トカゲ魔女っ娘大変身♪「童貞撲滅!抜いてあげる♪」
ドラゴンと一緒に魔力弾で爆散したトカゲは果たして生きているのか?
私、宮瀬茜。今海外旅行流なの。側には現地で知り合った高身長高学歴高収入のイケメン。海外男子はいいね、年齢とか気にしないから。
「この辺にうまいカクテル出すバーがあるらしいの、行かない?」
「ああ、いいね。」
バーに入る。ボックスに座りマスターに注文。ここの名物、雄馬のなんかアレな体液を絞りとってフルーツ風味をつけたカクテルだ。これは精がつきそうですね。はいはいイケメン君変な顔しない、私が飲みたいの。アンタは黙って従いなさい。
真っ白なドロドロとした液体の入ったショットグラス。うわあ凄い!飲んでみよう…うん、人間のと違ってサラッとしてるね。草食動物いいわー草食系男子もこれぐらい飲みやすいの出してくれたらなあ。はいそこのイケメン、オドオドしてないでさっさと飲みなさい。なぜか口を手で抑えながらトイレへ駆け込んでいくイケメン。ありゃあ駄目ですね。股間チュッチュのあとキスしてくれない男は私嫌いです。はあ、もうATMとでも結婚したいなあ…。
「うーん…ATMさん…ほんのり温かくてお金いっぱい持ってる…むにゃむにゃ。」
ふと目を開く。あれ…ここは?
見渡すと、石造りの部屋だった。広げられたシーツの上で寝ている。となりには足の折れ曲がった小さなベッド。イテテテ…全身が痛い。ふと体を見渡すと裸だった。だが前と少し体が…いやなんか全然違う。緑の鱗が藍色に金のラインが入ったラピスラズリみたいな明るく輝く鱗になり、トゲトゲしていた鱗ではなくスベスベとした鱗になってる。あと手足の筋肉が少し前より小さくなったような…尻尾もちょっと短くなってないか?
天井には球状の透明なガラス球(?)それが光を発している。電球?いや、ガラス球の真ん中に浮かぶ白く発光する謎の光。壁には謎のレバーがついている。触っちゃ駄目なものは触りたくなる性格の私はすかさずそのレバーをガチャンと下におろす。すると部屋が暗くなる。天井にあったガラス球の光が消えている。レバーを上げると、ガラス球の中にまた光が浮かぶ。電気じゃなさそうだ…魔法かな?
ふと、窓が目に入る。近寄って外を見てみる私。そこには黒い石造りの建物が広がっていた。建物も前の街より高い物が多い。5階建て、6階建てとならぶ四角い建物。ああ、砂漠で見えた町だ。砂漠…そういえば?
「おお、テギル気がついたのか。」ドアを開けて入ってきたのはエルノールだった。
……そうだよ、こいつだよ!私を酷い目に合わせたのはあああああ!
「えるのーおおおおおおおる!!!」私はエルノールの胸ぐらを掴んで釣り上げる。
「私を置いて逃げただけでなく爆弾まで落としてなんてことを!最低嫌い碌でなしインポ!」
「ゲホゲホ…落ち着けテギル。」
「っていうか体がなんか変なんだけど!色違うしなんか色々違う!!」
「わかった、説明するからまずはおろせ。」
「おうおう、お前の奴隷は血気盛んだな。ご主人様に手を挙げるとはね。」
入ってきたのは、変な模様の入ったピッチリスーツを着た髭面の人間。なんだこいつ?
「自己紹介が遅れたな、アムザ飛行隊隊長のリゴールだ。俺が落とした極反応魔弾でドラゴンは消滅したよ。しかしお前が側にいたとは知らなかった。すまんな、ガハハハ!」お前があの時の奴かい。私はエルノールをおろしその髭面のリゴールと名乗った男を睨みつける。
「テギル、お前の体のことだが。」エルノールが臆面なく話し始める。
「見つけた時、お前は両手両足尻尾が欠けて、半死半生だった。リザードマンは魔法に鈍感だから耐えられると思ったが、さすがに極限魔法をくらうのはキツかったようでな。回復魔法も効果が無いから、一応普通の治療を試みていた。だがさすがリザードマンだな。欠けた体はすぐに生えてきたよ。だがまあ体の色が変わったのはまだよくわかってないが。」
なるほどー…って、お前ふざけんなよ!人間なら四肢欠けた時点で死んどるわ!新しく生えた手足だから筋肉が少なかったのか。さすがトカゲボディ凄い…じゃねー!私は再度エルノールの胸ぐらを掴んで釣り上げる。
「おいゴラァ!今までの借りは全部チャラ、っていうかお釣りが来るわもう許さん!」
「すまんな、ドラゴンを倒す絶好のチャンスだったからな。それにお前は2週間寝たきりだったんだ。まだ休んでいた方がいいぞ。」
え、2週間も?え、今何月何日だ…いやここの暦はわからん。っていうかそもそも2週間も寝てたら…。
「やっほー、テギル目が覚めたんだねー♪」
「テギル、心配したよ。」
モリュケちゃんとナオトちゃんが入ってくる。
「いやー、テギルの口に管突っ込んで流動食流してたんだよー褒めて♪」
「お前の排泄物臭かったぞ。捨てるこっちの身にもなってくれよな。」
モリュケちゃんとナオトちゃんお変りなく。私の世話してくれてたのねありがたい。しかしナオトちゃん、女の子に臭いというのはやめていただきたい。ってか私今裸やーん、超恥ずかしい!!
