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現実《リアルワールド》オンライン  作者: 消砂 深風陽
【ミカミ編】四章 成長編
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金と仲間

 本題に入ったところで、何故か俺たちとサラディの言葉は一気に食い違った。


「――ルナの買取の話ではないのか?」

「――アレイの話なんだが聞いていなかったのか?」


 言ってしまってから気付いた。そう言えばアレイの消息の話だとはひと言も言ってなかった気がする。そうなると、ルナの買取主である俺がいるのでルナの話だと思ってしまうのは当然ということになる。つまり俺たちが言わなかったのが原因だと今更ながらに気付いた。

 サラディは驚いた様子で、「何だと」と机の上に身を乗り出した。



「私を名指しでとは確かに言われたが、アレイウスの仲間だったとはな」

「仲間と言っても、数ヶ月だけどな」

 サラディは「それを仲間と言うんだろう」と苦笑したが、俺にはその意味はわからない。リーシャもそれを聞き、「そうですね」と言っているので、まぁ間違いではないのだろう。俺にはわからないだけで。

 そういえば、冒険者時代、サラディには仲間はいなかったのだろうか。いやこういう物言いができるということはきっといたんだろうな。いい仲間だったのだろうと簡単に想像できる。


「それで、……ヤツは今どこに?」

「その前に聞きたいことがある」


 とりあえず俺たちは先にいくつかの質問をさせてもらうことにした。

 万一だが、悪事を企んでいるのなら、アレイの居場所を教えるわけにいかないからな。

 と言うわけで聞いた「どうしてアレイを探しているのか」という問いには、「書いておいたはずだが」と不思議そうに呟いた。リーシャが俺のルーン文字の不勉強についてクドクド厭味ったらしく説明するので思わず苦笑すると、サラディも「なるほど」と苦笑した。一応少しは読めるようになって来たんだがな。まだ数字だけだが。


「アレイウスは数少ない【闇系魔法】の使い手でな。私が知るうちでは彼以外に使える者がおらん」


 ふむ、と【闇系魔法】を常識検索してみると、どうやら別に悪の技というわけではなく、要するに影を操ったり、闇の中でも目が効くようにしたり、逆に敵の目を見えなくしたりというものらしい。使い方によってはチートにもなりそうな魔法だが、魔力の消費がかなり激しく、使い勝手は(ワー)(スト)を誇るらしい。

 しかもその「闇」という言葉から敬遠されるため、使い手自体は減っているとのことだ。

「【闇系魔法】を欲している者がいてな」

 欲しがる者。文字通り使いたいという意味なのか、それとも使()()()に使って欲しいというだけなのか。


「どうしても引き合わせてくれと聞かんのだよ」


 引き合わせる、という表現からはどういう意図なのかは読み取れない。

「……念のため聞くが、意図は?」

「答えられないが、保障はしよう」

 保障。何の保障だ。命か、自由か、……意志か、尊厳か。いやさすがに疑りすぎか。アレイを陥れるためにあんな募集をかけるとは思えないし、アレイに何かあったとすれば一発で疑われる。そんな馬鹿はしないだろう。

 ちらりとリーシャを見て目で合図するが、リーシャは苦笑するだけだ。自分では言いたくないのだろうか。……あぁそういえば、リーシャを真ん中に据えておきながら、結局俺が中心みたいに話してたな。


「……話すのはいいが、いくつか条件がある」

「条件?」


 怪訝そうな顔をするサラディに苦笑を向ける。

「面倒なことじゃない。単に俺たちの事情のことだ」

「ふむ、聞こう。だがその前に」

 言ってサラディは、手を組み合わせた。何をするのかと思って見ていると、その手が徐々に開かれ、手の中で黒いものが蠢くのが見えた。

 すわゴキかと一瞬身構えたものの、普通に考えれば魔法だ。そういえば嘘発見に魔法使うって言ってたからそれだろう。

 手が少しづつ離れると、手の間に丸い玉が浮かんでいた。



 黒い玉が超気になる。

 玉と言っても、他に形容のしようがないというだけで、実際には玉ではないようだ。とりあえず中心に微妙に光るものがあり、その周囲を黒い何かが取り巻いている、そんな感じだ。

