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攻略対象に転生した俺がヒロインを落とすはずだったのに、気づけば俺の方が落ちていた件。  作者: 続けて 次郎


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第六章 ヒロイン、全方向フルスイング

嫌な予感は、だいたい当たる。


翌日の放課後、俺は訓練場の端でその光景を目撃していた。


「カイルさんって、いつも何読んでるんですか?」


図書室の寡黙天才、カイル・ノクスに、アリスが話しかけている。


「……魔導理論だ」


「うわ難しそう! でもちょっと見せてください!」


ぐいっと距離を詰める。


近い。物理的に近い。


カイルがわずかに身を引くが、拒絶はしない。

むしろ説明を始めている。


「この式は魔力の流動を——」


「へえええ! 水道みたい!」


例えが雑。


だがカイルは、ほんの少しだけ口元を緩めた。


俺は遠目にそれを見ながら、静かに悟る。


「……全方向に行ってるな」


アリスは、王子アークとも普通に笑い合い、

生徒会長セシルとも臆せず会話し、

ミレイユとも即日で友達になっていた。


攻略対象四人、全員に対して距離がゼロ。


これ、原作より攻略速度早くない?


「何を睨んでいる」


背後から声。


振り向くとセシルがいた。


「睨んでいない」


「そうか。だが、視線が鋭い」


……バレてる。


セシルは視線の先——アリスとカイルを見る。


「彼女は面白いな」


「……そうか」


「誰に対しても壁を作らない」


淡々とした声。


「君とは正反対だ、レオン」


胸に刺さる。


確かに俺は、元々孤高キャラ設定だ。

今でこそ多少社交的に振る舞っているが、内面はまだ慎重だ。


だがアリスは違う。

身分差も、空気も、距離も、全部無視する。


「羨ましいか?」


セシルが微笑む。


「……別に」


即答。


だがほんの一瞬、迷いがあった。



その日の夕方。


俺は中庭でアリスに呼び止められた。


「レオンさん!」


振り向く。


夕陽が彼女の髪を染めていた。


「今日、剣術の授業見ました!」


「……そうか」


「すごかったです! なんであんなに強いんですか?」


純粋な目。


原作だとここ、ヒロインが“憧れ”を抱くイベント。


「努力だ」


クールに答える。


「努力であれは無理です!」


即否定。


「天才ですよね?」


……痛いところを突くな。


俺は少しだけ視線を逸らした。


「才能があっても、孤独では意味がない」


ぽつりと、原作レオンの台詞が口をついて出た。


あれ?


なんで俺こんなこと言ってる?


アリスは、少し驚いた顔をした。


「孤独、なんですか?」


「……いや」


否定しかけて、止まる。


前世の俺は、確かに孤独だった。

この世界に来て、初めて誰かと肩を並べている気がする。


アリスはしばらく俺を見つめ、それから笑った。


「じゃあ、私が友達第一号ですね!」


宣言。


「……勝手に決めるな」


「もう決めました!」


なんだこの押しの強さ。


だが、胸の奥がじんわり温かい。


「レオンさんって、笑うと絶対かっこいいですよね」


突然の爆弾。


「……笑っていない」


「今ちょっと笑いました!」


近い。距離が近い。


俺の心拍数が上がる。


これ逆攻略されてないか?


「明日も話してくださいね!」


そう言って走り去るアリス。


夕陽の中、ポニーテールが揺れる。


俺はその背中を見送りながら、深く息を吐いた。


「……計算外だ」


原作知識はある。


イベントも、好感度も、ルート分岐も把握している。


だが。


このアリスは、原作通りに動かない。


誰か一人に依存しない。

誰か一人だけを特別にしない。


全員に全力。


それはつまり——


「全員が本気になる可能性があるってことか」


背後で足音。


アークが隣に立った。


「随分と仲が良いな」


「普通だ」


「へえ」


にこやかだが、目が笑っていない。


あ、これ恋愛戦争フラグでは?


物語はまだ序盤。


だが空気は、少しずつ変わっている。


ヒロインは攻略される存在ではない。


彼女は、全力で世界を巻き込む存在だ。


そして俺は、ようやく気づき始めていた。


——本当に攻略したいのは、誰なんだ?

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