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第46話 『芽生えた自覚』

大変お待たせ致しました、第46話をお送りいたします。

まだ更新ペースが上がらず、申し訳ございません・・・



ガーディ邸に入って早々、管理人と名乗るマルの姿にアレイとミーリィが一頻り驚く事となったが、数日前に自分達も同じ事をしたリクとシルヴィアは、二人に『すぐに慣れるから』と笑顔でその背を押して屋敷へと入っていく。


一方で、一足先に屋敷に戻ったマルは既に用意をしていたらしい飲み物・・・温かい紅茶の入ったカップを四つと、ミルクや砂糖などを載せたトレイを手にし、リビングで一行を待っていた。


あらかじめ帰宅前に通信用魔具でリクが連絡をしていた為、馬車での帰宅する場合の凡その所要時間を計算して淹れていたのだろう。熱過ぎない程度に冷まされた紅茶は疲れた体に染み渡ることだろう。


リビングの大きなテーブルを囲むソファに四人は腰を下ろし、(ようや)く落ち着けると一斉に大きく息を吐く一同。リクとシルヴィアは並んで座り、アレイとミーリィがその対面につく形だ。



「本日は良い茶葉が手に入りましたので、紅茶をお持ちいたしました。ストレートでお淹れしておりますので・・・シルヴィア様はお手数ですが、お好みでミルクをお使い下さいませ」



客人であるアレイとミーリィの前に先にカップを置き、丁寧にお辞儀をしてからリク、シルヴィアの順にカップを置いてゆくマル。四人で腰掛けるには大きすぎるテーブルにシュガーポットとミルク、更には所狭しとクッキーなどの菓子が並べられる。



「・・・いや、大したものだ。我が家の使用人達も普段から良くやってくれているのだが、マルの働きは見事という他ないな。一流の腕だ」


「お褒めに預かり光栄であります。こうしてガーディ邸にお客様・・・リク様とシルヴィア様のご友人をお迎えでき・・・ワタクシ、大変嬉しく思います!」



少々過剰ではあるが、マルの見事な手際に伯爵家の貴族でもあるアレイが小さく唸る。


褒められたマルの方は、恐縮しつつも屋敷に久々に客人・・・それも主であるリクとシルヴィアの友人を招く事となった事を大変喜んでいた。


実際、ラルフやエリスは殆どこの家に人を招く事が無く、そもそも自分達もあまり滞在する事が無いので、マルとしては屋敷が人で賑わう事は長年の夢であったらしい。



「うう・・・体の中がやっと温まったぜ・・・マジで美味いな、この紅茶。お前ら毎日こんなの飲んでるのかよ?高価なんじゃねえのか、これ?」


「うーん?その辺は俺はよく分からないなあ・・・実際どうなんだ、マル?」



未だ寒気に襲われているらしいミーリィが温かい紅茶に心底生き返る、といった表情でふと湧いた疑問を口にする。


問いかけられた正面のリクは首を傾げ、マルの方へとその質問を投げる。ここに来て以来、買い物に一度行ったきりな上、そもそもリクはこの家・・・というより、自分達のお金の管理を一切していない。


財布及び預金はシルヴィアがしっかりと握っており、リクは自分達の資産がいくらあるのか全く把握していないのだ。


マルはその辺りの事情は伏せた上で、ミーリィの疑問に答えてゆく。



「この茶葉もそうですが、当ガーディ邸では食料品は特に妥協せず取り揃えるよう、奥様から仰せつかっておりますので、常に一級品を仕入れてございます」


「一応は私も値段は見てるんだけど・・・マルちゃん、ホントに妥協してくれなくって、結構なお金掛かっちゃってる・・・あまり贅沢なのはいけないって思うんだけど・・・ね」


「てか、お前もリクも平民だろ?どこにそんな金あるんだよ?」


「確かに不思議だな。家の事は兎も角、俺達の年齢ではそれ程収入など得られないだろう?貯蓄でもしていたのか?」



食料品関係については全て一級品を仕入れている、というマル。そして資金を管理しているシルヴィアが、まだ始まったばかりの王都生活の支出が多い事を口にする事でそれを肯定する。


これには二人が『田舎の村出身の平民』と聞いているミーリィとアレイが更に疑問を深める事になった。


自分達はまだ成人したての15歳であり、既に定職についている者も居るが、普通は自分の食い扶持を稼ぐ事もままならない・・・まだ親の庇護下にある事も多い、そんな懐事情の者が殆どだ。


