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攻略対象に転生した俺がヒロインを落とすはずだったのに、気づけば俺の方が落ちていた件。  作者: 続けて 次郎


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第十一章 好感度上限突破のお知らせ

翌日。


学園は平穏を装っていたが、空気は確実に張り詰めていた。


俺がアリスを公然と庇ったことで、構図がはっきりしたからだ。


「副会長は、編入生を特別扱いしている」


そんな噂が流れているらしい。


生徒会室の長机に肘をつきながら、俺はため息を吐いた。


「覚悟はしていた」


「本当に?」


向かいでアークが腕を組む。


「君は彼女を守った。それは称賛される行為だ。でも同時に、敵も作った」


「構わない」


即答だった。


セシルが静かにカップを置く。


「迷いが消えたな、レオン」


「……そうか」


「以前の君なら、“立場”を優先した」


否定できない。


副会長として、公平であるべきだった。


だが俺は、あの場でアリスを選んだ。


「物語は加速するぞ」


セシルの声は、予言のようだった。



その日の放課後。


俺は廊下で足を止めた。


窓際で、アリスが一人立っている。


「どうした」


声をかける。


「ちょっと考え事です」


珍しく、静かな顔。


「私、レオンさんに迷惑かけてませんか?」


「かけていない」


即答。


「でも、皆ちょっと怖い顔してました」


そりゃな。


攻略対象全員が本気モードに入ったからな。


「……俺が選んだことだ」


もう一度言う。


「だから気にするな」


アリスはじっと俺を見る。


「レオンさんって、強いですね」


「どこがだ」


「ちゃんと“選ぶ”ところ」


胸がざわつく。


「私は、まだ分からないです」


小さな声。


「皆大事で、皆素敵で……」


来た。


これ、ヒロイン特有の“全員好きで選べない”状態。


「でも」


彼女は続ける。


「レオンさんを見ると、胸がぎゅってなります」


止まった。


思考も時間も止まった。


「それって、何ですか?」


知らないのか。


いや、知っているだろ。


「……それは」


喉が乾く。


「恋だ」


言った。


言ってしまった。


アリスの目が大きく見開かれる。


数秒の沈黙。


そして。


「え、えええええ!?」


廊下に響く声。


やめろ。


「こ、恋!? 私が!?」


「落ち着け」


俺の方が落ち着いていない。


アリスは真っ赤になり、わたわたと両手を振る。


「そ、そんな、急に言われても!」


「聞かれたから答えただけだ」


事実だ。


だが心臓は爆発寸前。


「じゃあ、レオンさんは」


問い返される。


逃げ場はない。


「俺は」


深呼吸。


もう逃げない。


「君が好きだ」


静かに、しかしはっきりと。


空気が凍る。


遠くで誰かが本を落とす音がした。

……カイルか?


アリスは固まっている。


顔が真っ赤。


数秒、十秒。


やがて。


「ずるいです」


小さく呟いた。


「私、まだ分からないのに」


胸が少し痛む。


「だから待つ」


即答だった。


「君が答えを出すまで、待つ」


焦らない。


選ばせる。


それが俺の決意。


アリスは唇を噛み、そして笑った。


「……ありがとうございます」


その笑顔は、少し大人びていた。



だが、その夜。


再び頭に走る痛み。


闇に染まるレオンの映像。


“ヒロインを失う未来”。


「っ……!」


床に膝をつく。


息が荒い。


——物語の強制力が、強まっている。


俺がルートを逸脱したからか。


原作では、レオンは告白しない。


ヒロインに拒絶され、孤独を深め、闇へ落ちる。


今、俺はそれを壊した。


だから。


「修正しようとしてるのか……?」


ふざけるな。


俺は立ち上がる。


痛みは消えない。


だが。


「それでも」


俺は選ぶ。


原作のレオンじゃない。


“攻略対象”でもない。


ただの一人の男として。


アリスを、好きだと。


窓の外、月が高い。


物語は、クライマックスへ向かい始めている。


そして俺はまだ知らない。


この告白が、全攻略対象の本気スイッチを押したことを。

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