本屋
どちらかといえば田舎寄りの街。人通りは少なく、寂れた商店街もある。コンビニもあるが遠い場所にあるが故に、この街に住む学生は滅多にコンビニへ行くことはない。
少し道を外れ歩いていれば見えるのは広い田んぼ田んぼ田んぼ。たまに茶畑と畑。
そんな場所。
寂れた商店街を少し抜け、住宅街に埋もれるようにしてあるパン屋を通り過ぎ、神社に続く道の前を通り、何故か同じ商品の並ぶ自動販売機の前の角を曲がり、何軒かよくわからない店の前を通り過ぎた、その先。
街の端っこに存在する本屋があった。
その本屋は大して大きくもなく、かといって小さくもなく。綺麗でもなく、汚くもなく。普通の本屋。品揃えは悪そうなただの本屋。
ガラス越しに少し中を見る。普通に本が並ぶが、あまりにも思っていたのと違う。息をするように自然に取手に指をかけ、カラカラと木製の戸口を開き中に入った。広さは、教室くらい。でも雰囲気は図書室のような感じだった。古い本棚のせいだろう。そしてびっくりしたことに、外観から想像できない木製の壁や天井。天井は吹き抜けになっていて、少し入って行くと壁に付けられた本棚が二階まで達しているということに気がついた。つまり壁一面本棚。高い場所にも届くよう長い移動式梯子がかかってあった。正直、見ていると首が痛い。
「はぁ……」
溜息が出た。すごいなぁという感嘆の意味か、何故こんな所にという勿体無さか。どちらかというと、よくやるなぁ、だろうか。
「いらっしゃいませ」
「うぁうっ!」
すぐ後ろから声がして振り向く。
「男の子か、珍しい」
珍しい、という言葉をそっくりそのまま返したいところだ。まぁ返すなら言葉に乗せる意味合いとしては珍種……。
長身だった、自分の身長が180くらいだとすると、目線の位置がほぼ変わらない、いや相手が少し下だろうか、180ないくらいだろう。ほぼほぼ変わらない。
「えっ……と、」
「あー、店主の架颯屋です。……、やっぱ見えない?」
「え?」
パタパタとピンクのハタキを振る、架颯屋という店主。同時に背中あたりまで伸びた束ねた髪が揺れているのが見えて、長身長髪という身近に居ない異様さに驚いたまま、声が出ない。
「店主に見えないってよく言われるけど…、ううんエプロンでもつけようかなぁ…」
くるりと回転、後ろ姿を向け、店主が歩いていく。やけに細身の…………、男、性…、?
「あ、ゆっくり見ていってね〜、僕はすぐ奥にいるから」
と、少し振り向いてスマイル。中性的な整った顔に通る声。モテるだろうな、という感じ。
じゃ、なくて。
本棚の先を曲がり、姿が見えなくなりそうなところで本来の目的を思い出す。
「あ、あの!」
「はい?」
ひょこっと顔だけ覗かし、ぼくを見たその目は、えらくクマができていた。
「か、店長さん、」
「ん、架颯屋でいいよー」
唇が少し乾燥して口の中がいつの間にかカラカラだった。
「あでは架颯屋さん。ぼくは、雀上といいます、お願いがあってきました」
架颯屋さんは驚いた顔もせず、そっちね、と一言つぶやいてぼくを手招きした。




