10 肉付け
ゲームの大枠はできた。後はこれにキャラ絵を入れていく。絵なんか描けなくたってキャラ絵もフリーの素材があるもんね。美少女、美少年が多めだが、みんなプロが描いたみたいなハイレベルなものばかりなので、絵が描けなくても音楽ができなくてもパソコンに弱くてもゲームは作れるのである。いい時代になったものだ。ただし、ストーリーだけはフリーの素材なんて都合のいいものはないので、これからゲームを作る少年少女にはストーリーだけは自分でなんとかしてね、というのが自分にできるアドバイスだ。
しかしまあ、今回は学園ものではないのでキャラ絵は自前で用意する。多分いま作ってるゲームに合うキャラ絵など、どこのサイトにも配布されてないだろう。クオリティは落ちるが、原画家の自分に発注せねばなるまい。
待ってましたとばかりにコピー用紙にガリガリキャラを描きまくる。イメージは頭にあったので描ける描ける。調子に乗って二十枚ちかく描きやがった。十枚までしか使えないってのに。ひょっとして原画家のほうが向いてるのか?
原画が上がればお次はグラフィッカーの出番となる。まだキャリアは浅いが、最近とみに実力をつけてきた有望株だ。こいつに色塗りをさせつつ同時進行でシナリオのチェックと改善を行う。ゲームはテンポが命だ。つまんないテキストが一ページでもあればプレイヤーにストレスを強いる。また、小説的な表現もご法度だ。昔、ゲームで大正時代の小説の雰囲気を出そうとチャレンジ精神を燃やしまくったエロゲーがえらい事になったという噂を聞いたことがある。ノベルだから小説の技法が通用すると思ったら大間違い。ゲーム作りはそれほど甘くないのである。
そうこうする間に塗り担当がメインのキャラ絵を一枚完成させた。とりあえずこれをゲームに組み込む。それだけでもかなりゲームらしくなるはずだ。
が、うまくいかない。キャラの周りの白い部分まで出力されてしまう。そうか、白い部分も認識するから、透明にしなくてはならんのか。ちっ、ド新人グラフィッカーめ。しっかりせんかい。と、どやしつけて白い部分を塗り直させる。
が、駄目! 透明にしてもやはり白色で出力されてしまう。なぜだ! それから他の原画でも何度か試したがやはり駄目だった。分かってはいたが自分は原画家にもグラフィッカーにも向いていなかったらしい。結局キャラ絵の制作は中断。スケジュールに大幅な遅れが生じた。いや、そんなもんは最初からないのだが。冗談はさておきどうする? 白い部分を残したまま完成させるか? バカゲーだからそれもいいアクセントになるのではないか? いや、さすがにそれはまずいような気がする。ディスプレイの前で困惑するユーザーの姿が目に浮かぶようだ。
結局、この案件は先送りした。原因が分からなければ検索する他あるまい。勤め先のパソコンでこっそり調べよう、とか悪魔のささやきが聞こえるが、社会人としてそれはやっちゃだめだろ! とりあえず目の前の塗り作業を続行させる。だが、ド新人のうえ、今までモノクロ塗りしかほとんどやった事がないからめちゃくちゃ時間がかかる。全く完成が見えない。そもそも最初の一枚に一日以上かけているのである。キャラ絵は十枚だから単純計算でも十日以上かかる。それだけではない。キャラ以外にも画面に登場させなければならないイメージや小道具も十枚はある。それも当然塗らなくてはならない。
誰か、助けて!




