家族
僕が気がついたのはマリの隣のベッドの上だった。どうやら、あのまま意識を失って倒れたらしい。僕はとどかないのはわかっていたが右手を精一杯彼女のほうに伸ばしてみた。すると、やわらかくあたたかいものが手に触れた。
「レイ、ありがとう。」
マリの声がした。意識が戻ったらしい。
「ずっと、忘れていてごめん。」
僕はうれしさと恥ずかしさで泣いていた。
「ねえ、いつの私なら家族になれるかな?」
「どの時代でも。見た目は関係ない。」
僕たちは、そのまま手をつないで再び寝てしまった。
あれから、8年。僕は今もマリと一緒に暮らしている。息子のオムツ替えに炊事洗濯。いわゆる主夫ってやつ。妻のマリは仕事に復帰している。宇宙探査用のロボット開発を大学の研究室で夜遅くまでやっている。家庭を知らないあいつに主婦は無理だからな。
ぼくらはずっと一緒に暮らしたが、最近まで結婚を意識したことはなかった。居て当たり前。そんな兄弟でも恋人でもない関係が続いていた。マリは綺麗だったが、家庭的というわけではなかったし、男を拒絶するような雰囲気がいつも漂っていたからだ。
「改名する。」
あいつがそう言い出した。学外の研究者に会うのにミズタマリという名前はさすがにきつい。
夜中中、色々二人で考えて、明け方近くに
「いっそ、アスカマリにしたら。」
僕はついぼそって言ってしまった。
「それって、プロポーズ?私、家事何にもできないよ。そんな娘、だめでしょ。」
「いいよ。家事は僕がやる。もともとなんちゃって教員なんだから。」
実際小学校の教員なんてブラック企業さながらな過酷さだったから。




