トカゲの丸焼きの出来上がりです♪
トカゲは悪いことをしたのでお仕置きに丸焼きの刑です。
どうやら広場のようだ。天蓋に空いた穴からはこぼれ落ちてくる砂の滝と共に夕焼け空がみえる…そろそろ寒くなりそうだ。
「精霊石を穢すとはあるまじき事態。よってコイツを火炙りにする!」族長が叫ぶ。これは…暖かくなりそうですねえ。
『うおおおおおおお』
私はさらに油をバシャバシャかけられる。もう勘弁して下さい、反省してます許してくださいなんでもしますから!
「ダムザ…さん!凄く悪いことをしました反省してます!私の体を好きにしていいぴょん♪一緒に子作りしましょう!」
「うるさい賊め!お前なんかこうじゃ!」ダムザは持った松明を地面に押し付け油に引火する。ごらぁ!せいいっぱい謝っとるやないけ、なんでそんなことすんねん!やばいやばいさすがに火で炙られまくったら死んでしまう。私は足元に敷き詰めてある油の染みこんだ藁を必死に外に押し出す。だけど火の速度が弱まるだけで事態は好転しない。火は鉄の檻にどんどん迫ってきている。私は檻の一角を掴み思い切り力を込め脱出しようとするが一本目の鉄棒が折れ曲がるだけで私の巨体が抜けられるほどの隙間はあかない。ぐへええ超ピンチ!やばいやばいどうしようどうしよう…緊張したら催してきた。そうだ私おしっこしたかったんだった。もうパンパンだよ!こうなりゃこうじゃ!!
私は迫ってくる火に向かって股間を突き出し一つしか無い穴を手で開く。
ジョバババババ!!
ふう…気持ちいい。私の黄金水のおかげで火の勢いは弱まる。ふふふ、こうたくさん人に見られながらするのって…いいね。
「うわあ!なんてことを!」
「いさぎよく死ねー!」
「なんでうっとりしてんだ!」
「変態!!」
聞き捨てならない言葉が聞こえましたが私はノーマルですしまだ死にたくないです!あ、痛い痛い!棒でつつくのはやめてください痛いです!
私は周りから棒でゲシゲシ突かれる。待て待て今火を消そうと一生懸命なんだ邪魔しないでくれまいか。私は外から棒で突いてくる邪魔者に向かって黄金水を放つ。
「うわあ!きたない!」
「往生際が悪いぞ!」
「なんでうっとりしてんだー!」
「変態!!」
うるさいなんと言われようがここで死ぬ気はさらさらないわトカゲ土人共が!文明人の往生際の悪さを見せてやるわ!私は黄金水を飛ばしながら邪魔者を檻から遠ざける。
と、突如。洞窟内に風が吹き始める。ん、なんで洞窟なのに風が?
次第に風は私の黄金水が曲がる程強くなり、最終的には暴風となった。なんだなんだ?何が起きた?風は地面に積もった砂を巻き上げ砂嵐になる。檻を包むように砂の竜巻カーテンができ、トカゲたちは何が起こったかわからずに右往左往しながら砂のカーテンの向こう側に影を残して消えた。
「テギル、間に合ったようだな。」上から声が…見上げると舞う砂の向こう側にはためくローブ、エルノールだ!穴の空いた天蓋からロープを掴んで降りてきていた。
「テギル、さあ上に脱出するぞ!」
「でも鉄檻が…。」
「ブレスは吐けるか?今なら邪魔者はいない早くしろ、長くはもたん!」エルノールは右手に持つ杖の先を光らせながらそう言う。たしかに、今なら取り押さえられずにすむかも。私は大きく息を吸い、上の鉄格子に向かってブレスを吐く。黄土色の空気が鉄を赤く腐食させる。ためにし引っ張ってみると太い鉄格子も私の力でボキンと、破片を散らせながらとれた。懸命に私の体躯が抜けられる大きさの隙間を作り檻の上に這い出る。そして蜘蛛の糸を掴む亡者のごとくロープに真っ先にしがみついた。
「テギル、私を上まであげてくれ。降りるのはいいが、片手で上に上がるのは無理そうだ。」杖を前に突き出しエルノールは言う。
「え、いや早く逃げたいんですけど…。」私はいそいそとロープを登り始めていた。
「私に貸しをつくってばかりだろう?上にあげてくれたらこの貸しは無しでいいぞ。」
「うう…はいはいわかりましたよ。」
私はスルスルとロープを滑り降り、尻尾をエルノールの胴体に巻きつける。そしてそのまま腕の力だけでスイスイと登りだす。小さい頃から木登りは何度もやった、こういうのは得意だ。エルノールを抱えたまま消防隊員顔負けのスピードで登り切ると。そこにはロープを一生懸命おさえているモリュケとナオトの姿があった。ああ、手伝ってくれていたのかありがたい。
私は登りきり、エルノールを穴の縁におろす。エルノールは杖を突き出すのをやめ杖の先の光も消え、すでに沈みかけた日だけが残った闇の世界になる。穴の中から聞こえてきた轟音はやみ、なにやら叫ぶ声だけがガヤガヤと聞こえてくるだけになった。
「助かったよみんな!オアシス見つけたらあのトカゲ共に水中に引き込まれて…大変だったんだよー!」私は地面にへたり込む。
「話は後で聞こう、早くこの場を離れよう。一応オアシスを避ける形でな。」エルノールを先頭に私達は歩き出した。遠くにオアシスが見えてきた。
「モリュケ、リザードマンは見えるか?」エルノールが聞く。
「うーん、リザードマンって体温が周りの温度に近いからよくわからないんだよねー。」
「マスター、一応迂回したほうがいいと具申致します。」
「そうだな、オアシスよりこっち側の丘の下からキャンプに戻ろう。」
エルノールは回れ右をして砂丘の下へ向かって歩き出す。歩いてしばらくすると暗い中キャンプが見えてきた。よかったー、死なずにすんだ…ってか寒くなってきた寒くない?超寒い!!
