第5話 ファミリー部屋の理由
俺は部屋の扉を開けた。
「あら、到着したのね」
「……」
「え?」
「……」
しばらく俺はその場に立ち尽くしていた。
隣の部屋から桃がやって来た。
「一寸」
「……桃」
「じいさんとばあさんからだ」
桃は当然のように団子を差し出した。
「一寸のおばあさんと一緒に食べてって」
「……」
「これからじいさんたちとグループ活動するんだってな」
「仲良くしたいって言ってたぞ」
「じゃあな」
桃は団子を渡すと、そのまま帰っていった。
俺は団子を見た。
部屋を見た。
おばあちゃんを見た。
「あら」
おばあちゃんは嬉しそうに笑った。
「桃太郎さんのおじいさんたちからいただいたの」
「……何でいるんだ?」
「一寸が心配だからここにいなさいって言われたのよ」
俺は静かに天井を見上げた。
ファミリー部屋。
なるほど。
そういうことだった。
しばらくして、インターホンが鳴った。
扉を開ける。
そこには狼が立っていた。
「狼」
「……」
狼も何とも言えない顔をしていた。
「どうした?」
「うちのじいさんとばあさんが、一寸と一寸のおばあさんのところに山ぶどうを持っていくように言われたんだ」
「……」
「何故かうちもじいさんとばあさんが来てな」
「……」
俺は静かに目を閉じた。
「意味が分からないんだが」
「こっちもだ」
狼は袋を差し出した。
「とりあえず、どうぞ」
山ぶどうだった。
「ありがとう」
受け取った瞬間、おばあさんが顔を出した。
「あら、狼さん」
「あらあら、本当に来てくれたのね」
「どうも」
狼は少し頭を下げた。
「うちの祖父母がよろしくと言っていました」
「まあ」
おばあさんは嬉しそうに笑った。
「今度一緒にお茶会をしましょうって話になっているのよ」
「聞いています」
狼は遠い目をした。
「うちの祖父母も楽しみにしていました」
俺は二人を見た。
何故か話が進んでいる。
俺だけ知らないところで進んでいる。
「一寸」
狼が真顔で言った。
「何だ」
「ファミリー部屋の意味が分かった」
「俺も今分かった」
どうやら鬼王様は正しかったらしい。
「鬼王様のお父様とお母様とも一緒よ」
「……」
「ふふ」
「お茶会楽しみ」
「待て」
「何だ」
「何で鬼王様のご両親までいるんだ」
「紹介していただいたの」
「誰に」
「鬼王様」
「鬼王様ーー!!」
その時、再びインターホンが鳴った。
「はい、どちらさまですか」
「雷牙の父です」
「……」
俺は静かに扉を開けた。
そこには上品そうな男性が立っていた。
その声を聞いて、ばあちゃんがトコトコとやって来る。
「あら、こんにちは」
「いつも孫がお世話になっております」
「こちらこそ、うちの息子がお世話になっております」
二人は自然に挨拶を交わした。
何だろう。
俺だけ話についていけていない。
「これ、よろしければ」
雷牙さんのお父さんが紙袋を差し出した。
「美味しい紅茶が手に入ったので」
「一寸君が紅茶が好きだと聞いたのでどうぞ」
「ありがとうございます」
ばあちゃんは嬉しそうに受け取った。
「それでは、お茶会楽しみにしております」
「家内も楽しみにしているんですよ」
「本当に楽しみですね」
二人はニコニコしていた。
これはいったい何なんだ。
親しみ隊の寮に来たはずなのだが。
気がつけば祖父母交流会が始まっていた。
「あの紅茶が好きって……誰から聞いたんですか?」
すると雷牙さんのお父さんは穏やかに笑った。
「おじいさんからですよ」
嫌な予感がした。
「この前TVで話していました」
「一寸は紅茶が好きなんです」
「最近はこれがお気に入りで」
「仕事の後によく飲むんですよ」
「って」
「じいちゃん!!」
ばあちゃんは楽しそうに笑った。
「ふふ」
「おじいさんがこの前TVで一寸が紅茶を飲むんだって話したからね」
「何でそんなこと全国放送するんだ!」
「かわいい孫の話だからじゃない?」
「範囲がおかしい!」
雷牙さんのお父さんも頷いた。
「私もそれで知りました」
「知らなくていいんです」
「そうですか?」
「そうです」
すると雷牙さんのお父さんは少し考えた。
「確か、今度は一寸君がよく読む本の話もすると言っていましたね」
「やめてください」
即答だった。
「あと親衛隊の話も」
「やめてください」
「それと」
「まだあるんですか?!」
ばあちゃんはニコニコしていた。
「ふふ」
「お茶会楽しみね」
あとがき
ここまで読んでくださってありがとうございました。
今後はアルファポリスを中心に更新予定です。
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