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僕が異世界常駐でゲームのデバッグをさせられた件  作者: s_stein
第一章 異世界にもVRゲームがあった
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精霊がデバッグの助手を買って出た

 異世界ので作業が正当化されてしまっている以上、作業指示に無理難題がある、という理由でしか作業を断れなくなった。

 でも、現時点ではそのような理由がないので困っている。


 このまま作業を進めるか、もう少し議論してみるか、と逡巡していると、急にHMDの画面の中に小さな女の子が現れた。

 大きさ的には、視界の縦方向より少し低いくらいの背丈。

 よく見ると、アンジェリーナを小さくしたものだった。

 僕は、彼女の突然の登場に驚いて、危うく大声を上げそうになった。


「何書いているの?」

 彼女はそう言いながら、チャット画面の前に立って、こちらに背を向ける。

 どうも、彼女は画面にオーバーレイするように登場しているようだ。


 チャット画面の発言を読み終えた彼女が振り返り、顔を上向き斜め45度に傾ける。

「難しい話しているのね」

「それより、どうしてこの画面の中、ってかゲームの中に入り込めたの?」


 彼女はこちらに全身を向けて、首をちょっと(かし)げる。

「ん? 精霊の力をなめないでね」


 僕はHMDを外してみた。

 先ほどまでそばに座っていた彼女が消えている。

 ということは、このHMDの中に入り込んだのか?


 HMDの中をのぞいてみたが、その空間には彼女がいない。

 もう一度かぶってみる。

 彼女がこちらを見ている。


 いったいどうなっているのだ!?


「何しているの?」

「いや、君がどこにいるのかなって探していた」

 彼女はフフッと笑う。

「ここよ」


「式神が姿を現す前のお札みたいに、薄くなったのかなと」

「ペラペラの紙になんかならないわ」

「じゃ、どうやってそこにいるの?」

「まあ、……意識の中に入り込んだ、ってとこかな」

「マジですか……」

「他にもいろんなことができるの」


 彼女はそう言って、僕の胸の方に向かって飛びかかってきた。

 ぶつかるかと思って衝撃を覚悟したが、僕の体に吸い込まれるように消えた。

 すると、心の中から彼女の声がする。

「画面の前では邪魔になるから、ここにいさせてもらうわね」


「ここって、今どこ?」

「心の中よ」

「そんなところで画面が見えるの?」

「全部見えるわよ」

「怖っ……」


「ねえ、こんな作業指示とか難しいお話はいいから、ゲーム続けようよ」

「その前に、僕はこの人たちとお話をしている最中なの。終わったらね」

「もう終わっているじゃない」

 やられた。ほぼ正解だ。


「チャット手伝おうか?」

「えっ?」

「こんなの簡単よ」

「ええっ??」

「デバッグだって手伝えるよ」

「えええっ???」

「全部やってあげるよ。だから、ねえ、早くゲームやろうよ」


 彼女の突然の申し出に驚いた。

 デバッグの助手を買って出る精霊なんて、聞いたことがない。



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