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友よ、笑え。そう言われたのはいつだったろうか。
親友のみっちぃに指摘されたあたしは、これまでの皮肉屋を捨てることにした。
だって、愚痴を言ってる時間がもったいないと思うようになってきたんだもん。
きっかけを作ってくれたみっちぃのおかげで、あたしは『にぱぁっ』と笑うことをためらわなくなった。
ダサくても臭くても、とりあえず心が振動したら首を突っ込むようになった。
髪も染めてみたくなったし、自分で巻いてみるようになったし、化粧だってたのしくなった。
性格はうじ虫を捨ててからは陽キャと言われるようになった。
そもそも、みっちぃも陰キャだったのよ。それなのに、急に髪を染めたり化粧するようになったのは、人気の女性アイドルに憧れたからだった。
どうせなら彼女たちより可愛くなりたい、綺麗になりたい。
アイドルなんてこれっぽっちも興味がなかったのに、あたしもつられて彼女たちのファンになった。
そうしたらもうね、たのしいのよ毎日が。
中三の受験生なのに、ピアスだってあけたくなるじゃない? その時は我慢したけど、高校生になったらすぐピアスした。
不思議なことに彼氏もできた。
笑って過ごして、ダンスして。そうしたら運が巡ってきたんだからやめられない。
笑った分だけたのしくなれる。これって最高の宝物じゃない。
そんなわけであたしは、一向に曲がる気配を見せないスプーンにただただ念を送った。
「曲がらないね、双葉っち」
みっちぃ、あたしを双葉っちと呼ぶことなかれ。でもまぁ、いっか。
そんなお昼休憩も後少しで終わりになろうとしている。
教室にもクラスメイトが集まってきて、あたしたちのことを遠巻きに眺めていた。
「はい、曲がらない。あたしには念力がありませんでした。ってことでスプーン曲げは終わり」
「え? 双葉あきらめちゃうの?」
だからゴローががっかりすることないんだってば。
「じゃあ、俺がやってみる」
と、ふいに手の中で温まりかけているスプーンを碧が奪った。
「曲がれぇ〜!! 曲がった」
「そんなバカな。碧すごいじゃん」
信じられない。あんなに頑張ったのに、碧が一回念を込めただけで曲がるだなんて。
教室から拍手が巻き起こる。あたしもつられて拍手だ、いえ〜い!
「うん。充分温まったスプーンを曲げるなんて簡単だよね」
あっさりと碧が白状したから、みんなで笑った。
念力とか超能力って、そんなものなのかもしれないね。
つづく




