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トカゲ娘の異世界闊歩  作者: おーしゃん
20/36

トカゲは砂漠の暑さでご乱心のようです

卵を産んですっきりしたトカゲはいざ砂漠へ

「…というわけでコイツを火炙りにする!」

 『うおおおおおおお』

 私は檻に入れられている。周りに集まる人影…そして広がる砂の地平線。一人の男が持つ松明が檻と私にかぶった油に引火する。やめてください死んでしまいます!


 __時を少し遡る__



 明朝、私達は宿を出た。農地を遮り歩く。あ、葡萄畑。いいなー食べたいなー。故郷の果物は美味しくなかったしなー。

 「どうしたテギル。ダムロがめずらしいのか?ワインの材料だぞ。」涎を垂らしながら葡萄を見る私にエルノールが振り返る。これ全部ワインに使うのかー。凄いなー。町の中の関門の中の貴族っぽい人達用かな?むふふ、私は一樽持ってるがねムフフ。

 私は水樽とワイン樽、樽2つを担ぎながらスキップ気味に歩く。後ろにはモリュケとナオトもついてくる。

 

 「モリュケ帰らないの?砂漠だってよ。大変だよ。」私は聞いてみる。

 「いやーアンタといると退屈しないしー。向こう側にも仲間いると思うしねー。そっちで産むのもアリかなー。」なるほど、仲間の生息圏を増やしたいんですね。タンポポですか貴方は。

 「まああっちの村で一生を終えるより冒険した方が何かと退屈しないし。」ナオトちゃんもノリノリですね。ポジティブやな。

 

 歩いて行くと町を出る。ポツポツと木が立ち、その向こう側に広がるのは地平線が見える大きな砂の光景。あー砂漠ってこういうものかー凄い。

 

 「日が昇る前に進まないとな。休むのは日が昇ってからだ。」エルノールが早足で歩き出す。私達奴隷一行も全身ローブを身にまといながら進む。私のサイズのローブがなかなかみつからなくて、店で無理やり丈を長くしてもらった特注品だ。寒くないぞ。…ちょっと寒い。

 私達は砂の地平線へ向けて歩き出した。

 

 「あづいいいいいいい!」日が高く昇り気温はみるみるうちに急上昇。私は目眩がして頭痛も…だんだん歩幅が縮まってきた。でも汗はかきませんトカゲだから。私は頭までローブをかけて直射日光を防ぐが目の前の霞はきれない。持っている水筒は既に空だ、早く水樽から補給したい。湿気の高い沼地生まれの私には堪える。変温動物(?)なんだから気温の変化にはもうちょっと気をつかってもらいたいですねエルノール君!

 

 「ふむ、そろそろテントを張るか。おい、ナオト。」エルノールが後ろを振り返りながら言う。ナオトはリュックを下ろし、大きな布の塊と鉄棒を取り出す。鉄棒を何本か繋ぎ、砂の地面に立てていく。私とモリュケはそれを眺めながらグロッキー状態。やっぱりモリュケちゃんも変温動物ですか?突如モリュケが地面に潜り始める。尻尾まで地面に埋まった所で顔を出す。

 「テギルー。こうするとあんまり暑くないよー♪」モリュケはそう言いながら蛇目をギラつかせる。

 「え、マジで!?」私も荷物を置いてさっそく地面に頭を突っ込む。おお、若干ヒンヤリしてる!私は手で砂をかき分け体全体を砂に埋める。おおー少し楽になった。このまま地面に埋まっていたい。私の肺活量なら長いこと埋まってられるぞやったね♪


 「おーい、テント出来たぞー!早く入れよー!」ナオトちゃんの声が砂の上から聞こえる。うむ、水分も補給したいしここはテントの中に入るほうが懸命だな。私とモリュケは砂の中から這い出てテントへ突入する。テントは鉄棒に布を張っただけのお粗末な物だが、直射日光を避けるには問題ない。私はテントですぐに水樽を開け頭を突っ込みグビグビ飲み始める。うーん生き返る。

 「おいテギル。こんなところでそんなに飲んだら町まで持たないだろ。自重しろ。」エルノールに怒られた。だって喉乾いてしょーがないだもん。

 「まったく、亜人共の消費量も考えておくべきだったな。テギル、お前はワインだけ飲んでろ。」酷いこというねこの人。私は水樽に水筒を入れ満杯にした所で水樽から離れる。エルノールとナオトちゃんが水筒を入れ、モリュケちゃんもがぶ飲みする。次の町までどのぐらい歩くんでしょーね。不安になってきたなあ。


