031:いつか王子様が…
「マリー様、少々お時間を頂きたいのですが?」
珍しく、執務室の方にやってきた、女官長が、相談を持ちかけてきた。
「え?ああ~今、良いわよ、どうかした?」
ちょうど、仕事も一段落して宰相と、近衛将軍の3人で、お茶にしようとしたところだったので、女官長も交えて、少し長めの休憩を取ることにした。
そこで最近、女官長が、困っている事態を聞かされたのだが…
「マリー様、今後ですが、後宮はどういたしましょう?」
「は?どうもこうも、今、閉めているんでしょ?」
「はい、閉めておりますが…」
「じゃあ良いじゃない、そのままで!」
「いえ、そうも言ってはおれません、そもそも後宮は国王様のご寵愛の方が入られるだけの場所ではなく、国内の貴族や裕福な市民の子女が行儀見習いとして入ってくる場所でもあるのです。」
「え~じゃあ何?国内の貴族や裕福な市民が、自分の娘でも後宮に入れろって、言ってきてるの?」
「ええ~まあ~そんなところで…」
「じゃあ、入れてあげればいいじゃない?人手も出来るし躾けてあげれば?
ちゃんと働いてくれるならお給料出すし…」
「はあ…本当に宜しいんですか?」
「女官長殿、入ってくる娘御達に、何か問題があるのかね?」
困惑している私を助けるためか、それまで黙って話を聞いていた宰相が、女官長に質問をぶつけた。
「はあ…娘御達は、それなりにしか問題はないのですが、ご子息達には問題がありまして…」
「「「はぁ~~~~~?ご子息ぅ~~~~~~?」」」
あまりのことに、宰相と近衛将軍と私の裏返った声がハモった!
「ばっ、馬鹿なっ!子息に何の行儀が必要じゃ!!」
「し、し、子息達って何人もかい?」
「何で男?だって後宮でしょ?女の園でしょう!?」
私たちが、パニックに陥っている横で、何故か諦観した感じの女官長が、
「ええ、ですが法務大臣に調べていただいた結果、後宮大典には
<<後宮へ上がる行儀見習いの者は、貴族や身元の確かな子女である事>>
とだけ書かれておりまして、女性に限るとは書いておりません…」
「「「・・・・・・・・・」」」
「と、取りあえず、その人達の身元は確かなの?」
「ええ~それは確かです。書類でも確認しましたし…」
「書類って、そんなものあるの?あったら見せて!」
「それでは、こちらをご覧下さい。」
そう言って、女官長から渡された、分厚い書類…
開いてみたら…住所・氏名・年齢・特技etc…
これは履歴書?
しかし、何これ!
ご息女は、まだ分かるよ~
年齢も14~18歳くらいだし、行儀見習いっぽいしね。
でも…このご子息達何?
年齢22~38歳…
おかしいでしょ?この歳で行儀見習いなんてっ!!!!
それを見た近衛将軍が、思わせぶりに…
「ああ!狙ってるんじゃないですか?あなたの隣…」
「は?隣?」
「だから~~神様の覚えも良く、素晴らしい賜り物を頂くような、国王様の近くに自分の息子なり孫なりを侍らせて、あわよくば寵愛をえて、王婿にしたいって!」
「じょ、じょ、じょ、冗談でしょ~~~!他は、どうか知らないけど、
【ボク、38歳♡でも無職】なんて言う旦那いらないわよっ!!!」
「「「ま、そうでしょうね~」」」




