壁を抜ける女生徒
再度HMDをかぶると、外す直前の状態が保持されているらしく、途切れた場面から再開し、また女生徒の手に僕の右手が引っ張られた。
そして、彼女に手を引かれるまま、勝手に歩いている。
僕は足を動かしていないし、コントローラを触っていないのにもかかわらず。
そうだ、こういうときにコントローラを動かすとどうなるのだろうか?
と思ったが、彼女に手を引かれる不思議さに、そのようなデバッグ魂は吹き飛んだ。
昇降口から上がって廊下まで移動した。
あれ? 上履きに履き替える動作がない。
ということは、最初から上履きを履いていたのか?
このとき、また悪戯心が芽生えて、僕の方から手を引っ張ってみた。
すると、彼女が立ち止まり、こちらを振り向いて言う。
「ツィーエンニヒトゥ」
意味がわからん。
もちろん、画面下の奇妙な文字の表示も読めない。
彼女は、そう言うと前に向き直り、ずんずんと歩き始める。
その先は壁である。
えっ? 壁なのに脇目も振らず歩いて行くぞ。
こちらの心配をよそに、彼女はまっすぐ壁に向かって歩いて行き、なんと、壁の中を突き抜けていく。
ということは、こちらも壁を突き抜けることになる。
ちょ、ちょっと待った! ポーズ! ポーズ!
慌てて、ポーズボタンでいったん停止した。
彼女の全身の大半が壁の向こうに入った状態で止まった。
スカートから尻尾が、硬直したようにピョンと立っている。
実にシュールなシチュエーション。
壁抜けJK、恐るべし。
これはさっそく不具合報告だ。
チャット画面を起動し、キーボード入力後、エンターキーをビシッと叩く。
『DBT>昇降口で彼女に手を引かれて歩いているとき、彼女が廊下の壁にめり込みました』
僕の発言にチャットが沈黙した。
困っているみたいだぞ。
しばらくしてから、皆が一斉に書き込んできた。
『イカヤ>あら、やだ』
『センダ>その前に何をなさいました?』
『カケホ>バグじゃね?』
僕は何をしたかを思い出す。それは、一つしかない。
『DBT>彼女の手を引っ張りました』
『DBT>そしたら、彼女が意味がわからない言葉で何か言いました』
『DBT>画面下も読めない文字が表示されました』
また、チャットが沈黙した。
しばらくすると、一人だけ反応してきた。
『イカヤ>直すわよ』
やっちゃいましたか。頑張ってください、皆様。
ボイスと文字も直してね。
不具合報告は終わったが、振り返ってみると、どうも操作性がしっくりこない。
操作性についても不具合ついでに報告しておきたい。