 とりあえず要求をいくつか話すことにした。

 まず俺たちのことをアレイには話さないこと。それから、アレイがこっちに来る場合、俺たちに会わせないよう細心の注意を払うこと。

 基本俺たちは会うつもりはないことを殊更強調し、アレイじゃなくても、アレイを知っているヤツまで含めて俺たちが会うことはないと強調した結果、サラディは何を思ったのか「ふむ」と顎を撫でた。黒い玉が超気になる。


「……構わんが、ふむ、そうか」


 何がそうなのかはわからないが、とりあえず納得はしてもらったようだ。

「誓おう。アレイを君たちには近付けない。というよりは我々からアレイの元に出向く予定なのでな」

「……もし万一勘付かれても、居場所は漏らさないと誓って下さい」

 リーシャが横から口を挟む感じで追加要求を入れる。

 勘付かれることもないと思うが、まぁアレイはあれで優秀な魔法使いのようなので、もしかしたらそういうこともあるのかもしれない。


「この魔法にかけて誓おう」


 あ、その魔法って術者にも効果があるのか――常識検索して気付いた――と少しだけ新発見をしつつ、俺たちはアレイの行き先、今いるであろうクーの故郷付近の町の名前などを教えた。

 確か町の名前はライダルクハルトだったか。リーシャにちらりと視線を向けると、視線と首肯で合図をくれたので間違いないだろう。


「……ライダルクハルトか。随分遠いな」

「ティリスティリア神殿のゲートを使ったはずです」

「あぁ、なるほど」


 リーシャに言われるまで忘れてたが、そういえばそんなのを使うって話だったな。1人でも1回白銭1枚以上の金を使うらしいので、ゲートは金がかかる。サラディひとりで行くわけでもないだろうし、ゲートを使うならかなり金がかかるだろうな。まぁサラディは金持ちだそうなのでどうということはないだろうが。



「さすがにもらいすぎだ」

「……いえ、いいんですよミカミンさん」


 ご丁寧にも、金銭1枚と白銭5枚を俺の前で並べて寄越したのでつい突っ込むと、意外にもそれを止めたのはリーシャだった。

「私たちにとって、仲間の居場所はこのくらいでは釣り合いません」

「いやいやいやいや」

「何度も言いますが、ミカミンさんは無欲すぎます」

 苦笑するリーシャは、「それに」と言葉を繋げる。

「――どうせこれらの大半は、私たちの手元には残りませんよ」

「……ふむ。さすがにバレるかね」

 リーシャの苦笑につられたように、サラディも少しだけ苦笑を向ける。


「一応確認だけしようと思ってね」

「底意地が悪いです。これだけの金を見せられれば、賢者でも目が曇ります」


 何のことだと思いつつ計算する。金銭が20000$相当なので200万円、白銭が1000$相当なので5枚で50万円。合計250万円分だ。それが手元に残らないってどういう……――あれ、そういえばどこかで似たような数字を見たな。


「ほとんど時期も経っていない。利息はまけてあげよう」


 あ、と思わず声を上げかけたが危うくそれを飲み込んだ。

 何のことはない。――この報酬からルナの金を持って行こうということだ。

「人となりは見極めたつもりだが、……あの子を大事にしてやってくれ」

「……あぁ。わかってる」

 リーシャの言った意味がようやく理解できた。

 金を見せ、ルナを買い取ることを選択するかどうかを試したのだ。確かに底意地が悪い。試すにしても悪趣味だ。もちろん気付いてしまえば迷うことなどありはしないが、……すまんルナ。一瞬忘れてた、などとは言えないな。というかよく考えてみれば、この部屋に入った時からルナの話くらいしかしてなかったじゃないか。それを忘れるとは、どうかしてるな、俺は。せめてこれからの行動で謝罪に変えて行こう。

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