戦うは友のため
「晴、どうやって次元の狭間に行くつもり?」
「あ?」
大声で笑い、優越感に浸っていたところを邪魔された晴は不機嫌そうな顔をする。
「明がいれば簡単なんだがな」
「じゃあ、明はいまどこに?」
「あいつなら消滅した」
「しょっ!?」
「あいつは戦いには不向きだから、しょうがないさ」
――しょうがないって、どうしてそんなにあっさりと言えるんだ。仲が悪いように見えたけど、本当に関係が希薄だったとか? 元は一緒だったから同属嫌悪?
「とりあえず、俺が扉を作り、次元の狭間に行くことは無理」
両手で大きなバツ印を作る。
「じゃあ、どうすれば?」
「決まってんじゃん。こっちが開けられないなら、向こうから開けさせればいい」
「どうやって?」
「なんなんだよ、お前は! 人に聞いてばっかで、自分でも考えろよ。脳みそあんだろ!」
晴の一喝に肩を震わせ、ごめんと頭を下げる。
――確かに、僕は人に頼ってばかりだ。そのくせ、肝心なときには逃げ出す。これじゃあ、だめだと思ったはずなのに。
自分を叱咤し顔を振る。
「ここにいても一言主は出てこないはずだよ」
「なんでだ?」
「一言主には恨みがある人物がいて、その人はもう亡くなっているんだけど、その一族に対して復讐をするんじゃないかって、僕は予測しているんだ」
「んじゃ、復讐したい一族の前に姿を現すってことか?」
「確信がないからなんとも言えないけど」
「んだよ、性格と同じで、言葉もはっきりしない奴だな」
瓦礫に腰をかけ、組んだ足の片方をぷらぷらさせながら毒づく。
「と、とにかく、そこに行ってみよう」
「行くのはかまわないが、そこに今日現われるって保証はあるのか?」
「あ……」
出した足を止める晴明。
「行き当たりばったりかよ。どうしようもない奴だな」
「ご、ごめん」
確かに晴の言葉通りだった。
目的地に行ったからといって、都合よく姿を現すとは限らない。
崇慧は数日かけて、羅生門に一言主が現われるとわかったのだ。
確証もなく、勘だけで行って出てくる可能性は低い。
ましてや、先の戦いで深手を負っているとしたら、癒えるまで現われない確率のほうがはるかに高かいだろう。
「晴、一言主は傷を負っているの?」
「致命傷じゃないだろうけど、そこそこに手傷は負っているぜ」
「そうなると、傷を治すのが先かも。これは、姿は現さないかもしれない」
「まあ、傷を癒すのに崇慧の霊力を搾り取れば、ある程度は治癒されるだろうな。そうなりゃ、あいつが死ぬだけだがな。はははははっ」
笑えない冗談だし、それは困る。
彼を助けに次元の狭間に行きたいのに、肝心の崇慧が死んでいては意味がない。
やはり、どうにかして次元の狭間に行かなければいけないのだ。
「そうだ、天一さんは?」
「て、天一?」
天一の名前を聞き、焦る晴。
「あいつも戦闘向きじゃないからあてにならない、やめたほうがいいぞ」
「だけど、神にも一長一短があるはず。戦いにむいていないのなら、他の所に長所があるんじゃ?」
「だからって、あいつが次元の狭間に行く力を持っているとは限らないぞ?」
「だったら、別の神将を紹介してもらおう。彼女達だって崇慧を見殺しにはできないはずだし」
「それはない」
きっぱりと言い切る晴。
「神とはいえ、使い主の言葉がなければ勝手な働きはしない。崇慧が助けを求めない限り、あいつらが出張ることはないだろうな」
――神なのに、言われなければ動けないなんて不便だな。
「じゃあ、君はどうなの?」
「俺か? 俺は式神だからな、神のように尊厳も神格も戒律も、侵してはいけない神域もない。俺達を作ったのは崇慧で、制約を施していないからある程度は自由が利くんだよ」
式神のほうが自由で融通がきくみたいだが、やはり天一の話を聞いてみたいという思いがある。
「とりあえず、天一さんと話をしよう。頼む、晴。呼んできてくれないか?」
「ちっ、しかたがないな。なんで俺が天一を……」
式神はぶつぶつと不平を述べながら、ふっと姿を消す。
崇慧の邸に行ったのか、それとも現世ではないどこかに行ったのか、とにかく姿を消すなど人間にはできない芸当だ。
一人きりになった晴明は、自分になにができるのかわからないけれど、改めて決断した。
大切な友のために戦う覚悟を。
今まで毎日書いていたけど、なんか大変だなぁ~。
って思ってなんとなく昨日は書きませんでした。
まぁ、具合悪くて書かなかったっていうのもありますが。
今回から毎日ではなく、基本的に火曜・木曜・土曜に上げていこうと決めました。
基本的に読者はほとんどいないですが、読んでいただいていた方、わがままですいません。
でも、頑張って書いてきますので、よろしくお願いします。




