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僕が異世界常駐でゲームのデバッグをさせられた件  作者: s_stein
第一章 異世界にもVRゲームがあった
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精霊の力、恐るべし

 最初は、アンジェリーナが何を言い出すのだろうと思ったが、よく考えると、僕的には十分魅力的な提案だ。

 正直なことを言うと、この異世界から逃げ出したい気持ちでいっぱいだが、僕が昼にプレイしていた『翼をあげるね』の外伝なら大いに興味があるし、この面白そうなVRゲームに、はまってみるのもいいかなと思い始めていたところだ。


 彼女が全面的に手伝ってくれるのなら、申し出を受けてもいい気持ちになってきた。


『DBT>じゃ、デバッグ始めます』

 えっ? いつの間にか発言しているし。

 僕は何もキーボードを触っていないのに、である。


 さては、彼女の仕業だな。

『やまだ>じゃ、お願いします』

 あんたは反応しなくていい。


「ねえ、君。勝手になりすましちゃ駄目じゃないか」

「へへーん」


 と突然、画面全体がゲームの画面に戻り、キーボードが見えなくなった。

 もう僕は、キーボードのキーの位置すらわからない。

 でも、不思議なことに、チャットに発言が書き込まれている。

 全部、彼女の仕業だ。

『DBT>はい。ではでは。バイビー』


「ねえ、どうして書き込めるの。てか、僕に断りなく、勝手に書いているし」

「こんなの、精霊の力でなんとでもなるの」

 なんと! 精霊の力、恐るべし。


「僕は『ではでは。バイビー』なんて書かないよ」

「気にしない、気にしない」

「絶対、みんなにバレているよ、君が書き込んだって」


「じゃ、行くわよ、トール」

「トオルだってば」

「ゲーム再開!」


「ちょっと待って!」

「何?」

「君のこと、アンジェって呼んでいい?」

「あーちゃんじゃなきゃいい」

「そっか。じゃ、あーちゃんだ」


『DBT>トールが、いじめる』

「こらこら! 勝手に書くな!」


『イカヤ>あら、書いているのアンジェちゃんでしょ?』

『センダ>デバッグの邪魔してはだめですわ』

『カケホ>ちーっす』

『イイン>協力してあげてね。こちらの言葉とか文化とか』

『ノシマ>アンジェ萌えーってことで』

 こういうときだけ、みなさんの食いつきがいいのはどうしたものか。

『やまだ>よろしくお願いします』

 あんたは食いつきに参加しなくていい。


 あ、でも、今山田さんが『よろしくお願いいたします』って言った。

 ということは、僕が彼女と組んで一緒にデバッグしても問題ない、つまり、契約違反にはならないんだ。


 これはいいことを聞いたぞ。よしよし。


 こうして、異世界常駐者となった僕は、あーちゃんことアンジェリーナとペアリングによるデバッグを始めることにあいなった。


 ここにきて、ようやく周囲の状況と僕自身の役割が理解できた。


 まとめてみよう。


 異世界の開発者たちが、僕の世界のHMDを参考に、それを上回るHMDの試作機を完成させた。

 そして、コンテンツとして、僕の世界の人気恋愛ゲームの外伝まで制作した。

 それは、恋愛&アクションのVRゲームらしいので、本家を上回るゲームにしたもようだ。


 そして、本家の世界から僕を招聘した。

 いや、それは間違いなく、『異世界への召還』だろう。

 そして、異世界のHMDとゲームの両方のデバッグを行う。

 これが僕のミッションだ。


 そう考えると、今までの嫌々感が吹き飛んで、ちょっと本気モードになってきた。

 それは、彼女の協力の申し出により背中を押されたことが大きい。


 さて、どのくらいでゲームがクリアできるだろうか。

 せいぜい一日、二日あれば、かな。

 感覚的にだが、40時間くらいで、と。


 ただ、後になってわかるのだが、それは甘かった。

 大甘だった。

 このゲームが実は大河のように長いストーリーで、クリアするのに何日もかかってしまうとは、この段階では想像もつかなかったのである。


 しかも、ゲームの主人公のちょっと軟弱君が、女の子と淡い恋愛チックなことをしながら、敵を次々と倒しつつ大ボスにたどり着き、最後に衝撃の事実が明らかになる。

 その長いこと長いこと。


 異世界の皆さん。この世界は魔物と冒険者の世界としか思っていなくて、ごめんなさい。

 いつの間にかここまで技術を習得しているとは、大変驚きまして、言葉もありません。

 ゲームはまだ初っぱなですけれど、ほんと、いい仕事していらっしゃると思います。


 そして、正直申し上げて、何もかもが驚きを通り越してあきれています、ハイ。



第三章まで執筆しましたが、ゲーム内世界とデバッグの世界の2つのストーリーが平行して展開するため、読みにくい懸念が出てきましたので、第一章でいったん、完結とさせていただき、後日再構成します。

現時点の構想では、ゲーム部分と異世界部分を分離・独立させて別々に公開する予定です。


異世界部分を再構成したものは、「僕と幼馴染みと黒猫の異世界冒険譚」として2017年1月1日から公開しています。


お読みくださった皆様方、誠にありがとうございました。

ご期待に添えず申し訳ございません。


次回作では挽回しますので、どうぞよろしくお願いいたします。

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