次代傭兵団長は決意をたてる。
久しぶりですみません(泣)
ミラ、どうすればお前と肩を並べて生きられるんだ。
俺はカササダ竜騎兵団の正装のマントを身に着けながらつぶやいた。
夜会で自国の王太女キヌータエ殿下を護衛するためだ。
竜騎兵団の紋章のついたブローチで肩口でマントをとめる。
扉が勢いよく開いた。
「セラワスト、今宵はミラルーシェとパリラード王太子殿下の婚約発表会だそうだぞ。」
遠慮会釈なくキヌータエ王太女殿下が入ってきた。
「声くらいかけてください。」
オレはため息をつきながら髪を整えた。
「何を今更、お前と私の仲ではないか。」
キヌータエ王太女殿下がポンと肩を叩いた。
「もし、まだ着替え中ならどうするんだ、キヌータエ。」
オレは口調を変えた。
キヌータエとオレは歳が近い叔母甥の関係で仲が良い。
竜の卵に選ばれた時期も一緒で王都の竜騎兵団の方で一緒に訓練した中だ。
「今更お前の裸など見てもおどろかない。」
平然とキヌータエは腕組みした。
まあ上半身裸で団員どもは訓練したりするしな、さすがにミラとか女騎士たちはぬがんが…。
「婚約発表会。」
オレはやはりそうなのかとつぶやいた。
なんとなくそんな気がしていた。
「いいのか、セラ、ミラを幼馴染みと言うだけの男に渡して?」
キヌータエが意地悪そうな顔をした。
「どうしようもない。」
こうなれば相手は大国チエアイス武王国の王太子だぞ、オレは…単なる傭兵団の次代団長でしかない。
オレは拳を握りしめた。
「諦めるのか?」
キヌータエがニヤリとした。
「諦めざる得ないだろう!」
オレはむっと来て扉に向けて拳をつきだした。
途端に扉があいた。
「ひゃあん。」
シルファ嬢が鼻先で止まった拳の前で固まる。
「す、すまん。」
オレは慌てて拳を戻した。
「おい、私の愛しいシルファを怯えさせるな。」
キヌータエが固まったシルファ嬢の腰を抱き寄せた。
そう言いながらシルファ嬢が抱えていたものを受け取る。
「なんだそれは?」
オレはキヌータエの手元を見た。
「お前は一応アイルパーン竜騎国の王弟の息子で王族だ。」
キヌータエがそういってアイルパーン竜騎国の国章の入った箱をオレの前に出した。
「どういう意味だ。」
オレは受け取るのをためらった。
「カササダ竜騎兵団の次代団長には高嶺の花となってしまったミラでもアイルパーン竜騎国の王太子であれば手に入ることもできよう。」
キヌータエが無理矢理箱を押し付けた。
開けろと無言の圧力を感じる。
箱を開けると咆哮をあげる竜が浮き彫りになった神聖白銀のブローチが鎮座していた。
「こ、これは王太子のブローチじゃないか。」
オレはたじろいだ。
「お前に自分の人生をかける覚悟があるならばこれをつけて私の代役として夜会に出るがいい。」
キヌータエが挑発的な眼差しでいった。
つまり…ミラを手に入れるためにオレに次代団長としての立場を捨てろといっているのか?
今まで…オレはカササダ竜騎兵団の団長になることしか目標にしていなかった。
そしてその隣にはいつも…いつもミラが…ミラルーシェ・ハミルトンがいた。
「お前が諦めるならミラはあの肉食王太子のモノになる。」
キヌータエが淡々といった。
シルファ嬢が息を詰めて見つめているのがわかった。
オレは…オレがカササダ竜騎兵団長になる時は…。
隣にミラがいてほしい!
「キヌータエ、外交官はどうする?」
オレは素早くマントをぬいだ。
王族の正装をするのならば急がないといけない。
「もともとお前に王太子をさせたい奴を選んでいるから大丈夫だ。」
キヌータエがニヤリと笑った。
「そうか。」
オレはそういいながら上着のボタンを外し終えた。
続いてシャツのボタンを外す。
「あ、あの。」
シルファ嬢が真っ赤になって顔を覆った。
「まったく、シルファは純情可憐だな。」
キヌータエがシルファ嬢の額に口付けた。
「キヌータエ様。」
シルファ嬢がますます赤くなった。
「いちゃつくならほかでやってくれ。」
オレは容赦なくズボンに手をかけた。
「それは出るまで待て…セラワスト。」
キヌータエがオレを真剣な眼差しでみた。
「なんだ、早く言え。」
オレは苛立たしく上着をぬいだ。
きゃあんとシルファ嬢がキヌータエの肩に顔を伏せる。
「王太子の代役としてでればお前に間違えなく議会がその重責を押し付けてくるだろう、それでも受けるのだな。」
キヌータエが宣告するように重々しく言った。
一瞬だけ考える…。
だが浮かぶのは…やはりミラの顔だけだ。
後悔するかどうかなんてわからない。
隣にミラがいれば…背後にミラがいれば乗り越えられる!
「オレはやる。」
しっかりとキヌータエを見据えて言った。
「そうか…シルファいこう。」
キヌータエが一瞬オレを見据えてから微笑んでシルファ嬢の肩を抱いて立ち上がった。
頑張るが良いとヒラヒラとあいている方で手を振ってキヌータエはシルファ嬢を甘くエスコートしながら去っていった。
もしかしてオレははめられたのだろうか?
……だがいい、ミラが手に入るのなら。
幼なじみの王太子などに負けるつもりはない。
だが…もしミラがあの王太子が好きなら…。
いや、嫌っていたじゃないか。
不安を振り払うようにシャツをぬいだ。
いざとなれば竜でミラと逃げようと思いながら。
ミラはオレの片翼だ。
ミラとならばどこまでも行ける。
この世界の果てにあるという歪邪の島ルトシルまでも…。
駄文を読んでいただきありがとうございます♪
とりあえずつぎいつかわからないので完結設定に(泣)申し訳ありません(泣)