ローブを取られて露出の高い常夏よろしくな格好な私はガタガタ震えながらキャンプに着く。寒い時は酒を飲むにかぎる…ロシア人もそう言っていた。私はワイン樽にしがみついてワインを飲み始める。うー生き返るー!
「テギル、飲んでる暇はないぞ。片付けを手伝え。すぐに出発しないとな、やつらが追ってこないともかぎらん。」
「ひっく、あのー寒いんですけど…。」
「荷物の中に予備のローブがあったはずだ。それを使え。」
みんながキャンプを片付ける中私はナオトのバッグを漁る。お、ローブあった。さっそく着てみるが…う、これ狭くない?本当に女の子用ですか?(ムキムキ2m30cm並の感想)胴回りはピチピチだし、裾もひざ上までしかないよ-!まあ私用に特注したやつじゃないからしょうが無い…のか?私がローブを着るのに四苦八苦してる間に片付けは終わり、ナオトはテントをバッグに詰め込む。私も仕方なく水樽とワイン樽を担いで歩き始めた。
「しかしあんな所にオアシスがあるとはな。」
「そうそう、水中から洞窟が伸びててさあ…。」
私は今まで会ったことを話し始める。しかし、リザードマンはこんなところにも住んでるのか。沼地にしか住んでないと思ってたよ。まあ外見はちょっと違ったけど。
「この砂漠はあまりマッピングが進んでなくてな。オアシスの存在も初めて知ったよ。なるほど、この砂漠で行方不明者が多いのもあのオアシスが関係してるかも知れないな。」
「え?どういうこと?」
「オアシスに近づいた人間を捕らえて…まあそういうことだ。」
げえ、あいつらまさか人間喰ってたのか…おげえ。たしかに砂漠は食料少なそうだし…なるほど、オアシスで水飲み始めてすぐ水に引き込まれたのはあいつらが見張ってたからか。オアシスの存在が世間に知れてないのも、見つけた人間たちがもれなく水中に引き込まれたから…。うーん、あいつらなんてことを。
「さすがにリザードマンの大群相手では冒険者では荷が重いな。次の街ではオアシスを見つけても近づかないように進言するのがいいのかもな。」エルノールは特に気にしてない様子で言う。
「ところでテギルー。おしっこ飛ばしまくってる所は最高だったよー♪」モリュケが笑いを堪えてるような顔で言う。
「あ…(見てたのかよこいつ)」
「声が聞こえる方角に向かって大穴が空いててさ、中を見たら檻の中のテギルがいて。俺耳がきくんだよね。助けるタイミングを伺ってたんだ。まあマスターの迅速な対応に感謝しなよ。」ナオトが『さすがマスター』みたいな顔で言う。なんでそんな無条件にエルノールを尊敬してるんですかナオトちゃんは?チョロいヒロインでチョロインですか?そのケモ耳引っこ抜くぞこの野郎。仕方がないのでナオトの尻尾の付け根を握って女っぽい喘ぎ声を聞くだけで我慢した。その後しこたまギャーギャー言われた。
地平線に向かって歩いていると、日が昇ってきて気温も上がり始めたので再度キャンプを張る。水筒もう空でーす!な感じで水樽に顔を突っ込んだらエルノールにしこたま怒られた。ほんとケチンボですねこの駄目男は!
本当に疲れた…色々あった後にずっと歩いてたし、あー肩こりそう。私は張られたテントの中でゴロンと横になって目を閉じた…。