そんな中、王都の広大な屋敷を借り受けて自分達だけで生活しているらしい雰囲気の二人は、一体どうやってそれを維持するつもりなのだろうか、と。



「ん?多分、今までの魔物討伐報酬で出してると思うけど。そうだろ?」


「うん。でも、幾らでもある訳じゃないんだからね?先々を考えて大事に使わなきゃダメなの。今までみたいにいっぱい依頼を受けたり出来ないと思うから」



もっともな疑問にリクは隣に座るシルヴィアに顔を向けると事も無げに投げ掛け、それにシルヴィアは苦笑しつつ答える。



「魔物討伐だと!?し、しかも報酬!?つまり、冒険者ギルドから正規の依頼を受け・・・それをこなしていた、という事か?」


「・・・あり得ねぇだろ・・・アタシ等の歳で魔物討伐の経験があるってだけでもイカレてるぜ!?・・・くしょんッ!!」



二人の何でもなさそうな会話に驚愕するアレイとミーリィ。


それもその筈。彼等は間違いなく今年度の受験生の中でも突出した実力者であるが、それでも魔物との実戦経験は無かったのだ。


アレイは騎士団見習いとなったものの、未だ討伐任務には随行も許されておらず、ミーリィも部族の狩りには散々参加していたものの、やはり魔物の討伐については留守番を言い渡されて来た。


魔物は想像を超える力を持ち、ヒヨッコが戦えるような相手ではない・・・そう言われ続けた脅威をリクとシルヴィアは既に討伐しているという。


それもシルヴィアは『いっぱい依頼を受けられない』と言ったのだ。それはつまり、二人は複数回に渡り討伐をこなしているという事に他ならない。


これで驚かない方がどうかしていると言うものだ。もっと話を聞きたいと思うアレイ達ではあるが・・・ミーリィのクシャミによって、彼女が風邪を引きかけている事を一同は思い出す。



「あー・・・こうなったら順を追ってちゃんと説明しなきゃなあ。でもその前に、ミーリィを早く風呂に入れないとマジで風邪引きそうだな。シル、女湯に案内頼むよ」


「うん、分かった。リっくんはアレイ君と一緒に男湯ね?ちゃんと汗流さないとダメだよ?」


「分かってるって。あ、マル。悪いけど、俺達風呂に先に入るから・・・四人分の食事の用意、頼んでいいかな?」


「かしこまりました。浴場の用意は整えてございますので、ごゆるりとお寛ぎ下さいませ。ワタクシ、久方ぶりに大いに腕を振るわせて頂きます!」



事ここに至っては、全部説明するしかない。そうリクは決意するが、今はミーリィの体を温める方が先決ではある。


クシャミが出た事で、思い出したかのように震え出したミーリィの事をシルヴィアに託し、自分はアレイと共に男湯に向かうよう逆にシルヴィアから言われる。


四人はそれぞれ男女別に分かれ、ガーディ邸の無駄に広い風呂場へと向かうのだった。



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ガーディ邸が誇る屋内岩風呂。マルとぷちマル達により、常時入浴が可能なよう清掃が行われている広すぎる浴場の女湯では、(ようや)くの思いで芯から体を温める事が出来たミーリィと、苦笑しつつ謝るシルヴィアとが並んで入浴していた。


すらりと伸びる長い脚を思いきり伸ばし、岩風呂の淵に後頭部を預けて仰向けにそのスレンダーな体を投げ出す人狼族(ウルブス)の少女。


一方、彼女よりは身長が低いものの、雪の如き白くきめ細やかな肌を湯に浸し、大きく実った双丘を両腕で抱えるようにしてリラックスする人族の少女。


デコボコな見た目の違いを気にする事も無く。そして互いに肌を隠すような事もせず、二人は疲れた体を癒すように、ただただお湯の温かさに身を委ねながら話す。



「あー・・・マジ生き返るわ・・・結構時間経ってるってのに、寒気が引かねぇのはホント参ったぜ・・・」


「やっぱり【氷結陣(コフィン)】は対人に使うのは危なかったね・・・ホントにごめんね、ミーリィ」


「ちょっと待てよ!だったら今までアレは何に使って来た魔法なんだよ!?」


「えーっと・・・その、魔物討伐に・・・ちょっと強力な相手にだけ、かなあ」


「・・・一応聞くけどよ?その魔物ってどの位の討伐難易度なんだよ?」


「・・・『A+ランク』以下の魔物には使った事ない、かな?うん、多分間違いな・・・」


「ふざけんな!?アタシみたいなか弱い獣人相手に街一つぶっ潰す魔物相手用の魔法使ったのかよ!?」



シルヴィアが今回ミーリィとの戦い・・・順位戦に勝利する為に行使した魔法は、師匠であるエリス直伝の【凍結系統:氷結陣(コフィン)】であった。


そもそも、魔法系統の【スキル】は常時発動型(パッシブ)ともいえる魔法の各系統の『才覚』とでも言うべきものさえ発現していれば、他者から魔力(マナ)の扱い方を学ぶ事でも魔法を習得する事が出来る。


シルヴィアの場合、これまでに【魔法:闇系統】以外の各系統の才覚は既に発現しており、水系統の発展形である凍結系統も12歳になる頃には扱えていた。


その頃にエリスから凍結系統を用いた完全拘束の為の魔力(マナ)の扱い方を教わり、彼女の持つ魔法である【氷結陣(コフィン)】を自身の【スキル】として発現するに至っている。


