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陰陽双記譚  作者: 奥義 扇
彷徨う瞳に絆を結べ
32/47

戦うは友のため

(はれ)、どうやって次元の狭間に行くつもり?」

「あ?」


 大声で笑い、優越感に浸っていたところを邪魔された(はれ)は不機嫌そうな顔をする。


(あき)がいれば簡単なんだがな」

「じゃあ、(あき)はいまどこに?」

「あいつなら消滅した」

「しょっ!?」

「あいつは戦いには不向きだから、しょうがないさ」


――しょうがないって、どうしてそんなにあっさりと言えるんだ。仲が悪いように見えたけど、本当に関係が希薄だったとか? 元は一緒だったから同属嫌悪?


「とりあえず、俺が扉を作り、次元の狭間に行くことは無理」


 両手で大きなバツ印を作る。


「じゃあ、どうすれば?」

「決まってんじゃん。こっちが開けられないなら、向こうから開けさせればいい」

「どうやって?」

「なんなんだよ、お前は! 人に聞いてばっかで、自分でも考えろよ。脳みそあんだろ!」


 (はれ)の一喝に肩を震わせ、ごめんと頭を下げる。


――確かに、僕は人に頼ってばかりだ。そのくせ、肝心なときには逃げ出す。これじゃあ、だめだと思ったはずなのに。


 自分を叱咤し顔を振る。


「ここにいても一言主は出てこないはずだよ」

「なんでだ?」

「一言主には恨みがある人物がいて、その人はもう亡くなっているんだけど、その一族に対して復讐をするんじゃないかって、僕は予測しているんだ」

「んじゃ、復讐したい一族の前に姿を現すってことか?」

「確信がないからなんとも言えないけど」

「んだよ、性格と同じで、言葉もはっきりしない奴だな」


 瓦礫に腰をかけ、組んだ足の片方をぷらぷらさせながら毒づく。


「と、とにかく、そこに行ってみよう」

「行くのはかまわないが、そこに今日現われるって保証はあるのか?」

「あ……」


 出した足を止める晴明(せいめい)


「行き当たりばったりかよ。どうしようもない奴だな」

「ご、ごめん」


 確かに(はれ)の言葉通りだった。

 目的地に行ったからといって、都合よく姿を現すとは限らない。

 崇慧(たかとし)は数日かけて、羅生門に一言主が現われるとわかったのだ。

 確証もなく、勘だけで行って出てくる可能性は低い。

 ましてや、先の戦いで深手を負っているとしたら、癒えるまで現われない確率のほうがはるかに高かいだろう。


(はれ)、一言主は傷を負っているの?」

「致命傷じゃないだろうけど、そこそこに手傷は負っているぜ」

「そうなると、傷を治すのが先かも。これは、姿は現さないかもしれない」

「まあ、傷を癒すのに崇慧(たかとし)の霊力を搾り取れば、ある程度は治癒されるだろうな。そうなりゃ、あいつが死ぬだけだがな。はははははっ」


 笑えない冗談だし、それは困る。

 彼を助けに次元の狭間に行きたいのに、肝心の崇慧(たかとし)が死んでいては意味がない。

 やはり、どうにかして次元の狭間に行かなければいけないのだ。


「そうだ、天一さんは?」

「て、天一?」


 天一の名前を聞き、焦る(はれ)


「あいつも戦闘向きじゃないからあてにならない、やめたほうがいいぞ」

「だけど、神にも一長一短があるはず。戦いにむいていないのなら、他の所に長所があるんじゃ?」

「だからって、あいつが次元の狭間に行く力を持っているとは限らないぞ?」

「だったら、別の神将を紹介してもらおう。彼女達だって崇慧(たかとし)を見殺しにはできないはずだし」

「それはない」


 きっぱりと言い切る(はれ)


「神とはいえ、使い主の言葉がなければ勝手な働きはしない。崇慧(たかとし)が助けを求めない限り、あいつらが出張ることはないだろうな」


――神なのに、言われなければ動けないなんて不便だな。


「じゃあ、君はどうなの?」

「俺か? 俺は式神だからな、神のように尊厳も神格も戒律も、侵してはいけない神域もない。俺達を作ったのは崇慧(たかとし)で、制約を施していないからある程度は自由が利くんだよ」


 式神のほうが自由で融通がきくみたいだが、やはり天一の話を聞いてみたいという思いがある。


「とりあえず、天一さんと話をしよう。頼む、(はれ)。呼んできてくれないか?」

「ちっ、しかたがないな。なんで俺が天一を……」


 式神はぶつぶつと不平を述べながら、ふっと姿を消す。

 崇慧(たかとし)の邸に行ったのか、それとも現世ではないどこかに行ったのか、とにかく姿を消すなど人間にはできない芸当だ。

 一人きりになった晴明(せいめい)は、自分になにができるのかわからないけれど、改めて決断した。

 大切な友のために戦う覚悟を。


今まで毎日書いていたけど、なんか大変だなぁ~。

って思ってなんとなく昨日は書きませんでした。

まぁ、具合悪くて書かなかったっていうのもありますが。

今回から毎日ではなく、基本的に火曜・木曜・土曜に上げていこうと決めました。

基本的に読者はほとんどいないですが、読んでいただいていた方、わがままですいません。

でも、頑張って書いてきますので、よろしくお願いします。



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