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はじまり
大地を裂くような戦いに決着がつき、勝者となった者達は荒野に立ち尽くす。
長きに渡る悲願を達成した彼等の心中や如何に。
叫びたいような魂の歓喜?
恐怖に支配された時代を、自らの手で終わらせることが出来たのだ。当然とも言える。
だが、違う。
世界が砕けるような底無しの悲痛?
彼等はこの戦いで多くを失い、かけがえのない大切な仲間すらも失った。納得できる。
だが、違う。
彼等の思いはただ一つ。
それは『驚愕』。
皆が、信じられぬ、という思いで一人の男を見ていた。
皆が、口を揃えて言った。なんで。どうして。
男は寂しげな表情でゆっくりと皆に語った。
男の言葉に、皆は言葉を失った。その沈黙は、諦めに似た肯定だった。
全てを語り終え、去り行く男の背中を皆が哀しげに見送る。
いや……一人だけ、怒りに拳を震わせている。
その瓶底眼鏡の小柄な女性が、男の背に向かって叫んだ。
「認めねぇ、アチシは認めねぇぞ! オウマぁぁぁぁ!!!」
男は振り返ることは無かった。
これが男と彼等の今生の別れであった。
そして、150年の時が流れた……