以来シルヴィアは、リクと共に数多くこなしてきた魔物討伐において・・・強敵への切り札の一つとして、この魔法を用いてきたのだった。


『ギド・スパイダー』を筆頭として、主に脅威度『A+ランク』以上に限定して来た筈、と本人が言うように使用回数は決して多くはないのだが。


兎も角。そんなとんでもない魔法を、通常より多く魔力(マナ)を注いで放たれたミーリィが思わず声を荒げるのも当然だろう・・・か弱いかどうかは別にしても、だ。



「ご、ごめんってば!?だって・・・その・・・絶対一番で合格するってリっくんと約束したから・・・あう」


「ったく・・・もういいよ、次はあんな無様な負け方はしないからな?・・・って、シルヴィア。アンタさ・・・」


「なに?どうかしたの?」


「観客席でも言ったけどさ。お節介を承知でもう一度言っとくぜ?・・・リクの事、好きなんだな?」


「ふえっ!?・・・・・あう、それは・・・その」



また謝りつつ、完全に気が緩んだのか・・・リクの事を普段通りに『リっくん』と呼ぶシルヴィアに、ミーリィは真面目な顔で昼間に言って聞かせたことをもう一度口にする。


途端に顔を真っ赤に染め、もごもごと何かを言いつつ半分以上顔を湯に沈めるシルヴィア。しかし、ミーリィは続けて真剣な声で語る。



「この際ちゃんと自覚しときな。この先、アイツにはかなりの女が群がってくるだろうぜ。何せ、ここは王都リスティア・・・それもアタシ達が通うのはあの『アカデミー』だ」


「・・・うん・・・」


「アレイみたいに貴族も何人か・・・下手すりゃ結構いる筈だ。そうなると、ぶっち切りで強いリクの事を狙う女は順位戦以上に増える。さっきも言ったけど、貴族の女なら尚更だ」



彼女の言うように、アカデミーには貴族の子弟・子女が多く在籍している。自分達新入生にもアレイの様に爵位をもった家の出身者がおり、更には上級生も学内には当然いる訳で・・・


自分の為、ひいては家の為に・・・とリクの力を取り込もうと言い寄る女性達の存在が増えるのは最早避けられないだろう。


それ程にリクは秀でた・・・逸脱した実力を示し、目立ってしまっていた。



「だから、自分がアイツのパートナーだって事を他の女にきっちり見せてかなきゃならねえ。その為にも、自分の気持ちをしっかり確認しときな」


「ミーリィ・・・」


「強い(オス)に惹かれるのはアタシ達女の(さが)みたいなもんさ。だからこそ、負けられねぇだろ?」


「うん・・・そうだよね。私は・・・ずっとずっと、リっくんの隣に居たい。リっくんの力になりたい・・・それだけは誰にも負けたくない!」


「・・・うん?・・・それは、ちょっと違くねぇか・・・?いや、間違っちゃいないけどさ・・・男女の恋愛の話はどうなんだよ?」


「・・・あうぅ・・・それはその・・・あの・・・恥ずかしいよぉ。まだ・・・その、早いんじゃないかなって・・・あう」


「ダメだこりゃ・・・」



ミーリィはずっとこれまで、シルヴィアとリクの恋愛についての心配事と、その対策を講じる様に諭していたつもりであった。だが、肝心のシルヴィアは少しズレて彼女の言葉を受けていたようで・・・


リクに言い寄る・・・即ち、彼のパートナーの座を狙う相手には絶対に負けない、と決意表明をした。これにはミーリィもポカンと口を開けて固まってしまった。


数秒、そのまま固まった彼女がぶんぶん、と大きく左右に頭を振り、再度シルヴィアに真意を問うと・・・


またしてもシルヴィアは真っ赤になって湯に沈んでいった。その姿にミーリィは右手で顔を押さえ、大きく溜息をつく。


しかし・・・シルヴィアは自分の中に芽生えた気持ちに全く気付いていない訳ではなかった。


幼い頃、ライラックの花園でリクと交わした約束。あの時の想いは彼女の中で一瞬たりとも色褪せる事なく、常に抱き続けている。


ただ、大人の入り口に立ち。今までは存在しなかった、彼に好意を持つかもしれない女性達が現れるであろう事態に・・・シルヴィアの気持ちに少なくない変化が起こっていたのだ。


それは、誰よりもリクの傍に立ち・・・誰よりも多くの時間を共に過ごして来たシルヴィアだからこそ抱く独占欲。そして、近すぎた故に見えていなかった・・・幼馴染の異性としての姿を意識した瞬間でもあった。


湯の中に完全に沈み、ぶくぶくと息を吐きだしながら・・・真っ赤な顔のシルヴィアは徐々にぐるぐると乱れ始めた思考の中、自分の『恋焦がれる想い』にほんの少し気付いたのだった。




私の文章では肌色成分を出す事は出来ませんでした。

次回でリクとアレイの肌色成分を出す事でお詫びを・・・いや、しません。


大型の台風がまたも接近中・・・でもきっと仕事は休みにはならない(涙)


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