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第二十五話「アーティファクト」

「助力か、良かろう。ただし、条件がある」

「条件ですか?」

 リアスの国にどこまで関わるかには二つのプランを用意していた。

 一つめは、高い地位を報酬として要求し、国の要職に収まって周辺国家を併呑。天下統一をすることで戦乱を収めると言う方法。戦乙女側ではゴミ箱に投げ捨てた案だ。

 そして二つめは、助力だけして気がついたらふらっと居なくなるこれまた英雄譚にでも出てきそうなパターンのプラン。

(前者は権力も資金も人材も手に入れやすいけど自由が無く、天下統一後に内部分裂で元の木阿弥ってデメリット。後者は助力の見返りを求められない分、割に合わないんだよなぁ)

 はっきり言って僕は決断力に乏しい人物だと思う。こういったアイデアが複数ある状況では迷って動けなくなる事が多いのだ。

(もっとも、今回はちょうどいい方法を思いついたけどね)

 幸いにも交渉相手という者が居るのだ。

「王座を取り戻した暁には――」

 自分の運命は自分で決めて貰おう、という意図から僕の出した条件は。

「我を宰相にして貰おう。もしくは、我への報酬はなしとするでも良い」

 というもの。

「「なっ」」

 二人は思わず声を失うが、まぁ、こんな提案をされれば面食らうのは当然だ。宰相にしろという要求だけなら、まだ理解できる範疇だろう。ただし、代案としてあげた「ただ働きさせろ」はどう考えても報酬としての「宰相の地位」と並べるに見合わない。

(そもそも見合わないという以前だよなぁ)

 僕が要求される側でも理解できなかっただろう。

「これからどう付き合うかについて選択を迷ったので相手に決めて貰おうと思った」

 などと考えていたなんてわかりようもない。

「わかりました。宰相に任ずればよいのですね」

(って、ええ?)

「リアス様!」

 と思ったのに、何だろうリアスの英断っぷりは。視線と声で領主が諫めるもリアスは頭を振って。

「助けて頂く恩人への報酬をなしにするなど私にはとても出来ません。ですが、宰相の地位ならお約束できるでしょう」

「……ほう」

「もちろん、報酬に見合ったお働きを期待しても良いのですよね?」

 少し悪戯っぽくこちらを覗き込んでくる瞳には、何らかの確信が秘められていて。

「根拠ありがな言葉よな?」

 僕が問うてみれば、リアスは問いを返してきた。

「貴方は『英雄の遺品(アーティファクト)』なのでしょう?」

 と。

「何だ、それは?」

 聞き慣れない単語に僕は思わず問い返す。この場に参謀殿がいればこっそり聞いていたのだが、あいにく今の僕は一人。そもそも遺品(モノ)になった覚えはない。

「っ、そんなことも知らぬのか! 『英雄の遺品(アーティファクト)』とは神に選ばれ、その神にも等しいと言われるほどの力を与えられた『英雄』ゆかりの品や人」

(なるほど)

 呆れた顔で口を挟んできた領主の言うことが本当なら、僕は遺品ではなく英雄と言うことになるのだろう。

「英雄の血筋の者となれば、死体を操るという術が使えても不思議はないが……こんな伝承、そこらの子供でも知っているのだぞ?」

(って、あちゃー。それは勉強不足だったなぁ)

 どうやら、相手に不審を抱かれる要素が増えてしまった様だった。

 だが、僕は動揺を表には表さず。

「話はわかった。だが、我は遺品などではない」

 否定の言葉を口にして。

「なっ」

「馬鹿な、では何故死者を操るなど」

「まさか、貴方は――」

 気づいたはリアスの方が領主より早かったみたいだ、と冷静に観察しつつ続ける。

「いかにも、その話で言うなら我は『英雄』になろうな」

 ここはドヤ顔すべきところだろうか、なんてどうでも良いことを考えながら口にした僕の発言に、場を一瞬静寂が支配し。

「まさか、『英雄』とは」

 流石にリアスも予想外だったらしい。これで戦乙女も『英雄』だと知ったらどんな顔をするだろうか。

(何にしても、戦乙女の件はこれで誤魔化せたかな)

 代わりに落とした爆弾が大きすぎた気もするが、こうして冥王の僕がリアスに荷担することは決定したのだった。




ご無沙汰してました。

リアスの英断によって、冥王はリアスへの助力を決意する。

乱世を終わらせる方針を定めた冥王は、戦いに身を置いて何を思うのか。


続きます


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