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24.商業ギルドからの手紙

「修理したナイフ、売れてるかな……。もし全然売れてなかったらどうしよう。取引、してもらえなくなるかも……」

「心配するな。あんな出来のいい品が売れ残るはずない。今頃、真っ先に買い手がついているだろう」

「そ、そうでしょうか……? ただのナイフに、ちょっと能力を付けただけですよ? 見向きもされないかもしれませんし……」


 胸の中がざわざわしてくる。やっぱり値段を高くしすぎた気がする。もっと安くしておけばよかったかも。


「うぅ……。もっと、もっと良い物を作らないと……」

「おい。どうしてそこまで自分を下げるんだ。十分に良い物を渡しただろう?」

「いえ……私なんてまだまだですよ。クラフトワールド・オンラインでも、下の方のクラフターでしたし……」

「ま、待て。あれで下……だと?」


 シオンさんが、目を丸くして固まった。信じられない、という顔だ。


 本当に、私なんて全然すごくなかった。上には上がいて、もっともっと凄いクラフターが山ほどいた。私は、その中の……下っ端の、さらに下の方。胸を張れるような存在じゃなかった。


 私はこの世界でどんなものを作って残せるのだろうか? 人に役に立つものを作りたいし、仕事を楽にするものも作りたい。楽しくなるものも作りたいし、あっと驚くようなものも作りたい。


 色んな物を作りたい。その気持ちは人一倍ある。とにかく、今は目の前のクラフトに集中すればいいよね。


「シオンさん。私、作って、作って、作りまくります!」

「おぉ? どうした、そんなに気合を入れて」

「悩んでいても、私のやりたいことはなくなりません。だったら、行動あるのみ! ……だと、思ったんですけど」

「どうして、そこでやる気が萎むんだ。もっと、胸を張っていろ」


 やる気がメキメキと上がったり、下がったり……。そんな姿を見せていると、シオンさんから呆れた声が返ってきた。


 だけど、その声には優しさが含まれていて、自然と心が癒された。近くにシオンさんがいてくれて良かった。そうじゃなかったら、ずっとうじうじしていたかもしれない。


「ヒナなら、みんながあっと驚くようなものが作れるだろう。だから、安心して自分のやりたいことをやりなさい」

「……ありがとうございます。そう言ってもらえると、元気が出ます」

「うむ、元気なヒナが一番だ」


 人と交流を持つことで、こんなに心が強くなるなんて思ってもみなかった。シオンさんが黒猫でいてくれるから、その人の温もりを感じることが出来て、私は幸せだ。


 少しずつ、対面の恐怖も無くしていきたい。そして、いつかシオンさんと対面で話す時が来たらいい。そしたら、きっと凄く楽しいだろうなぁ。


「む?」

「どうしたんですか?」

「手紙が配達されたな」


 そう言ったシオンさんは転移魔法を使って、手紙を私の前に置いた。


「宛先はどうなっている?」

「えーっと……あ! 私宛ですね。送り主は……商業ギルドってなってます」

「商業ギルドから? 一体、なんの用なんだろうな。開けてみよう」


 私は封を切って、中から手紙を取り出した。


「手紙にはなんて書いてある?」

「大規模な魔物掃討戦が実施される予定みたいです。そこで、必要な回復アイテムも数が足りないみたいですね。なので、錬金術のスキルを持っている私に回復アイテムの作成を依頼したい。っていうことが書かれてありました」

「あぁ、あの件か。城にいる錬金術師じゃ手が足りないという訳か」


 シオンさんはこの件を知っている?


「詳しい事を知っているんですね。でも、シオンさんはいつも私につきっきりになっていて、お城には行ってませんよね?」

「本体はあちこちに行っているぞ。並列思考という魔法があってな、それを使って魔法媒体を動かせば、同時に物事が進むんだ」

「えっ!? と、いうことは、今シオンさんの本体は違う事をしているってことですか?」

「そういうことだ。ちなみに今は城にいて、会議中だ」


 まさか、そんなことをしていたなんてビックリだ。どうりで、私につきっきりにすることが出来るはずだ。並列思考という魔法があれば、どんなことでも同時に行うことが出来るのか……。


「はっ! 私も並列思考の魔法を取得すれば、同時に色んなクラフトを出来るのでは!?」

「魔法媒体で分身を作る魔法も必要だな。暇があれば習ってみるか? とても難しいが……」

「うっ、難しいんですか。魔法はあまり得意じゃないので、私には難しそうです……」


 いい案だと思っていたが、私には厳しそうだ。でも、そんな魔法を使えるシオンさんって凄い!


「でも、良かったです。私につきっきりでシオンさんが自分のことを出来ないんじゃないかって心配していたんです。これなら、遠慮なく黒猫のシオンさんと一緒にいられます」

「私としては本体のシオンと仲良くしてもらえるのが一番嬉しいんだけどな」

「うっ、それは……。努力します! 私も本体のシオンさんと仲良くなりたいです!」

「そう言ってくれると嬉しい。ヒナと対面で話したり、一緒に食事を取る日が待ち遠しいよ」


 シオンさんがそう思ってくれるんだったら、私も対面で普通に話せるようになれたらいいな。少しずつ慣れていって、いつか一緒に食事を食べる日が来たらいいな。


「それで、この手紙はどうするんだ?」

「あっ、そうでした。人手が足りないのなら、協力したいと思っています」

「それがいいだろう。国家魔術師として、ヒナが協力してくれると助かる。じゃあ、商業ギルドに行かなくてはな」

「うっ……。た、対面……が、頑張ります!」

「うむ、その意気だ」


 早速、対面の訓練がやってきた。よ、よーし……少しずつ慣れていくぞ!

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