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第五十二話「僭王」


「……冥王殿」

「何をどうしたかはさておき、侵入は露見していると見える」

 僕を呼ぶリアスに務めて楽しげな声色で呟いて見せたのは、内心の動揺を隠す為だった。

「そうですね、父が王であった頃に比べて明らかに警備が手薄ですし」

 何より、ここに来るまでに通った扉の大半は施錠がなされていなかった。

「これは、誘っているとしか」

 罠と言うのが一番ありそうだが、気まずい思いとかさんざんしたあげくに引き返すというのも虚しいし、そもそも侵入に気づいているなら素直に返してくれるかも疑わしい。

「ならば戻る、か?」

 進むにしろ戻るにしろ英雄の力(ちーと)を使いさえすれば無傷で目的を果たすことも難しくはない。もっとも、今の僕にそんなつもりは毛頭無かったが。

(第一、今回僕はおまけだからなぁ)

 あくまで主役はリアスなのだから、退くか進むかを決めるのもリアスでなくてはならない。

「かって英雄のもたらした言葉に『虎穴に入らずんば虎児を得ず』というものがあります。冥王殿ならその意味もご存じでしょうが」

「進む、か」

「ええ。こちらへ、父の部屋はこの廊下を真っ直ぐ進んだ右手側にあります」

 父、と言う言葉(ワード)を口にする度リアスの顔に影が差すが、いくら僕とてそれを指摘するほど無神経ではない。ここはリアスの家なのだ、かって両親と過ごした。

(感傷とか思うところあるのが当然だよね)

 同行者を促し、それっきり黙ってしまったリアスの靴音を僕は追いかける。侵入がばれているなら足音を消す意味もない。

「ここ、か」

 立ち止まるリアスに追いついた僕は見事な彫刻の施された扉に目を向け、始めて耳にした。

「招かれざる客が来たと見えるな」

 僭王(せんおう)の声を。

「入るがいい。余はその扉に鍵をかけて居らぬ」

 感想を言うなら『やはり』だろうか。僕達の侵入はバレていたらしい。

「余に用があるのであろう?」

「っ」

 顔を歪めたリアスは、扉に手をかけるなり部屋の中に飛び込み。

(うわぁ)

 僕は片手で顔を覆うと、慌ててリアスに続く。はっきり言って雲行きがかなり怪しい。

(予定通り「いつでも殺せる状況にあった」と降伏勧告を突きつけたとしても鼻で笑われるもんなぁ)

 どちらかと言えばそれはあちらの台詞であるし、父の敵に声をかけられたリアスは冷静さを欠いているように見えた。

「さて、用件を聞こう。我が姪よ」

 対して、踏み込んだ室内で僭王(せんおう)は悠然と構えていて。

「まずは降伏勧告と言ったところであろう?」

 まるでこちらの思惑はお見通しだとでも言うかの如く、当初の行動を言い当てる。

「慈悲深きことであるな。国の民同士が刃を交え傷つくことを憂いたか。兄上もそう言う方であった」

「きさ」

「黙って聞けぇッ!」

 更に兄上という単語に激昂して噛み付こうとしたリアスをその男は一喝して黙らせる。

「ここに来た理由には余がどうして兄上を(しい)たてまつったかを問うことも含まれているのであろう? それをわざわざ明かそうというのだ」

 僕としては全く気にならないと言えば嘘になるが、聞くか聞かないかを決めるのも僕ではない。

「そんなことを明かしてどうする? 自分が正しいと開き直るつもりか」

「むろん、それもある。が、余にも興味があるのでな。最後まで語った後でその方がどのような顔をするのかがな」

「っ、そこまで言うなら――」

 結果として、リアスは僭王(せんおう)の話を聞くことにしたらしい。

「例えどのような理由があったとしても私の気持ちは変わらないっ」

 抜刀した剣を突きつけて睨む姪を横目で見ると男は語り始めた。




ついに僭王と対面した冥王とリアス。

悪役の定番宜しく語り始めた僭王はどう見てもリアスを圧倒していた。

そして明らかになる衝撃の事実。


次回「真相」にご期待下さい。


と言う訳で続きます。

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