 しばらくは奴隷一行で砂の城を作って遊んだ。こんな娯楽のない世界だとこういうのも何か新鮮で楽しくなってくる。私も毒されてきたなー。人間世界に帰って腐ったテレビゲームでもしたいよコンチキショー。みんなで作った城に私がボディプレスをかまして壊す流れを繰り返していると、日が傾いてきた。そろそろ出発できそうな頃合いだ。んだが、ちょっと催してきた…お花摘み的な意味で。

 「ちょっとトイレ行きたいんだけど!」

 「そのへんでやって来い。テントの中ではするなよ。」砂の上に座ったまま腕組みしたエルノールが言う。へいへいわかりましたよ。

 

 「あづいいいいいい!」

 テントの外に出た途端こう…太陽光がビシャーっと。たまらずローブを頭までかける。しばらくすればこの憎き太陽も沈む。ああ、太陽無くなんねーかなマジで、恒星爆発おこして消えてくれないかな!?

 私は砂の丘をえっさほいさと登る。あれだけ水をがぶ飲みしたらそりゃ出ますわな。汗もかかない体だしね!一山越えてため息ひとつにさあ出そうとしゃがんだ矢先…目の前に緑が見えた。木がポツポツと生える中見える太陽光を反射する水たまり。ん、オアシスか!?いやいや蜃気楼ってやつかもしれない。私の中の知識では蜃気楼に惑わされて骨になったやつがいる!…テレビゲームの中で。

 でも物は試しとモヤが立ち上る砂の上を進む。日が落ちかけて少し気温が下がってきたような気がする。オアシスを確認してみんなに教えれば私褒められるじゃん!人気者だよヒーローだよ…ヒロインか?承認欲求を満たさんがため、SNSで磨いた好奇心を全面に押し出し、一歩一歩進む。爪の生えた鱗まみれの足が砂の地面を抉る。足裏の感覚が鈍くて助かる。手で触ると地面熱いんだよな。これだけ足が長ければ歩幅が広くていいねー。人間の姿でこの足の長さだったら文句なかったがね!!


 私は緑に足を踏み入れた。間違いない蜃気楼なんかじゃない、モノホンのオアシスですわ。木が生い茂り、地面には草が生え湖はかなりの大きさだ。向こう岸が結構遠い。私は無我夢中で湖に近づく。太陽光を反射してキラキラと輝いている。そして顔を水に突っ込みガブガブ飲み始める。うーん生き返るー♪

 

 っと、水中でなにやら音がする。ハッと目を見開くと向こう側から水中を凄い速さで進む影。咄嗟に顔を上げようとするが鼻先をつかまれ水中に引き釣りこまれてしまう。私は咄嗟に鼻先からそいつを引き剥がしあらん限りの力で水面で出ようともがくが…尻尾を捕まれ…あろう事か力負けしてどんどん水中へ引き込まれる私。なんてこった…こんな魔物がいたなんて。そいつを見定めようと早い水流の中姿を見ようとするが、水泡が迫ってくるだけで何も見えない。私は長い間潜っても大丈夫だが、こいつが水に住んでる魔物ならエラ呼吸かも…だとするとだいぶピンチだ。どんどん引き込まれあたりが暗くなる。水中洞窟に入ったようだ。ここは尻尾を自切して水面まで…いや水中の魔物相手はリスクがでかすぎる、こいつが巣で私を食べようとした時に応戦して倒す、んで水面まで脱出だ。幸い息はまだまだ持つ。

 

 水中洞窟を上に上って行く感覚がする。この体になって平衡感覚が鋭敏になっている。水面に上がりたいがために藻掻いて逆に深い所に泳いじゃうことはない。素晴らしいトカゲボディ!

 上から光が差し込んでくる。水面だ!ここは水中洞窟で空気のある所に出ようとしている…ということは魚系じゃないはず。陸上での戦いなら負ける気はしない、コンチクショウやってやろうじゃない!

 

 ザパアアアア


 水面から空気に触れる。水中から出たようだ、体から負荷がなくなる。私は掴まれている尻尾に力を込め体をソイツに向かって突進し、口を開いて並んだ牙で思い切り噛み付いた。か…硬い!牙は一向に食い込む気配をみせなかった。食いちぎる勢いだったのに。


 「ほう、こいつは驚いたな。まあ落ち着け。」

 

 ソイツが声をあげる。何、しゃべれる?私は食いついた物に目をやる。それは黄色の鱗に覆われ爪が生えている…腕だった。ここは水中から出たとはいえまだ洞窟のようだった。水中から繋がっているのか?洞窟の奥から光が伸びてきていてソイツは影になっている。私は咄嗟に口を離しバックステップ。そいつの全身に目をやる。


 尻尾が生え、全身に覆われた黄色の鱗。そして横に大きく張り出したトゲトゲの顔…伸びた鼻先。これトカゲじゃね?


 




 「同族よ、ようこそ我が村へ。」私より頭何個分も高いソイツは言い放った。

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