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トカゲ娘の異世界闊歩  作者: おーしゃん
30/36

トカゲは突入第一班

トカゲ娘は集団でハイエースされてしまった!?

 何か道を進んでいるような感覚。布で覆われ暗い視界。何がどうなっているのかわからない。時折モゾモゾ動くたび銃口のようなものを押し付けられる感触と鋭い怒声が飛ぶ。ああーもう勘弁して下さい!

 乗り物は何度も曲がるようなGを感じつつ人気を感じない所で止まった。私は数人で担がれ、建物の中に入ったようだ。感覚でわかる。うわあ、あそこで殺さなかったって事はしばらくは大丈夫……いやいや、人気の無い所でブスリな可能性もありえる…逃げなきゃ!…あ、銃口押し付けないでください怖いです!


 しばらく下に降りていく感覚の後、地面に下ろされる。そして布が払いのけられた。周りは暗い。ロウソクの明かりが灯っている。

 「魔光が通ってなくてすまんな。拠点がバレるからな。」誰かの声。声の方向に誰かが座っている。側にもローブを着て銃を持った人間。

 「抵抗するなよ、その瞬間ぶち殺すからな。」そばにいたローブの男がそう言ってミスリルの網を払いのける。周りでは銃をこちらに向かって構える人達。私はその場で正座しているしかなかった。

 

 「ほう、聞いたとおり魔物の奴隷か。俺も初めて見るな。」ローブを被った偉そうな、いかにもボス的な奴が言い放つ。ぐぬぬぬ、どうやって脱出しようか。さすがに銃口をたくさん向けられて「フリーズ!!」な感じは経験しとことないから怖い。っていうか日本人だから身代金をたくさん取られるフラグですか!まあエルノールたくさん金貨持ってるし……でもあいつ払わなさそう。ひいいいい終わったあああああ!!

 「魔物の奴隷よ、名前は?」銃口で小突く男。やめてください言いますから。

 「テギルですうう!!命だけはどうか…。」

 「テギルか、この度はうちのギルド員が迷惑をかけたそうだな。話には聞いたがその事についての落とし前については考えていないし、お前をいたぶったりするつもりもない、安心してくれたまえ。」

 おうよかった、じゃなくてやっぱり身代金か!?払わなければ首掻っ切る系ですか、ですが残念!私に刃物は通じましぇーん!!って言っても無敵なわけじゃないから殺す手段はいくらでもあるんだよなあ……エルノール様払ってくだしゃい!


 私があわあわしていると…。

 「実はお前の実力をみこんで頼みがあるんだ。ミスリルすら通さない、あの爆発でも耐えうる肉体。魔物特有の身体能力。それらを活かせばすばらしい仕事ができるはずだ。」

 お、身代金じゃないのか?というか言うこと聞けば解放してくれる系な感じ?しますします命さえ無事ならなんでもしますから助けてください!

 「実は町の中央にでかい建物があるのは知っているだろう。ほら、あの光り輝く塔だ。あそこの隣の魔力送電所から町中に魔力を供給しているんだ。だが貴族共は魔石鉱を独占し高い税を市民から取り、私腹を肥やしている。許せんと思わんかね。俺達はそれを変えたいと思っている。やはり、魔力や富はすべての市民に平等に分配されるべきなのだ。だから俺達盗賊ギルドは貴族しか狙わないし、正義の為に戦っている。」

 なるほどすばらしいお考えです、マルクス万歳!市民に平等を!…なので命だけは!

 「なので今晩、その塔を武力制圧し領主が溜め込んでいる富を人民に分け与えこの町を誰もがうらやむ豊かな町に変える!革命だ!!」

 その通りでございます書記長、ゲバ棒と火炎瓶とヘルメットを持って今すぐにでも乗り込んであげますので…命だけは!

 「盗賊ギルドの全勢力をつぎ込む。テギル、お前は切り込み隊長として衛兵たちを蹴散らせ。歯向かうものは八つ裂きにしろ。さあ出発だ!」

 『はい、ボス!!』


________________________ 


 なぜか大勢のローブに連れられてタワーの前にいます。塔の隣にはモクモクと紫の煙を上げる工場(?)のような建物が並ぶ。うわあああああ、犯罪ですよおお。でも死にたくないのでなんでもしますうううう。

 あ、銃口で小突かないでください痛いです。撃たれたらもっと痛いです。はいはいやってやりますよ!


 「たのもー!」

 私はなんか許可されてない人以外は魔力探知で開かないとかなんとかいうタワーの正面ゲートを淑女的(物理的)に入る。周りにゲートの破片が飛び散る。

 

 「だ、誰だ!?」

 「うわあ、魔物!?」

 「ぜ、全員構えろおお!撃てええ!!」


 中にいた衛兵と思わしき者達が一斉に銃をこちらに向ける。うわああ、やっぱこうなるじゃないか!突如、鋭い音が連鎖的に響き体中に衝撃を感じる。衛兵たちの銃口から飛び出た白い光の弾は、私の鱗にあたると同時に四散して行く。無傷だ。ふふふ、私の魔力耐性力は53万です。

 そして隙を見て雪崩れ込む盗賊ギルド員達。爆音と空気を切り裂く音が聞こえたかと思うとピチピチスーツの衛兵たちの体は爆発四散し、赤い霧があたりに立ち込める。ちょっと、グロ耐性無いんだからやめてください。

 

 「よーし、一階は制圧した。最上階までこのトカゲを盾に進むぞ!」

 『おー!!』


 私今すごーくマズイ事をしてるんじゃなかろうか……でも私の命もかかってるし緊急避難って奴です。全部命令した奴が悪いです、ハイ!


