↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
1/4

本屋

どちらかといえば田舎寄りの街。人通りは少なく、寂れた商店街もある。コンビニもあるが遠い場所にあるが故に、この街に住む学生は滅多にコンビニへ行くことはない。

少し道を外れ歩いていれば見えるのは広い田んぼ田んぼ田んぼ。たまに茶畑と畑。

そんな場所。

寂れた商店街を少し抜け、住宅街に埋もれるようにしてあるパン屋を通り過ぎ、神社に続く道の前を通り、何故か同じ商品の並ぶ自動販売機の前の角を曲がり、何軒かよくわからない店の前を通り過ぎた、その先。

街の端っこに存在する本屋があった。

その本屋は大して大きくもなく、かといって小さくもなく。綺麗でもなく、汚くもなく。普通の本屋。品揃えは悪そうなただの本屋。

ガラス越しに少し中を見る。普通に本が並ぶが、あまりにも思っていたのと違う。息をするように自然に取手に指をかけ、カラカラと木製の戸口を開き中に入った。広さは、教室くらい。でも雰囲気は図書室のような感じだった。古い本棚のせいだろう。そしてびっくりしたことに、外観から想像できない木製の壁や天井。天井は吹き抜けになっていて、少し入って行くと壁に付けられた本棚が二階まで達しているということに気がついた。つまり壁一面本棚。高い場所にも届くよう長い移動式梯子がかかってあった。正直、見ていると首が痛い。

「はぁ……」

溜息が出た。すごいなぁという感嘆の意味か、何故こんな所にという勿体無さか。どちらかというと、よくやるなぁ、だろうか。

「いらっしゃいませ」

「うぁうっ!」

すぐ後ろから声がして振り向く。

「男の子か、珍しい」

珍しい、という言葉をそっくりそのまま返したいところだ。まぁ返すなら言葉に乗せる意味合いとしては珍種……。

長身だった、自分の身長が180くらいだとすると、目線の位置がほぼ変わらない、いや相手が少し下だろうか、180ないくらいだろう。ほぼほぼ変わらない。

「えっ……と、」

「あー、店主の架颯屋《かさや》です。……、やっぱ見えない?」

「え?」

パタパタとピンクのハタキを振る、架颯屋という店主。同時に背中あたりまで伸びた束ねた髪が揺れているのが見えて、長身長髪という身近に居ない異様さに驚いたまま、声が出ない。

「店主に見えないってよく言われるけど…、ううんエプロンでもつけようかなぁ…」

くるりと回転、後ろ姿を向け、店主が歩いていく。やけに細身の…………、男、性…、?

「あ、ゆっくり見ていってね〜、僕はすぐ奥にいるから」

と、少し振り向いてスマイル。中性的な整った顔に通る声。モテるだろうな、という感じ。

じゃ、なくて。

本棚の先を曲がり、姿が見えなくなりそうなところで本来の目的を思い出す。

「あ、あの!」

「はい?」

ひょこっと顔だけ覗かし、ぼくを見たその目は、えらくクマができていた。

「か、店長さん、」

「ん、架颯屋でいいよー」

唇が少し乾燥して口の中がいつの間にかカラカラだった。

「あでは架颯屋さん。ぼくは、雀上《スズカミ》といいます、お願いがあってきました」

架颯屋さんは驚いた顔もせず、そっちね、と一言つぶやいてぼくを手招きした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。