女に会う為であり
マリーの気配を察したマヤは咄嗟に振り返った。
マヤ「誰!?」
マリー「試合前にごめんなさい…貴女にお話があって来ました…」
マヤ「話…ですか…?」
マリー「準決勝…棄権してください…」
初対面のマヤに対していきなり試合を棄権するよう話すマリー
天使の眼で試合を見ていた彼女はこの後起きるであろう惨劇を察しており
それはマヤ本人も薄々気づいていた。
マヤ「どうして…試合はやってみないとわからないよ?」
マリー「貴女の2回戦の相手…素人目にはわからないかもしれませんがわざと敗けていました…恐らく貴女を準決勝の相手…バロンと対戦させる為です…」
地獄の番人バロン
マヤの対戦相手である男は200cmの巨体を持つ囚人であり
緊急事態やイベントの時のみ姿を現す恐るべき男だった
囚人でありながらも囚人達を監視する立場にある彼は、自らの欲望の為にマヤの対戦相手を操作させており
試合が始まれば大勢の観客が見守る中で、可憐な少女の公開処刑が決行されるのは間違いなかった。
マヤ「ありがとう…でも私…この壁を乗り越えなきゃいけないから…」
マリー「……」
マリーの言葉も虚しくフィールドへと向かうマヤ
フィールドでは凶悪そうなスキルヘッドの男が彼女を待ち構えており
試合が始まると
マリーは客席へと戻ってきた。
カズマサ「どこ行ってたんだ…?」
マリー「ちょっとお花を摘みに行ってました…」
カズマサ「昭和のアイドルかよ!」
マリー「魔王様!今は試合に集中しましょう!」
試合序盤…
マヤは長い脚を活かした蹴りを必死に放っていき
その攻撃は確実にヒットしていた
圧倒的な体格差ではあるものの
技とスピードでは完全にマヤがバロンを上回っており
一見するとマヤが有利に試合を運んでいるようにも見えた。
マヤ「(これだけ攻撃を当ててるのに…どうして…?)」
バロン「所詮女だな…そんな細い脚でいくら蹴っても効かぬわ!」
マヤ「女だからって馬鹿にしないでよ!これならどう!?」
バロン「!!?」
打撃では倒せないと判断したマヤは、バロンの囚人服を掴んでその巨体の下に潜り込み
その小さな身体で見事な背負い投げを決めた
カズマサは彼女の背負い投げを柔道の大会で見た事があり
彼の中の記憶と完全に一致した。
カズマサ「坂川真矢…彼女も元は俺と同じ世界の人間だ…」
マリー「え…?」
カズマサ「歳は1つ上だけど…柔道の大会で見た事がある…でも…」
坂川真矢
カズマサは彼女が最後に参加した大会を会場で見ており
その大会が原因で彼女は柔道を引退…前任の女神によってこの世界へと転生していた。
マリー「トランスジェンダー…ですか…?」
カズマサ「あぁ…彼女は柔道の大会で性転換した元男と試合して惨敗し選手生命を断たれたんだ…」
マリー「そんな…」
カズマサ「酷い試合だったよ…」
最後の大会…
真矢の対戦相手は圧倒的な力で彼女を蹂躙するとその細い首を絞め技で捉え
カズマサの目の前で絞め落とした
絞め落とされた真矢は、大勢のギャラリーが見る中で失禁してしまい
それが原因で選手生命を断たれていた。
マヤ「きゃあああっ!!」
カズマサ「坂川さん!!」
渾身の背負い投げから立ち上がったバロンはマヤの足を掴んで地面へと叩きつけ
彼女のマウントを奪うとそのまま強烈なパンチが襲いかかった。
マヤ「う…うぅ…」
パンチから逃れようと何とか体制をうつ伏せになるマヤ…
だがそれは彼女が最も苦手とする攻撃への最短ルートであり
次の瞬間
マヤの細い首をバロンの豪腕が絞めあげていた。
マヤ「うあああああっ!!!」
そのまま立ち上がり
マヤを首釣り状態にするバロン
あまりの苦しさに彼女は真っ青な顔で絶叫し
その目には涙を浮かべていた
マヤ「(私…また負けちゃうの…?異世界にきてあんなに修行したのに…男には勝てないの…?)」
心が折れタップするマヤ…
その時点で試合は終了するはずだったが
バロンは失神した彼女の首をそのまま絞め続け
それを見ていたカズマサとマリーは、怒りのままにフィールドに乱入した
マリーによってカズマサを巻いていた鎖は解除されており
彼は圧倒的な力でマヤを解放し
バロンを壁へと投げ飛ばした。
カズマサ「囚人風情が…よくも俺の憧れの人を傷つけてくれたな!!」
バロン「お…お前は一体!?」
カズマサ「俺は爆炎の騎士テスタロッサだ!!始めようぜ!!決勝戦をよぉっ!!」
あえて剣を使わず投げ技でバロンを血祭りにあげるカズマサ
止めに入った王国の兵士達にも彼の攻撃は炸裂し
怒りのままに暴れ回った結果
武術大会は無効試合となってしまった。
カズマサ「よく聴け兵士ども!お前らなんで俺を止めに来たくせにタップしたマヤを助けなかった!!ルールある大会を運営するなら一貫性を持ちやがれ!!」
マリー「落ち着いてください!!これ以上暴れては死人が出てしまいます!!」
カズマサ「抽選も不正だらけだ!最初からサーベラスとバロンが決勝で当たるような筋書きだったんだろう!!?こんな国俺が…」
サーベラス「すまなかった…テスタロッサ殿…全部君の言う通りだ…」
カズマサ「サーベラス…」
サーベラス「女神マミに誓って…この国の騎士団長として謝罪したい…」
バロンに対する以上の怒りを兵士にぶつけるカズマサ…
そんな彼を止めたのはサーベラスによる心からの謝罪であり
それを聞いたカズマサは魔剣を納めていた。
傷ついたマヤはマリーの回復魔法によって応急処置をされており
まだ意識は戻って無かったが
カズマサは彼女の目が覚める前にこの国を去る事にした。
マリー「マヤさんの脚の震え…その日の後遺症で男性恐怖症になっていたのですね…でもどうして武術大会に…」
カズマサ「後遺症を乗り越える為だろう…彼女は自分自身と闘っているんだ…同じ武術家として尊敬する人だよ…」
マリー「あれ…魔王様…柔道部では受け身の練習しかして無かったのでは?同じ武術家だなんて…彼女に失礼ですよ!」
カズマサ「うぐっ…」
マリー「でも…武術大会での魔王様はカッコ良かったですよ!少し見直しました!」
ブラスターの戦力の把握
サーベラスやマヤとの出会い
カズマサが武術大会で得たものはたくさんあったが
彼にとって一番の収穫はマリーとの距離が縮まった事なのかもしれなかった。
10章は本日16時~17時に更新します。