 夜中ということもあったのか、衛兵の姿は一階以外にはなかった。ほとんどが事務関係の公務員的な何かで、殺さずに無力化は簡単だった。これ以上は頼むから私の前で人間を肉片にするのはやめて頂きたい。吐きそうになる。……ていうか吐きそう。

 

 各階を盗賊ギルドのメンバーがおさえ、リフトに乗ってあっというまに最上階。下からは銃撃戦と思わしき音が聞こえる。おそらく外から衛兵が攻めて中から盗賊ギルドが防戦してるのだろう。もう後戻りはできない。

 最上階の領主の部屋と思わしき部屋は固く閉ざされていた。私に付いてきているギルド員は4人だ。


 「領主の部屋だ。おそらく護衛がいるはずだ。全員油断をするな!」

 『領主を引きずり下ろせー!民に富をー!』

 

 やだもうこいつらどこの信者だよ。私は銃口で小突かれながら嫌々扉を蹴破ろうとする。だが意外と頑丈だ。なかなか開かない。まあ領主様の部屋ですからねえ……っていうかもう領主様はセーフルーム的な所か裏口から脱出してるんじゃないですかねえ。だから帰りませんか?あ、そんなにギラギラした盲目的な目でみないでください怖いです。私は再度、ドアに向かってトカゲキックをかまそうと足を上げる…。


 (テギル、聞こえるか?領主の部屋の前だろう?)


 突如、声が頭に響く。あれ、誰かしゃべった?周りを見渡すと、盗賊ギルド員達も驚いた様子で辺りを見回している。この感覚は覚えがある……そう、芋虫ドラゴンと戦った時聞いたテレパシー的な魔法!

(魔法はイメージだ。今のお前なら切り抜けられる。さあ、犯罪者として処分されるか、英雄になるか…選べるはずだ!)


 私の鱗に走る金色のラインの光が速度を早め波打つ。私の体の奥底が灼熱の熱さで悲鳴をあげる。私はクルッとドアから回れ右をして反対側を向く。


 「な、なんだ今の声は!」

 「おい、どうした?早くドアをぶち破れ!」

 「ミスリルを喰らいたいのか!早くしろ!」


 盗賊ギルド員達は一斉に銃口をこちらに向ける。イメージ……魔法はイメージ。私は尻尾を地面に置き大きく息を吸い込み……ピタッと静止する。ギルド員達は首を傾げ私を警戒している。

 

 ---バシィィィィィーーーーン!!!---


 突如、全身が輝き私の体から無数のジグザグな光の筋が四方八方に走る。

 そういや人間時代持ち歩いたな、スタンガン。結局使う機会無かったけど……美人じゃないけど胸大きかったから強姦魔とかに襲われそうって……ハハハ……でもスタンガンのあの電気の流れる所綺麗だったなあ……。


 轟音で耳がキーンとしている。気が付くとすべてが終わっていた。 

 盗賊ギルド員達はみな肘を曲げて硬直して倒れ、身につけていたローブや武器はほぼ炭化して崩れ落ち、ギルド員達の体も炭のように黒くなり若干火がついていた。

 体からはパチパチという弾ける音と共に、鱗の金色ラインの光の流れも遅くなった。ああ、私何ヤってんだろ。こんな悪事に加担して善良な市民に迷惑かけて……ほんと馬鹿だよ。


 と、呆けている私の前の領主のドアが開く。そこに立っているのはローブを被った人影…。


 「さすがだなテギル。今の魔法は初めてみたよ。」エルノールだった。

 「…エルノール、私…その…」エルノールは私の口に手を押し当てた。そしてクスリと笑い。

 「大丈夫だ。何も話さなくていい。本当にお前は間が良いな。」エルノールは杖をつきながら盗賊ギルド員達を見下ろす。

 

 「警備の浅い深夜を狙っての襲撃か。だが、お前を利用しての短期決戦の作戦だったようだな。領主を捕らえるのが失敗した以上、残りのギルド員は衛兵にじき制圧されるだろう。」

  

 私は罪悪感と安堵感で、エルノールの胸に顔をうずめて泣き崩れた。そして宿から出たあとの事を洗いざらい話した。魔矢器で脅されてさらわれた事、死にたくなくて盗賊に手を貸した事、盗賊ギルドの拠点の場所。

 エルノールは無言で頷きながら聞いていた。そして私の胴体に手をまわしてポンポンと叩いた。

 「大丈夫だ、お前はよくやったよ。」

 「で、でも私のせいで衛兵さん達が…」

 「テギルが奴らを行動させなければもっと犠牲者は増えていた。気にするな。」

 

 直後、エルノールは杖を額に当て念じ始めた。

 (聞こえるか?盗賊ギルドの拠点がわかった。すぐに衛兵を送ってくれ。)

 テレパシー…念話の魔法だった。エルノールは盗賊ギルドの場所を伝え終わると杖を地面に戻した。気づくと下の階から聞こえていた銃撃戦のような音もすっかりやんでいた。


 「さあて、英雄さん。領主様にもご挨拶をしてもらおうか。」







 エルノールは領主の部屋の開いたドアに向かって手を差し伸べた……。

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