第1話 顔担当の一寸法師
俺は堀川一寸。
一寸法師だ。
以前は公務員として働いていた。
役職は堀川少将。
だが、今は違う。
祖父の中納言に仕事は任せて、俺は公務員を辞めた。
現在はフリーターである。
何故辞めたのかって?
簡単だ。
顔が王子だという理由で人気がありすぎて、公務員の仕事にならなかったからだ。
だから辞めた。
彼女だった春姫とも別れた。
疲れたから自由になりたかった。
理由はそれだけだ。
あと、よく背が低いと思われがちだが、それは小さい頃の話である。
打ち出の小槌で叩いたら、謎の呪いが消えた。
だから今は普通に背が高い。
たまに祖父から連絡が来る。
元気にしているか、と。
どうやら祖父はイケメンコミュニティランキングを見て、俺の生存確認をしているらしい。
先日も電話があった。
「元気にしているか」
そう聞かれたので、親しみ隊のユニット活動を始めることを伝えた。
祖父は泣いて喜んでいた。
……いや、そこまで喜ぶことじゃない。
親しみ隊。
メンバーはこうだ。
鬼ヶ島雷堂(桃太郎の鬼 鬼王様)
センター・圧担当
鳥山雉太(桃太郎の鳥)
鳥山教担当
森山狼(赤ずきんの狼)
コメディ・運動担当
そして俺。
堀川一寸(一寸法師)
顔担当。
そして俺は、ノリで鬼ヶ島へ行き、皆で親しみ隊をすることになった。
もちろん、引っ越すなんて考えてもいなかった。
だって俺はフリーターというか、イケコミュだけで食べていたんだぞ?
金なんてない。
たまに祖父が、
「お前、大丈夫か」
と言って、小遣いを送ってくれていた。
「じいちゃん、ありがとう」
本当にありがたい。
王子すぎて困っていて、まともに働くこともできない孫なのだ。
……いや。
本当は、ただいい加減なだけという話は置いておこう。
だいたい、コンビニで働いた時だってそうだ。
王子すぎて行列ができてしまい、仕事にならなかった。
客は商品ではなく俺を見ていた。
何しに来たんだ。
だから、すぐに辞めた。
仕方ないだろう。
桃太郎の団子屋だって正直同じことになっている。
あいつは気付いてないけどな。
団子を買いに来ているのか、桃を見に来ているのか怪しい客が結構いる。
本人だけが気付いていない。
後者だ。
間違いなく後者である。
でも、今度から猿田――桃太郎の猿が団子屋担当になるらしい。
絶対に客は減るな。
まあ、あいつは親しみ隊とは違う。
ガチのモデル系ユニットの方で活動するらしいから、そっちは普通に売れるだろう。
しかし、なんで俺がそっちに入れなかったのかって?
いや、最初は一緒にするつもりだったんだ。
でも、運動能力がついていけなかった。
あいつら、おかしいんだ。
運動神経が半端じゃない。
だから俺達は親しみ隊でやる。
前転したり、軽く踊ったり。
そこまで激しくないダンスで頑張るんだ。
大丈夫だ。
鳥山がいる。
だから、さほど難しいダンスは踊らない。
……たぶん。
鳥山は運動音痴らしい。
知らんけどな。
運動神経が良いのは鬼王様と狼だ。
あの二人なら桃たちにも普通についていける。
しかし、俺達は無理だ。
そもそも、あいつらの基準がおかしい。
何で前転から始まって、そのまま回転数が増えていくんだ。
意味がわからない。
親しみ隊は親しみやすさ重視である。
だから大丈夫だ。
たぶん。
だいたい、親しみ隊って格好いい名前だし、絶対に売れると思うんだ。
少なくとも俺はそう思っている。
とりあえず、善行最高というサイトの毎回善行ランキング一位の鬼王様がいる。
だから、ボランティア活動なんかもするのだろう。
まあ、ありだな。
地域貢献だ。
良いことだと思う。
とりあえず、俺は顔で売っておくか。
役割分担は大事だからな。
それに、寮も支給された。
今より確実に良い部屋になる。
ありがたい話だ。
全部、鬼王様のおかげである。
親しみ隊。
頑張るか。
俺にできることは少ない。
とりあえず、顔で。
そう思っていた。
この時はまだ。
鬼王様に、あんな無茶を言われるとは思っていなかった。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
一寸法師が主人公のコメディ作品です。
親しみ隊での活動が始まりますので、楽しんでいただけたら嬉しいです。
よろしくお願いいたします。




