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攻略対象に転生した俺がヒロインを落とすはずだったのに、気づけば俺の方が落ちていた件。  作者: 続けて 次郎


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第十三章 選択の夜、崩れる運命

学園創立祭。


それが、決戦の舞台になった。


原作ではこの夜、ヒロインは誰か一人とダンスを踊り、ルートが確定する。


つまり——分岐点。


大広間は煌びやかな光に包まれていた。

シャンデリア、楽団、色とりどりのドレス。


アリスは、淡い水色のドレスを着ていた。


「似合っている」


思わず口に出た。


「……ありがとうございます」


少し照れた笑顔。


だが、その周囲には。


アーク。

セシル。

カイル。

ミレイユ。


完全包囲。


「さて」


セシルが優雅に言う。


「順番はどうする?」


順番制!?


アリスが慌てる。


「ちょ、ちょっと待ってください!」


だが音楽が流れ始める。


物語の強制力。


“最初に手を差し出した者”が、運命を掴む。


俺は深呼吸する。


迷いはない。


一歩、前へ。


「アリス」


手を差し出す。


その瞬間。


頭を貫く激痛。


視界が暗転する。


闇の中、声が響く。


――レオン・アルヴァレス。

――孤独なる天才。

――選ばれなければ、堕ちる。


違う。


俺は叫ぶ。


「俺は孤独じゃない!」


闇がひび割れる。


浮かぶ映像。


前世の俺。

一人でゲームをしていた夜。

画面越しに見ていたレオン。


「お前は、俺じゃない」


俺はレオンだ。


だが同時に、俺自身だ。


運命が書いたシナリオなんて。


「書き換える」


闇を掴み、引き裂く。


光が差し込む。



現実。


大広間。


俺は膝をついていた。


「レオンさん!」


アリスの声。


ざわめき。


アークが支えようとする。


だが俺は立ち上がる。


痛みは消えた。


代わりに、静かな確信がある。


「アリス」


もう一度、手を差し出す。


「俺と踊ってくれ」


静まり返る会場。


物語の強制力は、感じない。


今はただ、俺の意思。


アリスは、震える指で俺の手を取る。


「……はい」


音楽が始まる。


二人で踊る。


視線が絡む。


近い。


「大丈夫ですか?」


「問題ない」


むしろ、今までで一番クリアだ。


アリスが小さく笑う。


「私、ずっと考えてました」


ステップを踏みながら。


「皆素敵で、皆大事で」


知っている。


「でも」


彼女の目が、真っ直ぐ俺を見る。


「レオンさんといると、安心するんです」


胸が震える。


「ドキドキもするけど」


それは嬉しくない言い回しだな。


「ちゃんと、私を見てくれる」


俺は息を呑む。


「だから」


音楽が高まる。


「私、レオンさんが好きです」


世界が止まった。


音も、光も、全部遠くなる。


「……本当か」


情けない確認。


「はい」


笑顔。


涙が滲んでいる。


「選びました」


その言葉で、何かが完全に切れた。


鎖のようなものが、ぱきんと。


原作の強制力が、消えた。


会場がざわめく。


アークが苦笑する。


「負けたか」


セシルは楽しそうに拍手する。


「見事だ」


カイルは静かに頷く。


俺はアリスの手を握り返す。


「後悔させない」


「絶対後悔させません」


強い。


ヒロイン強い。


音楽が終わる。


拍手が起きる。


これは、原作にはないエンディング。


誰か一人が孤独になる物語じゃない。


俺は皆を見る。


「ありがとう」


本気で言う。


彼らがいたから、俺は選べた。


物語は、完全に書き換わった。


ヒロインを攻略する?


違う。


――俺たちは、選び合った。


アリスが俺を見上げる。


「これからも、一緒にいてくれますか?」


「当たり前だ」


即答。


「君がいれば、どんなルートでも進める」


彼女が笑う。


「それ、ずるいです」


俺も少し笑う。


――攻略対象に転生した俺がヒロインを落とすはずだったのに、気づけば俺の方が落ちていた件。


それでもいい。


だってこれは、俺たちの選んだ物語だから。

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