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僕が異世界常駐でゲームのデバッグをさせられた件  作者: s_stein
第一章 異世界にもVRゲームがあった
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壁を抜ける女生徒

 再度HMDをかぶると、外す直前の状態が保持されているらしく、途切れた場面から再開し、また女生徒の手に僕の右手が引っ張られた。

 そして、彼女に手を引かれるまま、勝手に歩いている。

 僕は足を動かしていないし、コントローラを触っていないのにもかかわらず。


 そうだ、こういうときにコントローラを動かすとどうなるのだろうか?

 と思ったが、彼女に手を引かれる不思議さに、そのようなデバッグ魂は吹き飛んだ。


 昇降口から上がって廊下まで移動した。

 あれ? 上履きに履き替える動作がない。

 ということは、最初から上履きを履いていたのか?


 このとき、また悪戯心(いたずらごころ)が芽生えて、僕の方から手を引っ張ってみた。

 すると、彼女が立ち止まり、こちらを振り向いて言う。

「ツィーエンニヒトゥ」

 意味がわからん。

 もちろん、画面下の奇妙な文字の表示も読めない。


 彼女は、そう言うと前に向き直り、ずんずんと歩き始める。

 その先は壁である。

 えっ? 壁なのに脇目も振らず歩いて行くぞ。


 こちらの心配をよそに、彼女はまっすぐ壁に向かって歩いて行き、なんと、壁の中を突き抜けていく。

 ということは、こちらも壁を突き抜けることになる。


 ちょ、ちょっと待った! ポーズ! ポーズ!

 慌てて、ポーズボタンでいったん停止した。


 彼女の全身の大半が壁の向こうに入った状態で止まった。

 スカートから尻尾が、硬直したようにピョンと立っている。

 実にシュールなシチュエーション。


 壁抜けJK、恐るべし。


 これはさっそく不具合報告だ。

 チャット画面を起動し、キーボード入力後、エンターキーをビシッと叩く。

『DBT>昇降口で彼女に手を引かれて歩いているとき、彼女が廊下の壁にめり込みました』

 僕の発言にチャットが沈黙した。

 困っているみたいだぞ。


 しばらくしてから、皆が一斉に書き込んできた。

『イカヤ>あら、やだ』

『センダ>その前に何をなさいました?』

『カケホ>バグじゃね?』


 僕は何をしたかを思い出す。それは、一つしかない。

『DBT>彼女の手を引っ張りました』

『DBT>そしたら、彼女が意味がわからない言葉で何か言いました』

『DBT>画面下も読めない文字が表示されました』

 また、チャットが沈黙した。


 しばらくすると、一人だけ反応してきた。

『イカヤ>直すわよ』

 やっちゃいましたか。頑張ってください、皆様。

 ボイスと文字も直してね。


 不具合報告は終わったが、振り返ってみると、どうも操作性がしっくりこない。

 操作性についても不具合ついでに報告しておきたい。



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