私はエルノールを離し、大事な所を隠す。……え、胸は隠さなくていいって?乙女心をわかってませんねー。
「しかしリザードマンは初めて見たぜ。おい、ちょっとペニス見せてくれよ。そのスリットの中に収まってんだろ。別にその気はないがちょっとリザードマンの生殖器を一目みたくてな。」ゲラゲラ笑うリゴールの顔面にトカゲパンチを叩き込む。リゴールはクルクルと宙を舞いながら扉の外へ飛んでいき盛大な音を立てながら転がっていった。手加減はしたから死んでないと思う、まあ死んでても構わないけど。男と間違われるのはもうコリゴリだ。
「たぶん鱗の色が変わったのは極限魔法が原因だろうと推測している。これまでのように外からの魔力に対しては耐性を持っているが、テギルの中からは膨大な魔力を感じる。それも桁違いのな。」
「はい?えーと、つまり私も魔法使える?」
「それはなんともいえん。魔力が高くても魔法を使えない奴は大勢いるからな。前みたいに魔石から魔力を抽出したように、極限魔法を何かしら体内に蓄えているかもしれん。まあ要実験だな。」
うーん、わからんことだらけだ。でも体の色は緑より綺麗になったな。故郷のアルギちゃんは綺麗なブルーラインを羨ましく思ってたけど今の私はそれより綺麗だ。まあ女性としてではなく視覚的にね、トカゲだし。
「それと新しい奴隷用首輪だ。一応、これがないと外を歩く時難儀するからな。」
「……爆発しないよね?」
「さあどうだろうな。しばらく休んでおけ。また来る。」お前ほんとムカつくな。
「じゃーねーテギルー。あとこれ新しい服ね♪」モリュケちゃんが服を置く。
「あと、これマスターからね。養生しなよ。」ナオトちゃんが箱を置く。そして扉は閉められ部屋には私一人になった。私はせっせとモリュケちゃんが持ってきてくれた服を着る。素材は違うけど私が着けてた服と同じような感じだ。サイズもぴったり。そういえばナオトちゃんが持ってきたあの箱なんだろう?私はその木箱をパカっと開けてみる。そこにはなんと、酒のボトルが何本か入っていた。すかさず蓋をとる。この豊穣な香りは…ワインだあああ!
ふふふ、エルノール。許してやろうじゃないか♪ワイングラスはないけど私はチビチビとワインを飲む。ふう、生き返るうー。ふう、酒を飲むとなんでも出来る気がしてくるぞ。そうだ、魔力に溢れてるなら魔法を使ってみよう!
私は魔法を放つ時のモリュケちゃんのように手を突き出す…火よ出ろお…火よでろお…出なさい…出ろ…!
「ファイア!…炎!…炎ドッカーン!…フレイム!」私の声が部屋の中にこだまし…私の手にはマッチの火どころか何も起きない。使えないじゃないかコンチキショー!!私は不機嫌になり布にゴロンと横になる。膨大な魔力があるって言われたのに魔法が使えないなんて。せっかくのファンタジーなのに。やっぱりイギリスに行って魔法学校に入らないと駄目か。あー、フクロウから入学許可証届かないかなーあーあ。私は才能あるんですーなんでもできるんですーうわあああん!
私は横になったまま手を上にあげ眺める。まるで電子基板のように金色の筋がサイバー模様になって、流れるように光が血液のように通っている。うーん、綺麗だ。いかにも魔法使えますって感じじゃないか。なのに使えないなんてどういうことなのかねワトソン君。私は頭を抱えてゴロゴロとのたうつ。
まあ考えても仕方ない。2本目のワインを飲もう。私は飲み終えた一本を放り投げ2本目に手をかける。ってこのワイン蓋が中にめり込んでるじゃないか。おーいスタッフー、コルク抜き持ってきてー!
うーん、力づくで上折ったらガラスがワインに入りそう、ってか貴重なワインを地面にぶち撒けたら敵わん。空手家みたいに綺麗にスパーンっと…そんな技術はない…。そうだ!ブレス使おう、こんな時のブレスだよ。
ちょっとだけ、ちょっとだけだぞ私。レーザーのように小さく細く…私は息を吸う…ゴポゴポと…あれ、ならない。ただ代わりに私の体の中で凄まじい熱を感じる。
な、なんだこれ!?私は吃驚して反射的に口を開ける…と、そこから放たれたのは気体じゃない……光の筋だった。それはワインボトルに当たる。斜めに切り裂かれずり落ちるワインボトルの上部分。それにとどまらずボトルを貫通した光の筋は地面、壁を抉っていく。私はパニックになりアタフタっとキョロキョロしてまう。それと共に放たれた光の筋が床や壁を切り裂く。と、止まらない!!
私は両手で口を押さえ閉じ…ようやく光の放出はとまった。い、いったい何が…?ゴゴゴ…何か嫌な音がした。下を見ると円状に切り裂かれた石造りの地面。あ、これヤバイやつですわ。
次の瞬間、私は轟音と共に抜けた地面と共に下に落ちていった…。




